メッセージ

平成21年12月掲載 2009年の年の瀬にあたって

今、日本の政治経済は、深刻な課題に直面しています。デフレ経済と急速な円高の進行、普天間をめぐる日米信頼関係の亀裂、鳩山総理・小沢幹事長の不正献金疑惑など、国政において議論を深めなくてはならない重要課題が山積しています。このため、新政権の発足以来、我々は一貫して早期の国会開会と十分な審議を求めてきました。
しかし、実際には臨時国会の開会は、政権発足から40日後の10月26日までずれ込み(17年前の政権交代・細川内閣の時は、政権発足から18日で臨時国会開会)、また、36日という極めて短い会期幅が設定されました。ちなみに過去3年の臨時国会の会期を見ても、昨年が93日、一昨年が128日、3年前が85日で、今国会の36日というのがいかに拙速な審議日程かわかります。
国会での十分な審議は総理自身が所信表明の中で約束していたことでもあります。我々も提出法案について、中小企業の金融法案でも、郵政法案でも十分な審議の上、採決に応じることを約束してきました。しかし、党運営、国会運営の全ての実権を握る小沢幹事長のもと、実際には強行に次ぐ強行の国会運営が行われてきました。これに対し、我々は一貫して(1)党首討論の開催、(2)衆議院予算委員会での外交・安保、円高・デフレ対策、政治とカネなどの集中審議、(3)参議院決算委員会の総括質疑の3点セットの実施を求めてきました。現下の厳しい内外状況を考えれば、国会として当然の責務です。


●3つの重要テーマ(景気・経済/普天間・日米安保/政治とカネ)
景気・経済面では、政府は先月、3年5カ月ぶりに日本経済がデフレ状況にあることを宣言し、また、14年ぶりの急速な円高も進み、景気の減速と国民生活への影響が懸念されています。しかし、政府の追加経済対策・補正予算は、我々が4月に策定した(しかも新政権が一部執行停止した)補正の後追い以外、何ら新規の対策を出していません。しかも、対策規模7.2兆円と言いながら、その中身を検討してみると、当面の需要創出につながるものは1兆円程度しかありません。これがマーケットからの不信にも繋がり、株価も大きく下落しています。
来年度の予算編成でも民主党は「予算の組み替えとムダの排除でマニフェストの新規施策7.1兆円の財源全て捻出出来る」と言って来たのが、実際には全く無理なことが明らかになって来ました。そこで国民には説明がないまま「暫定税率の維持」や「子供手当てに所得制限」といった公約違反が次々に行われようとしています。
また、外交面でも日米安保の根幹をなす基地移設・普天間問題について、総理・外務大臣・防衛大臣の見解が、県内・県外・国外と、ことごとく食い違い、結論も来年の5月以降に先送りとなり、これまで築き上げてきた日米の信頼関係に大きな亀裂が入りつつあります。同盟国アメリカとの間で、首脳会談すら開催出来ないという深刻な事態になっているのです。
一方、基地の負担を背負ってきた沖縄県民からは、「沖縄の心をもてあそぶな」という悲痛な叫び、大きな怒りの声が上がっています。社民党に配慮し、政権内の内輪の論理を最優先し、解決策を先送りするのでは、本当の国益を守ることは出来ません。
さらに鳩山総理、小沢幹事長の政治資金をめぐっては、総理の母親からの11億円の資金提供や水谷建設からの1億円の裏献金など、連日のように新たな疑惑が報じられています。民主党は、来年から2.6万円の子ども手当を実施するようですが、鳩山家では6年前から11億円の「違法子ども手当」が支払われていた(しかも贈与税は支払われず)ということです。この問題についても、鳩山総理から国民に対して何ら納得できる説明が行われていません。つまり臨時国会の早期閉会は全くの「鳩山隠し、小沢隠し」だったのです。


