制作提言

わが国の総合的な外交力の強化をめざして


 森喜朗元総理が委員長、私が事務局長を務める自民党「外交力強化に関する特命委員会」の中間報告「12の提言」がまとまりましたので、以下、その全文及び参考資料を掲載します。




わが国の総合的な外交力の強化をめざして
(中間報告:「12の提言」)

平成18年11月24日
自由民主党政務調査会
外交力強化に関する特命委員会

はじめに

 今わが国の外交に求められているものは、国際社会の諸問題に機動的かつ的確に対応し、国益を踏まえた強力な外交を展開するためのオールジャパンとしての総合的な「外交力強化」である。

 そのためには政治が主導して、在外公館やマンパワーの増強など外交力強化の核となる外交実施体制を充実するとともに、経済人・有識者・NGOなど、広く外交にかかわる多様なプレイヤーとの連携を強化することが必要である。さらに、日本の持つ経済力、科学技術力、文化・情報発信力やODAなどのあらゆるツールを総動員し、外交に取り組む体制を構築することが不可欠である。

 なお、この外交力強化にあたっては、政府の歳出削減の方向性や外務省改革の進展と評価にも配慮することが肝要である。

 外交力強化に関する特命委員会(森 喜朗 委員長)では、有識者や専門家からのヒアリングを通じ、これまで集中的に協議を重ねてきた。その成果を中間報告として取りまとめ、以下の通り提言する。

1.総合的な「外交力強化」の核となる外交実施体制の充実

提言1.英仏並みの150大使館体制に向け在外公館を増強する。

(1)

外交ネットワークの抜本的な強化に向け、在外公館の増強・整備を実現する。特に、大使館については、わが国の国益と相手国との相互主義の原則等を踏まえ、英仏並みの150大使館体制を目指す。(資料1、2参照=資料はこちらからご覧ください.下記資料3~10もこのファイルに掲載されています.資料をご覧になるにはAdobe Readerが必要です

その際、現存する各在外公館についても、効率的に運営されているかについて詳細に検証し、各国に複数ある総領事館については、必要性に応じ改廃を検討する。

また、新設の大使館の規模については、医療・治安を含む地域の事情、必要性等を踏まえ、柔軟に決定し、その役割を限定したコンパクトな大使館が可能か否かについても検討する。

(2)
大使には民間人・役人OBを問わず、経験豊かで強い人脈を有した人材を積極的に起用する。また、地域の事情に応じ年齢について柔軟に対応し、外務省の中堅職員や外部人材を起用していく。


提言2.10年計画でマンパワーを増強する。

(1)
第一回会合において決議した『外交力強化に関する緊急提言』の通り、今後10年間での定員2,000人増の達成を目標としつつ、実質的なマンパワーの増強を図る。その際、海外経験豊富な商社OB、青年海外協力隊OB等を採用するとともに、これまでのルールの見直しを含め他省庁からの積極的な人材活用を推進する。さらに、優秀な現地人材や民間の専門家等の一層の活用を図る。なお、本省と在外公館の適切な人員のバランスについては、実際の必要性を踏まえつつ検討する。(資料3参照)

(2)
上記のマンパワー増強の取り組みに際しては、国家公務員純減に向けた取り組みの中でメリハリのある配分を行い、平成19年度において、目標達成に向けた着実な第一歩となる定員増を実現する。


2.「オールジャパン」としての多様なプレイヤーとの連携強化

提言3.経済界との連携を強化し、日本経済の活力を活かした外交を展開する。

(1)

総理外遊への経済界からの必要に応じた同行や経済界の地域別ミッションとの連携強化を図る。この提言については、既に『外交力強化に関する決議』(10/6)を取りまとめ、委員会として政府・関係機関に対し申し入れを行ってきた。その結果、早速、APEC首脳会議後の総理のベトナム訪問に際し、経済界が100人を超えるミッションで同行することになったことは大きな第一歩である。(資料4参照)

