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e-Japan戦略II 加速化パッケージ

 「e-Japan戦略II」(2003年7月、IT戦略本部決定)を加速させ、「2005年までに世界最先端のIT国家になる」との目標を達成するため、「e-Japan戦略Ⅱ加速化パッケージ」を策定し、政府として取り組むべき重点施策を明らかにした。この加速化パッケージを実施するに際しては、利用者の視点を重視するとともに、各府省の連携を一層強化し、その推進を図る。

1. アジア等IT分野の国際戦略 (A:Asia) 日―ASEAN東京宣言(平成15年12月11日)の「相互に利益をもたらす情報通信技術協力計画の実現を通じ、アジアにおける情報通信網及びその流通量の拡大及び深化に協力する」及び日―ASEAN行動計画の内容を踏まえ、より一層強力に、国際政策を推進するため、

(1) 国際政策の基本的な考え方の策定

アジアを中心としたITに関する国際政策を総合的かつ整合的に推進するため、IT戦略本部のもとで2004年夏頃までに国際政策に係る基本的な考え方を策定するとともに、国際政策を統一的にフォローアップする。(内閣官房及び関係府省)

(2)アジア各国への2国間・多国間協力の推進

アジア各国がIT化を進める中で、各種システムの整合性、相互接続性及び相互運用性を確保し、相互利益を増大させることが重要であるため、上記の国際政策に係る基本的な考え方を踏まえつつ、「アジアITイニシアティブ」の一層の具体化を図るとともに、「アジア・ブロードバンド計画」等のさらなる推進を図る。この際、アジア各国と、既存のプログラムの実施状況等をフォローしつつ、2国間プログラムを推進するとともに、多国間の協力プログラムを積極的に推進する。(内閣官房、総務省、外務省、文部科学省、経済産業省及び関係府省)



2.セキュリティ(安全・安心)政策の強化 (B:Block and Back-up: Security)

1) 「IT社会を守る」(公共分野・重要インフラの情報セキュリティ強化と人的基盤の充実)

(1) 情報セキュリティ補佐官の設置等

(2) 各府省庁の情報セキュリティ確保
各府省庁の情報セキュリティ水準を客観的に把握し、政府全体で統一のとれた安全対策を推進するため、内閣官房の人員増強を図るなど政府の情報セキュリティ体制を段階的かつ速やかに強化しつつ、以下の施策を実施するため基本方針及び具体策について2004年6月までに検討を行い結論を得る。(内閣官房及び関係府省庁)

  1. 攻撃の予兆や被害に関する情報収集・分析
  2. 各府省庁の情報セキュリティ対策の評価
  3. 各府省庁の情報システムとその運用に関する安全基準の策定

(3) 地方公共団体の情報セキュリティ確保

(4) 重要インフラの情報セキュリティ確保

(5) 民間の情報セキュリティ強化
民間の情報セキュリティ関係団体等の機能強化にも資するような施策の推進を図る。(総務省及び経済産業省)

(6) 情報セキュリティに係る人材育成と普及啓発

  1. 政府機関職員の能力向上のための実務的な研修等を2004年9月までに開催する。(内閣官房)
  2. 各省庁と連携した国民向けの啓発・広報活動等を2004年より行う。(内閣官房及び関係省庁)


2) 「ITで守る」(ITの活用による国民生活、社会・経済活動の安全・安心の確保)
(1) パスポートのIC化の推進

ITの活用による空港、港湾等におけるテロ対策や治安対策の一環として、国際標準に準拠したパスポートのIC化とそれを活用した出入国管理の強化を行うこととし、2004年度に実証実験を実施し、2005年度中の導入を目指す。また、アジア地域全域でのセキュリティ強化の観点から、各国の要望に応じて、アジア地域でのパスポートIC化の導入支援について検討する。(内閣官房、外務省、法務省及び関係府省)

(2) 国家公務員身分証明書のICカード化

セキュリティの一層の強化等の観点から、国家公務員身分証明書のICカード化に向け、共通仕様の策定やシステムの共通利用等の措置について2004年中に結論を得て、順次導入を進める。(内閣官房及び全府省)

(3) 防災情報共有システムの整備と国民への提供拡大

災害時における被災状況の即時把握、各種防災情報の伝達など、国・地方公共団体間、住民等との間の効率的な情報共有を可能とする方策について検討し、2005年度までに防災情報を集約し共有するシステムの実用化を図る。(内閣府及び関係省庁)