●天皇陛下と中国の習近平国家副主席との会見
鳩山政権、民主党の強硬かつ独善的な政治手法は国会運営だけに止まりません。今週、天皇陛下と中国の習近平国家副主席との会見が、これまでの慣行を翻す形で設定されました。これは極めて遺憾であり、以下の点からも厳しく非難されなければならないと考えています。

  1. 宮内庁の羽毛田長官が会見で「大きく言えば天皇陛下の政治利用にあたる懸念がある」との見解を示しています。これまで政府は、「期間1ヶ月を切った会見要請は受けない」というルールを決め、厳格に運用してきました。その理由は、陛下のご体調への配慮であると同時に、日程に政治的、外交的な思惑を入れてはいけないとの考えからです。今回の一連の経過を見ても、政府も当初、この1ヶ月ルールに基づき、中国側に会見は困難と伝えていました。それが何らかの圧力により突然翻えることとなった訳です。さらに、小沢民主党幹事長は小役人が決めたこととして、これからも1ヶ月ルールにとらわれないとし、鳩山総理もこれを追認していることは極めて遺憾と言わざるを得ません。

  2. 小沢幹事長は「陛下の体調がすぐれなければ(優位性の低い行事は)やめればいい」とまで発言しています。
    陛下は国事行為以外にも様々な親善行事や慰問等をこなされており、内閣の助言と承認を超えた陛下の行事にまで言及するのは極めて不遜です。また、優位性の高い低いを誰が決めるのか。もし与党が決めるのであればこれこそ政治利用になります。
    更に小沢幹事長は、天皇陛下の韓国ご訪問につき「韓国の皆さんが受け入れて歓迎してくださるなら結構なことだ」と述べていますが、これも天皇陛下の国際親善のご活動について、内閣の一員ですらない者が軽々にした誠に思い上がった発言として、断じて看過できるものではありません。

  3. 小沢幹事長は「陛下は内閣に何も助言と承認を求めないで、個人で勝手に(会見を)やるのか」とも述べています。
    確かに日本国憲法第7条では「天皇は内閣の助言と承認により、国民のために国事に関する行為を行う」として、具体的な国事行為の9に外国の大使及び公使を接受することをあげていますが、外国要人との会見が国事行為かどうかというのには議論があり、最近では、象徴としての一種の公的行為であるという見解が憲法学上も主流になっています。従って、助言と承認を内閣がする場合も、一番大事なことはこの天皇の憲法上の象徴たる地位と矛盾のないような慎重な配慮がなされるべきです。今の政府ないし与党の首脳の中に、この内閣の助言と承認ということと天皇の象徴たる地位との規定に鑑み、そこに極めて慎重な配慮がなされるべきとの当然の姿勢が欠けているのです。

本来、今回のような異例の事態に立ち至ったことについて、政府・与党には謙虚な反省の弁があってしかるべきであるにもかかわらず、日本国憲法を恣意的に解釈した強弁や宮内庁長官は辞表を提出すべきといった恫喝、さらにこれまで守られてきた政府と宮内庁間のルールを今後も破るかのごとき発言は決して看過できるものではないと考えています。


●新たな年に向けて
夏の衆院選惨敗を受けての自民党新体制で、私は執行部の一員である幹事長代理を務めることになりました。また自民党栃木県連においても会長に就任しました。我が党に対する国民世論は未だ厳しいものがありますが、その一方で鳩山政権の外交・安保問題、経済・財政運営の稚拙さから、自民党に「しっかり頑張れ」との声も聞かれるようになってきました。来年の通常国会では「確かにこれまで問題は多かったが、国会論戦、政策議論をするとやはり自民党」と国民の皆さんに評価してもらえるよう、年末年始様々な準備作業を進めたい思います。

来年はとら年。とらは古くから「物事の始まり」を象徴する縁起のいい動物と言われています。また、「寅」は「引(いん)」、「伸ばし引く」の意味で、草木が伸び始める状態を表します。私も新たな気持ちで新年に臨み、「日本の再生」に全力で取んで行きたいと思います。
2009年12月21日掲載