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平成22年12月掲載 第176回臨時国会開会にあたって

 臨時国会は、12月3日に閉会しました。この国会中も、尖閣諸島沖中国漁船衝突事件での中国人船長の中途半端な釈放や、北朝鮮によるヨンピョン島砲撃事件への官邸の初動の遅れなど、外交・安全保障問題での政府の対応に批判が集中しました。
この1年2カ月の民主党政権の外交は、まさに素人外交そのものでした。普天間問題では「国外、最低でも県外」から迷走が続き、結局、普天間移設は暗礁に乗り上げました。尖閣諸島の事件でも、中国から足元を見られ、圧力に屈する大失態を演じました。また、ロシアはじめ周辺諸国に対し「日本は領土問題で強い主張をしない」「圧力をかければ譲歩する」という誤ったメッセージを発信してしまいました。初動段階で衝突シーンのテープを政治判断で公開していれば、中国の対応をあそこまで エスカレートさせることなく、もっと適切な解決が可能だったと思います。
ここにきて、尖閣諸島、朝鮮半島沖のヨンピョン島といった我が国領土及び周辺地域での緊急事態発生に対する民主党政権の対応を見ると、単に素人外交に留まらず、現政権に「危機管理能力」そのものが欠けているという深刻な現実が明らかになってきました。国民の間にも「この政権で本当にわが国を守れるのか」という不安が高まっていると思います。実際、最近のマスコミの世論調査でも、9割の国民が現政権の外交・安全保障政策に不安を感じると答えています。
民主党政権は、国内の景気についても危機感がゼロです。9月以降、急激な円高(実際は、米国を始め主要国での“自国通貨安競争”)が進み、輸出産業を始め、我が国経済が大きな打撃を受けているにも関わらず、有効な対策が全く打たれていません。金融緩和や為替介入も常にマーケットの想定内で、“Too Little, Too Late”な対応に終始しています。
我が党は、9月初旬に、33項目からなる真水で5兆円規模の緊急経済対策をまとめ、官邸に申し入れを行いましたが、景気対策、補正予算についても、民主党の反応は全く鈍いものでした。国会は、10月1日に開会しましたが、本来なら、その冒頭で提出されるべき補正予算が提出されたのは10月末(10月29日)で、その後、尖閣衝突テープの流出問題や、閣僚の不適切発言なども重なり、補正予算の成立は11月下旬(11月26日)までずれ込みました。補正の規模も、4.8兆円と言いながら、その中には、税収増により計上した地方交付税1.3兆円も含まれており、実際は、わずか3.5兆円程度。ここでも、“Too Little, Too Late”な対策です。
日本企業が置かれている状況をみると、急速な円高や世界的に見ても極めて高い法人税(40%)に加え、現政権が進める“アンチビジネス政策”(Co2の25%削減、派遣労働の規制強化、最低賃金の1,000円への引き上げなど)の逆風にさらされています。ここで、多少の景気対策をやっても、ブレーキを踏んだままアクセルをふかすようなもので、これでは車(経済)は前に進みません。
政府はこれから年末にかけて、来年度予算の編成作業に入ります。来年度予算では、バラマキ政策の財源として、平成22年度並みの44兆円の国債が発行される予定で、日本の財政状況は更に悪化していきます。ところが、現政権は、自民党がすでに提案している「財政健全化責任法(法案の骨格として今後5年で単年度の財政赤字を半減、10年でプライマリーバランスを黒字化)」のような、経済財政運営の中長期の指針や展望を全く示していません。ここで国債の増発だけが進めばマーケットの不安は 高まるばかりではないでしょうか。
一方で、民主党がマニフェストで約束した無駄の削減、予算の組み替えによる財源捻出(初年度の平成22年で7.1兆円、最終年度25年では16.8兆円)もほとんど進んでおらず、子ども手当も全額支給の見送りなど、マニフェスト実現面でも極めて中途半端な対応となっています。本格的な景気対策に舵を切るなら「バラマキマニフェスト4K(子ども手当、高速道路無料化、戸別所得補償、高校無償化)」をず撤回することです。その分の財源を成長戦略の主要分野に振り向け、将来に  繋がる投資を促進することによってこそ景気の回復や日本の国際競争力の向上が 図られると確信しています。
この臨時国会では、柳田法務大臣が「国会答弁は2つのことだけを覚えていればいい」という不適切な発言で辞任に追い込まれました。もともと法務行政にはズブの素人で大臣不適格者だったのですから辞任も当然と言えば当然です。さらに、尖閣 事件の政治的責任や不適切な国会答弁(「自衛隊は暴力装置」など)で仙石官房長官と馬淵国土交通大臣の問責決議が参議院で可決されました。二人がこのまま留任するとなると、来年1月下旬からの通常国会では、仙石、馬淵両大臣の所管委員会では審議が全く進まない状況に陥ることになると思われます。
さらに、菅内閣の支持率も急速に下落してきています。私も自民党広報本部長として、マスコミ各社の世論調査の結果や要因分析を細かくフォローしていますが、10月末には、あらゆるマスコミの調査で内閣支持率と不支持率が逆転し、今や内閣支持率は危険水域と言われる2割台まで落ち込んでいます。すでに多くの世論調査で、内閣支持率は安倍内閣や福田内閣の退陣時の数字を下回り始めました。これからの外交や経済政策への取り組み、来年の通常国会への対応によっては、政権運営そのものが立ち行かなくなる可能性も高まっています。
来年4月には、統一地方選挙が予定されています。自民党は、本年夏の参議院選挙をホップ、統一地方選挙をステップ、そして、来るべき総選挙をジャンプと位置付け、3段階の選挙準備を進めてきました。ところが今や、来年1月の通常国会開会以降、いつ解散があってもおかしくない緊迫した状態に突入しつつあります。民主党が壊れるのは、もちろん一向に構いません。しかし、民主党に、日本の安全、経済、そして、子どもたちの将来を壊されては困るとの想いで、来年は、現政権を1日も早く解散・総選挙に追い込み、政権を奪還したいと考えています。
年の瀬も押し迫って参りました。皆様にはくれぐれもご自愛の上、素晴らしい新年を迎えられますよう心よりお祈り申し上げます。


2010年12月6日掲載