制作提言

IT政策の推進に関する提言

IT革命については、今年4月に出版した私の「勝者の選択」でも詳しく述べていますが、この8月に自民党情報産業振興議員連盟のIT小委員会委員長代理として以下の提言を取りまとめました。政府内外のIT政策に関する最近の提言の中でも最も総合的、かつ先進的な提言内容だと自負しています。 以下、提言の前文を掲載いたします。
「日本型IT革命の実現と情報化施策の推進に関する提言」 二十一世紀の発展基盤の構築という意味で情報化施策に期待されるところは非常に大きい。 我が国産業の国際競争力強化、経済新生を達成し、IT革命のメリットを国民誰もが享受できるようにするための重要な鍵となる情報化施策について、「日本独自のIT戦略」を明確化したうえで、以下の具体策を早急に講じることを提言する。(こちらから参考資料もご覧ください)

一.「日本独自のIT戦略」の策定

我が国は戦後めざましい経済成長をとげ、自他共に認める経済先進国となった。しかし90年代以降世界経済の中で急速な成長をとげつつあるIT分野においては、我が国の場合、家庭へのIT普及においても、ビジネスへのITの浸透度においても、決して先進国とは言えない状況にある。例えば、日本のインターネット人口普及率は、欧米諸国との比較、アジア諸国との比較において極めて低い水準にある。 21世紀に向けて、日本がこのITの分野でも先進国の地位を獲得するため、(1)低廉かつ高速な情報通信ネットワークの整備等日本がキャッチアップすべき分野、(2)情報家電・モバイル端末等技術の国際競争上の戦略的な分野、(3)ITとものづくりの融合という日本が従来より強みを発揮している分野など、重点分野を明確にしつつメリハリの効いた「日本独自のIT戦略」を1年以内に策定し、着実に実施することが必要である。

二.統一ICカードの開発・普及

我が国は、昨年決定されたミレニアムプロジェクトで2003年までに世界最高水準の電子政府の実現を計画している。国民の利便性向上の観点から、全ての政府申請・手続をオンラインで行うべく、迅速な実行が必要である。 このような電子政府のメリットを国民誰もが享受できるようにするためには、統一ICカードの開発・普及につき直ちに検討に着手し世界初のICカード先進国を3年以内に実現すること。このまま放置すれば、施策や省庁・目的別に複数種類のカード、関連機器が流通し、国民の利便性が低下、国民経済上巨額の重複投資が発生する可能性がある。 上記電子政府・ICカードの開発・普及は、国民のニーズに応え機能強化された政府をめざす「行政改革の推進」という成果に直結するものであることを念頭におくべきである。

三.電子商取引の発展のための抜本的制度改革

日本は企業間電子商取引市場規模については、米国の約1/2以下、企業消費者間の電子商取引市場規模について1/30以下と、米国に大きく差をつけられた状況にある。 この状況の打破のため、次の制度的対応が必要である。
1. 電子商取引の拡大のための情報契約法等取引ルールの整備 我が国において整備の遅れている電子契約法制、仲介者責任法制、情報財取引法制等サイバー空間に誰もが安心して参加できる市場ルールの制度設計等を国際的ルールとの整合性を確保しつつ1年以内に行うこと。 また、情報技術の活用と並行して国際的に信頼されるセキュアなネットワーク基盤の構築が必要となる。セキュリティ技術開発・普及を促進するとともに、暗号技術評価による信頼確立と利用の促進等の暗号政策の充実、国際スタンダードに沿ったハードウェア・ソフトウェアの信頼性評価スキーム、セキュリティ管理ガイドラインの確立を、1年以内に行うこと。 電子署名・認証についても、これからの情報経済の基盤となるシステムであることを認識することが重要である。本年に成立した「電子署名及び認証業務に関する法律」の実際の運用体制を1年以内に万全なものとすること。
2. 電子商取引のメリットを最大限に生かすための規制改革 民間における契約締結については書面交付が義務づけられていることにより、インターネットを通じた取引を阻害している。例えば、インターネット等を通じた通信販売では、販売業者等は申込みを受け、対価を受領したときには、遅滞なく書面にて申込み内容を承諾したか、通知を行わなくてはならない。このような民間取引における書面交付義務の規制については、次期臨時国会で「民間書面交付義務免除一括法」により改正を行うこと。 各省庁への申請・届出等手続きにおいては、押印された書面のみが受け付け対象となっているものが多い。このような申請・届出手続における書面交付義務につき、次期通常国会を目指して制度改正を行うこと。 また、対面行為が義務づけられていることに対するインターネット活用の阻害も存在する。例えば、大学の授業は「直接対面方式」が原則とされ、遠隔教育については、修得単位60単位までとされ、同時送受信が原則とされている。このような対面行為義務についても次期通常国会を目指して法的整備を行うこと。 さらに、物理的な所在による阻害要因も存在する。例えば、職業紹介を行うためには一定面積を専用的に事業所として確保しなければならない。インターネット取引の物理的所在を要件とする許認可等に係る制度改革についても次期通常国会を目指して法的整備を行うこと。