(4) 携帯電話、IP電話等多様な通信手段での緊急通報の実現

災害・犯罪時に国民からの様々な通信手段による緊急通報への対応が可能となるネットワーク、システムの整備等を推進し、2004年度には携帯電話を用いた緊急通報において発信者の位置情報を通知するための技術的な条件を策定するとともに、メールによる緊急通報の普及を図る。(総務省、警察庁及び関係府省)


3. コンテンツ政策の推進 (C:Contents)
知的財産戦略本部において、重点課題として、下記(1)、(2)及び(3)を積極的に検討することを要請するとともに、IT戦略本部においてもフォローしていく。

(1) 既存コンテンツ資産のブロードバンド上での再利用の促進

ブロードバンド上におけるコンテンツ流通を促進するため、著作権法上の裁定制度の利用促進など既存コンテンツの再利用の促進、ブロードバンドサービスを利用した放送の著作権法上の位置付け等について検討する。(内閣官房)

(2) コンテンツの流通手段としてのインターネットの位置付け検討

現在の著作権制度では放送とインターネット配信の位置付けが異なっているが、これについて、コンテンツ利用におけるインターネットの重要性の増大に応じた見直しを検討する。(内閣官房)

(3) コンテンツ製作基盤の強化

プロデューサーやクリエーターの育成、流通事業者と製作事業者の間の公正な取引環境の整備、製作事業者による資金調達環境の整備、国等の有するコンテンツの二次利用の促進などについて検討する。(内閣官房)

(4) 日本版バイドール制度の拡充

日本版バイドール制度(国等の委託による研究開発の成果である知的財産権を受託者に帰属させることができる制度)の拡充により、国、地方公共団体などの資金により製作されるコンテンツ等の著作権を製作者に帰属させることができるよう、2004年度中に必要な措置を講じる。(内閣官房、経済産業省及び関係府省)

(5) 政府コンテンツのデジタルアーカイブ構築と一般利用の拡大

国立国会図書館における政府刊行物アーカイブ(文書や記録を電子的に集積し保管する書庫)構築及び同図書館のウェブページ・アーカイブを活用した政府各機関ホームページの長期的保存により、国等の有するコンテンツの利用機会の拡大と保存を図るため、同図書館も参加した連絡会議を設置し、アーカイブの構築や公開に関するルールの明確化など、同図書館への協力体制を2004年度中に確立する。(内閣官房及び全府省)


4. IT規制改革の推進(D:Deregulation)

1) eー文書イニシアティブ

法令により民間に保存が義務付けられている財務関係書類、税務関係書類等の文書・帳票のうち、電子的な保存が認められていないものについて、近年の情報技術の進展等を踏まえ、文書・帳票の内容、性格に応じた真実性・可視性等を確保しつつ、原則としてこれらの文書・帳票の電子保存が可能となるようにすることを、統一的な法律(通称「e-文書法」)の制定等により行うこととする。このため、電子保存の容認の要件、対象範囲等について早急にとりまとめ、2004年6月頃を目途にIT戦略本部に報告を行い、法案を早期に国会に提出する。(内閣官房及び関係府省)


2) これまでの制度のIT化と比べ、IT化が遅れている分野の早期規制改革
(1) 総会議決権行使の電子化

民法・中間法人及びNPO法人の総会の議決権行使などを他の民間企業と同様に電子的に行えるよう検討し、2005年度末までに法制上の措置を講じる。(内閣府及び法務省)

(2) 対面による意見聴取等の電子化

行政と国民との間で対面で実施されている聴聞等の手続について、原則としてテレビ会議を活用して遠隔で行えるようにするため、順次システム整備等を進める。(全府省)

(3) 診療情報の電子化など医療分野でのIT利用促進

医療の質の向上と効率的な医療提供体制の構築に向けて、処方せん、診断書、出生証明書をはじめとする様々な診療情報の電子化など医療分野のIT利用促進を図るための方策を包括的に検討し、2004年9月までに結論を得る。(厚生労働省)

3. 現実世界の制度とサイバースペース上の制度で整合等を図る必要のある規制改革
(1) 電子的手段による資格保有等証明の推進

重要情報のオンライン転送にあたり、医師、弁護士等の本人性、資格保有等の証明を電子的にできるようにするため、既存認証制度に対する属性情報追加等のニーズ把握を早期に行うとともに、制度の在り方について検討し、2004年中に結論を得る。(内閣官房、総務省、法務省、経済産業省及び関係府省)

(2) 電子的手段による債権譲渡の推進

電子的な手段による債権譲渡(「電子手形サービス等」)を推進するための制度の見直しについて、現行法上、原則として確定日付のある通知・承諾が必要とされている債権譲渡の対抗要件の在り方を含めて検討し、2004年中に結論を得る。(総務省、法務省、経済産業省及び関係府省)
※ IT分野の規制改革については、引き続き、総合規制改革会議(及びその後継組織)と緊密に連携しつつ、推進する。