今後は総理外遊に加え、外務大臣や経済産業大臣等の閣僚の外国訪問に際しても、経済界との連携を図っていく。

(2)
企業の海外展開を支える現地の法的基盤整備や知的財産権保護等への対応など、わが国の企業支援を在外公館の本来の仕事の一つとして積極的に推進する。その一環として、日本企業の相談相手となる実務相談窓口を在外公館に設置する。

(3)
企業人が家族を伴い安心して海外勤務ができるよう、日本人学校・補習校等のあり方を検討し、これら生活基盤整備への支援を抜本的に強化する。


提言4.「オールジャパン」のプレイヤーを発掘し、NGO等との連携を強化する。

(1)

現地に根付いて「日本の顔」として活躍する日本人を「親善大使」(仮称)とするなど、対外広報、情報発信、文化交流等の分野での連携を強化する。

 また、知的交流や広報活動等において有識者をより戦略的かつ効果的に派遣する。

(2)
NGOを今後の外交の主要なプレイヤーの一人として位置付け、連携を更に強化する。このため、NGOの自助努力を促すとともに、NGOの能力向上支援を拡充し、また、可能な限り柔軟な支援のあり方を検討する。

(3)
都道府県や市町村といった地方が果たす外交面での様々な役割を十分認識し、姉妹都市交流のみならず地方自らの国際的な取り組みの一層の促進に向け、さらなる連携強化を図る。


提言5.外交の一翼を担う議員外交を積極的に展開する。

(1)
議員外交はわが国外交の重要な一翼を担うものであり、日本での国際会議の開催等を通じ、各国からの議員招請を増加させ、その活動を主要国・近隣諸国に遜色のない水準に高めるべく努力する。また、米国をはじめ主要国において次世代を担うヤングリーダー達との間の交流を積極的に推進する。

(2)
議員外交の活性化に向け、衆参両院の関連予算の充実、運用の拡充を検討するとともに、委員会の海外派遣のあり方についても見直しを図る。これらの具体化に向け、当特命委員会としてはさらに検討を重ねていく。


提言6.将来の外交を支える人材、国際社会に通用する人材を育成する。

(1)

国際機関の邦人職員の増強、特に国際機関の「長」の獲得、将来を見据えたトップクラス若手人材の派遣に積極的に取り組む。(資料5参照)

また、様々な国際会議の議長職等を担い得るマルチ外交の人材の育成についてもキャリアパスのあり方の検討も含め取り組んでいく。さらに、平和構築分野における人材育成やPKO活動への幹部要員等の派遣を推進する。

(2)
将来、日本と外国との「架け橋」となり、日本外交の「財産」となるような知日家・親日家を戦略的に育成する。


3.多様な外交ツールの総動員

提言7.戦略的なODAをより強力に実施する。

(1)
わが国民間企業の海外進出や投資の呼び水となるようなインフラ整備に対してODAを積極的に活用する。また、ASEANとのEPAの早期実現を始めとする経済連携促進に向け、現地の経済・社会環境の整備等にODAを戦略的・効果的に活用する。

(2)
このような戦略的なODAの活用等のため、大使館・政府関係機関の垣根を越えた協力(いわゆる「4J」、「5J」:Japan Embassy, JICA, JBIC, JETRO, Japan Foundation)を推進するとともに、「4J」、「5J」とわが国企業との連携を強化する。

(3)

今後5年間でODA事業量を100億ドル積み増すことを目指すとの国際的なコミットメントの実現に向け、外交の重要なツールたるODAを拡充する。

その際、ODAの質の改善に留意するとともに、無償・技協・円借款・国際機関への協力等の適正なバランスを確保する。(資料6参照)


提言8.日本外交への幅広い理解獲得を目指し、情報の発信力を強化する。

(1)
力強い外交を推進するためには、内外の世論の幅広い理解や支持の獲得が不可欠であり、パブリック・ディプロマシー(広報外交・対市民外交)を、拠点の拡充を含め抜本的に強化することが肝要である。このため、政府・外務省ホームページのさらなる充実や在外公館による英語・中国語・韓国語等によるホームページの拡充など、インターネットを通じた発信力を強化するとともに、世界に通用するTV国際放送の実現をめざす。(資料7参照)