四.国民全体がITを享受できる基盤整備

1. 最先端のITを取り入れて基盤整備を進める都市・エリアを「ビジネスタウンモデル」と位置づけるなどの手法により、線から面への基盤整備を進め、充実した情報通信ネットワークを備えた都市形成を引き続き強力に推進する。
2. 携帯電話がつながらないなど地域の過疎化にもつながる危険性のある地方における情報通信ネットワークの不備の解消が大きな課題となっている。現状においても、移動通信用鉄塔建設等様々な施策が行われているが、今後とも、地方における光ファイバ網の整備等の事業を明確な計画のもとで行うこと。
3. 高齢者・身障者向けハード・ソフトウェア・周辺機器の開発を行い、ITをむしろ格差の解消や新たな成長の機会「デジタルオポチュニティ」ととらえ、IT分野での「バリヤフリー化」を引き続き進めること。
4. 事業所数の99%の数を占める中小企業の情報化を推進することは、日本経済の命運を握っていると考えられる。こうした中小企業の情報化をソフト面で支援するため、研修、セミナーの実施、診断・助言体制を引き続き強化すること。このために経営と情報の両方を深く理解する専門家を引き続き養成、活用すること。
5. 日本の21世紀を背負う子供達の情報活用能力を飛躍的に高めることは、経済の成長・国民生活の向上に欠かせない。学校での高速インターネットの活用、ITの利点を活かした先進的な教育コンテンツの開発・普及など教育でのIT普及を引き続き強力に行うこと。また、社会人の情報活用能力の向上は、産業・企業の競争力強化にとり、重要な課題である。社会人が十分な情報技術の活用能力を身につけ、新しい産業への雇用の流動性を十分高めるために、専門学校・セミナー等の充実とともに、遠隔研修システム等を引き続き強力に整備すること。
6. 国会から国民への発信を充実させ、情報公開を進めると共に、政治への理解を得ることは、政治への信頼性の向上に不可欠である。 このために、情報通信技術を最大限に活用した国会テレビやインターネット審議中継システムを引き続き充実させ、双方向の発信が活発に行われるようにすること。

五.情報通信関連の公共投資のあり方

光ファイバ網等、情報通信ネットワークの整備を促進するため、民間による投資との役割分担を明確にしつつ、国民生活の観点から必要なものが民間による投資では回収が困難な場合に、戦略的な公共投資を行う必要がある。
1. 下水道管路等既存の社会資本を活用することによりIT分野の社会資本整備が民間より低廉かつ早急に進められる部分については、直ちに検討に着手し、3年を目途に積極的な整備を進めること。
2. 学校、病院、介護施設、障害者施設等公共施設間におけるネットワーク整備を推進すること。特に、情報通信ネットワークの整備等情報通信分野への投資に顕著な取り組みを行っている地方公共団体に対する支援を強化すること。これらについては直ちに検討に着手し、3年を目途に強化すること。
3. 移動体鉄塔等の建設等、情報通信ネットワークの充実による過疎の解消を目指す施策につき3年を目途に強化に推進すること。
4. 競争的な情報通信市場の整備のため、線路敷設権問題に対応し、ネットワーク設置に関するルールを1年以内に明確にすること。