5. 評価 (E:Evaluation)

(1) 昨年8月に設置した評価専門調査会が行うe-Japan戦略及びe-Japan戦略Ⅱに関する政府の取り組み状況に関する民間の立場からの評価をe-Japan重点計画-2004に反映させる。なお、同専門調査会においては、以下により、2004年3月末に中間報告を取りまとめ、IT戦略本部に提言することとしている。

個の視点に立った成果重視の観点で評価することを基本方針とし、「立案→実行→チェック→措置」のサイクルをe-Japan戦略の中に定着させる。
e-Japan戦略及びe-Japan戦略Ⅱに掲げられた目標の達成度について総合的、全体的に評価するとともに、電子政府・電子自治体、超高速インターネット・ユビキタス環境、医療、人材・教育の項目に絞った重点評価を行う。

(2) 4月以降も同専門調査会において、e-Japan戦略及びe-Japan戦略Ⅱの推進状況を継続的に幅広く評価していくこととしているが、評価結果を踏まえて必要な措置を講じていく。

6. 電子政府・電子自治体の推進 (F:Friendly e-government and e-local government)

(1) ITの活用による国民の利便性の向上、行政の効率化

ITの活用により国民の利便性の向上を図るため、評価専門調査会の評価を踏まえ、申請・届出手続のオンライン化、ワンストップ化等を一層推進する。
また、ITの活用による柔軟な勤務形態の実現や通勤負担の解消、スペースの有効活用、ペーパーレス化等を通じた行政の効率化を実現するため、以下の施策を実施する。

1. 国家公務員のテレワークの推進

ITを活用した国家公務員の業務能率向上のための働き方であるテレワーク(ITを活用した在宅勤務等の柔軟な働き方)を推進するため、2004年度早期に各府省がテレワークを導入する際の考え方等を示した指針を作成する(人事院及び総務省)。また、勤務状況等に応じ、2004年度よりテレワークの試験的な勤務の実施等を行うとともに、2004年度中にテレワーク勤務率の目標設定を行う(全府省)。さらに、裁量労働制(働く時間や働き方が労働者に委ねられる制度)その他テレワークに資する柔軟な勤務形態の検討を進める。(人事院及び総務省)

2. 業務・システムの効率化

これまでのペーパーレス化の取り組みを評価・点検するとともに、事務処理の電子化、業務見直し等による行政の効率化・合理化を推進するため、「人事・給与等業務・システム最適化計画」(2004年2月に策定予定)、「官房基幹業務・システム最適化計画」(2004年度早期に策定予定)等の中で業務処理時間や経費の削減効果(試算)を数値で明示する。(全府省)

(2) 国家公務員給与の全額振込化

国家公務員の給与の全額振込化について、職員の協力を得つつ推進し、2005年度末までに、山間・僻地等全額振込化が困難な地域を除き、各行政機関において原則として100%の実施を目指すとともに、各行政機関別の実施状況を定期的にフォローアップする。(全府省)

(3) 輸出入・港湾手続きのワンストップ化

輸出入・港湾手続について、手続の簡素化、国際標準への準拠などその徹底した見直しをもとに、より信頼度が高くかつ運用コストの低廉な新たなシステム構築と「国際海運の簡易化に関する条約(仮称)(FAL条約)」の早期締結に向けた検討を加速する。(内閣官房、法務省、外務省、財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省)

(4) ベンチャー企業からの政府調達の拡大

T分野の技術力の高いベンチャー企業を国際競争力の視点も踏まえて育成する観点から、技術力の高いITベンチャー企業からの政府調達を拡大するための方策として、入札参加資格の弾力化、随意契約や概算払い制度の活用などの取組みを速やかに実施するとともに、その取組状況や調達実績のフォローアップを行う。(内閣官房、総務省、経済産業省及び全府省)

(5) 電子自治体構築に向けた取組みの促進

自治体ごとのシステム開発に伴う重複投資の回避及び円滑な相互接続・連携の実現による効率的で低廉かつセキュリティの高い電子自治体を目指し、電子自治体構築計画の策定、CIO(情報化統括責任者)の導入、外部専門家の活用、業務改革、地方公共団体における事務の共通化、システムの標準化と共同アウトソーシング(外部委託)、そのために不可欠なインフラとなる全国的なネットワーク整備等を一層強力に推進するため、評価専門調査会において、主要な手続のオンライン化など電子自治体構築にかかる取組状況を把握・評価し、IT戦略本部に報告を行う。(内閣官房及び総務省)