(2)
総理・官房長官の記者会見を英語で迅速に発信するとともに、わが国の主張が外国の主要メディアに取り上げられるよう様々なレベルでの活動を推進する。


提言9.「美しい国、日本」の文化外交を積極的に推進する。

(1)
文化外交は、軍事力に頼らないわが国外交の大きなツールの一つであり、今後とも文化交流や人物交流、文化協力などを積極的に展開していくことが必要である。このため、伝統文化や現代文化(ポップカルチャー)などジャパンブランドの発信基地となる海外拠点を整備・拡充するとともに、青少年交流の拡充や日本研究者への支援などを通じ、外国における日本文化理解者の裾野を拡大するための取り組みを抜本的に強化する。(資料8参照)

(2)
日本語教育を強化し、特に、例えば「モノづくりのための日本語」のような日本企業の進出に役立つ日本語教育を実践する。同時に、日本企業による日本語習得者の積極的な雇用を推奨する。


提言10.世界に誇る日本の科学技術、ノウハウを積極的に活用する。

(1)
わが国には世界トップレベルの科学技術やエネルギー問題、公害問題などを乗り越えてきた経験、ノウハウが存在する。資源エネルギー、保健衛生、地球環境など国際社会の諸課題の解決に向け、わが国の科学技術を駆使した国際協力に取り組む。

(2)
また、省エネ、公害対策、教育、防災など途上国が必要としているわが国の経験・技術・ノウハウを外交の力として積極的に活用していく。


4.強力な外交を支える外交基盤の整備

提言11.外務大臣が重要案件に集中できる体制を整備する。

(1)
国際社会の主要なプレイヤーであるわが国の外務大臣としては、国会開会中であっても重要な国際会議には可能な限り出席すべきである。また、外務大臣が重要外交案件に集中して取り組めるよう、外務大臣が出席することが通例となっている委員会のうち、衆議院外務委員会および参議院外交防衛委員会への出席は原則外務大臣とするものの、その他の関連委員会については、外務副大臣出席による柔軟な対応が可能となるようにする。(資料9参照)

(2)
外務大臣を始めとする関係閣僚が効率的に随時国際会議に出席できるよう、中型で利便性の高い政府専用機を導入すべくその予算化を図る。



提言12.外交の最前線基地である在外公館の活用とその強化を図る。

(1)
邦人保護、医務官による保健相談等の医療サービスの充実など在留邦人を支える在外公館の機能を強化する。

(2)
企業の輸出促進・投資誘致・観光促進のイベント等に大使公邸を積極的に活用する。例えば、わが国の農水産品等を紹介する物産展の開催や公邸料理人による日本料理の提供など、大使公邸を日本の「食」文化の発信基地とする。これらの機能を的確に果たすよう、日本を代表する施設として公邸を含む在外公館施設の整備・充実を図る。

(3)

民間企業や各国外交官の給与・手当の水準及び各地の事情を考慮した在勤手当の見直しを行い、為替・物価の変動や経費増などを反映させる形で待遇を含む勤務環境を改善する。(資料10参照) 特に、厳しい勤務地については、治安・医療・子女教育等の問題に充分な配慮を払う。また、外交活動に係る配偶者の果たす役割にも配慮する。

情報収集など外交活動に係る諸経費の充実、更なる予算化を図るとともに、運用の柔軟化を図る。


5.最終報告に向けて

 以上が、外交力強化に関する特命委員会として、これまでの議論を取りまとめた「12の提言」である。提言の実現に向け政治がリーダーシップを十分発揮し、今後の予算編成や制度改革に積極的に取り組んで行くことが何より重要である。

 一方、総合的な外交力の強化に向けては、これまで十分に取り上げられなかった課題やさらに詳細に検討すべき問題も残されている。当特命委員会としては、来年の最終報告に向け、(1)各提言の実現に向けた具体的な検証・検討、(2)情報の収集・分析体制の強化など残された重要テーマについて、さらに検討を重ねていく予定である。