六.IT分野での国際標準の獲得・知的財産権戦略の推進

モバイル端末、情報家電等の分野は日本の製造技術の強みを活かしつつ日本が国際競争で優位に立つことが可能な分野である。特に今後は、家電製品の相互接続など上記の戦略的分野を中心に、先端的技術開発、デファクトスタンダードの獲得も含めた国際標準の獲得を引き続き国として支援していく必要がある。この際、技術力の優位に加え、世界市場の獲得のためには、関係諸国との合従連衛も含めた国家的な戦略が重要な役割を果たすことを念頭におかなければならない。 また、昨今、IT技術を活用した金融等各分野においてビジネス方法特許の設定が重要な課題となっている。今後、国際競争がますます活発となる中で、特許分野についても我が国としての戦略的対応が引き続き求められる。 さらに、ソフトウェア・コンテンツ・情報関連サービスについては、今後、市場の大きな成長が期待される。知的財産戦略等の適切な設定等適切な振興策を充実させることを通じて、これらの分野の健全な成長を引き続き達成すること。

七.アジアを中心とするITの国際展開

日本との経済相互依存関係の高いアジア諸国につき、今後の経済成長の源となるIT分野に関して、協力を行うことは、世界経済はもちろん日本の経済発展のためにも重要である。シンガポール、台湾、香港、韓国等アジア諸国のインターネット普及率は高く、日本が10―20%であるのに対し、例えばシンガポールは40%を超える。こうしたアジアと共通の制度設計を行い、「アジアモデル」とも言えるシステムを構築することは日本にとっても大きなメリットとなる。 かかる観点から貿易関連ドキュメントの作成・保存・送付の電子化を推進する貿易金融の電子化、情報処理技術者の試験制度のノウハウ提供などの内容とする「e-ASIA構想」につき直ちに検討に着手し3年を目途に実現すること。特に、情報処理技術に関する試験制度の下で資格を持つアジア各国の人材の活用に前向きに取り組むこと。

八.上記の施策を徹底して推進するために、予算・税・財政投融資等を活用すること。

* 平成十三年度予算 平成十二年度予算では、小渕前首相のリーダーシップの下、情報、高齢化、環境を3つの柱とするミレニアム・プロジェクトが決定され、重点的な予算配分が行われた。採択された電子政府の実現、教育の情報化、IT21プロジェクト(情報通信技術開発)が着実に推進されるとともに、平成十三年度においても、森首相のリーダーシップの下でとりまとめられる日本新生特別枠において、情報通信分野につき、21世紀の日本の成長を支えるような重点的予算配分が行われることを期待するところである。
具体的にはIT社会の創造、経済構造改革の推進、アジアIT革命の推進等を目的として、
・電子政府の実現(82億円
) ・教育の情報化(20億円)
・高齢者・身障者等向けITの開発・普及(10億円)
・ICカードの開発・普及(7億円)
・情報セキュリティ対策(9億円)
・企業経営面での情報化人材の育成(9億円)
・中小企業の情報化の促進(53億円)
・ものづくり現場のIT化(52億円)
・半導体技術開発(81億)
・アジア諸国と協力した人材育成(10億円)
・貿易金融の電子化等電子商取引等に関するアジア共通基盤の整備(22億円)
等を強力に推進すること。
* 平成十三年度税制改正要望
従来より租税特別措置において措置されてきた、プログラム準備金、電子計算機買戻準備金につき引き続き措置を講じるとともに、電子計算機の法定耐用年数を抜本的に見直し、実際の製品サイクルとの格差による情報化投資の阻害要因を除去し、情報化投資を飛躍的に増加させる基盤を整備すること。また、創業後短期間で株式公開する企業の多い情報関連ベンチャー企業の資金調達の円滑化を図るため創業者利得の特例を拡充すること。 * 平成十三年度財政投融資要求
従来より措置されてきた情報化産業基盤整備促進、情報化教育基盤整備促進のための財政投融資につき引き続き措置を講じていくとともに、適切な中小企業の情報化投資を促進するために経営と情報技術双方に知見のある専門家等による評価機能を介在させた中小企業の情報化投資向け財投措置を講じること。また、ケーブルTV等情報インフラを充実させるために必要な財投措置を一層拡充させること。
政府においては、上記項目につき関係各省庁が一体となって万全な取り組みを行われることを強く要望する。 右、提言する。              情報産業振興議員連盟 以下の4分野での私の考え:

1. 財政赤字再建について

国・地方をあわせた財政赤字が600兆円超(平成12年度見込み645兆円)にのぼる中で、現在の積極型財政を財政再建路線に転換すべしとの意見があります。また、財政再建のために増税や予算の削減、インフレ政策(MITのクルーグマン教授等の提案)などを採用すべきとの提案もなされています。 しかし、米国の財政赤字再建の例を見ても、景気回復を通じた増収を図るのでない限り、国民が許容できる範囲での増税や予算の削減、インフレ政策などを採用しても、財政赤字を根本的に解決することは困難であると私は考えます。従って、我が国においても、まずは景気対策に尽力するとともに、より一層の規制緩和を進めることによって、民間活力を最大限に引き出すことが重要だと考えます。 特に今後成長が期待されるIT分野等については、電気通信事業法、放送法を含む抜本的政策の見直しと規制緩和が必要です。これに関する詳しい内容については、近著(「勝者の選択」p.101~110「・通信と放送は融合していく」「・相互参入、自由競争、フリーアクセス」「・電波をオークションにかける!?」の項)を御参照下さい。

2. 憲法改正について

憲法については、もちろん不磨の大典ととらえるべきではなく、あるべき姿についての不断の議論が必要であると考えます。例えば今後、国際社会とのかかわりや環境、個人の権利と公益のバランスといったような観点から憲法に盛り込む事項も必要となっていくでしょうから、その意味では全面的な改正も考えられます。ただし、全面改正を所与としての議論を行うのではなく、一定の時間軸(5年程度)を定めた上で、まずは国民的議論を高め、充実していくことが重要であると考えます。(これに関連して、例えば首相公選制についても皆様のご意見を伺いたいと思います。) 同時に、教育基本法についても見直しの時期に来ていると考えます。憲法の制定とほぼ同時期の昭和22年に制定された教育基本法は、当時の社会状況から万人に対する教育の普及(=量的な充足)を基本理念としてきた訳ですが、今後は個々人の個性を尊重することや、物質的に恵まれた社会においてより一層心の教育に重点を置いていくことや、個人の自立と社会ルールの遵守の重要性を理解させるといったような視点を踏まえて、21世紀にふさわしい教育基本法に改めていく必要があると考えます。

3. 経済成長と環境保全との調整

最近、地球規模の環境問題が議論される中で、経済成長を低く抑えても環境を保全するべきであるとの議論が聞かれます。この分野ではNGO活動も大変活発になってきています。一方で、発展途上国においては今後も経済成長が必要だとの議論も聞かれます。このように環境保全と経済成長のどちらを選択するのかといった議論がよくなされてます。 しかし私は、経済成長と環境保全とは必ずしも相反するものではなく、工夫の仕方によっては多くの分野で共存が可能であると考えます。例えば、日本においても「情報の産業化」、「産業の情報化」の如く、「環境の産業化」、「産業の環境化」といった双方向の動きが進展しつつあります。ただし、両者が競合する分野においては一定の調整が必要であり、経済成長を大きく阻害しない限りにおいて3R(リサイクル、リユース、リデュース)の促進、環境規制の強化も許容すべきと考えます。

4. 国の権限と住民投票について

最近、原子力発電所の立地や吉野川河口堰の建設等の問題をはじめとして住民投票運動が盛んになってきています。極端な議論では、全ての問題を住民投票で決するべきであるという意見まで聞かれます。 しかし、この問題を考えるに当たっては、まずは国の権限と地方自治体の権限を明確に分けることが必要であると考えます。この権限の明確な仕分けを踏まえて、住民に身近な生活レベルの問題については、地方分権の観点からも全面的に地方自治体に権限等を委ねることが必要であると考えます。 住民投票には反対しませんが、あらゆる問題を住民投票によって決定することについては、例えば安全保障、広域的課題解決、政策間の整合性といった観点もあることから問題もあると考えます。ただし、最近の住民投票による地方の意思表示は、地方から国政に対しての警鐘であり、個々の政治家も真摯に受け止める必要があると思います。(これに関連して、道州制の導入等についての意見も出てきておりますが、皆様のご意見を伺えればと思います。)

上記に対するご意見は「ご意見・お問合せ」よりお寄せください。