スピーチ・対談

CRT栃木放送 「開倫塾の時間



「教育を考える」
衆議院議員茂木敏充氏との対談
~日本と海外の比較~


放送日:平成17年3月26日,
4月2日,4月9日
放送時間:9:15a.m.~9:25a.m.
放送局:栃木放送両毛スタジオ

林:  
 おはようございます。開倫塾塾長の林明夫です。今朝も「開倫塾の時間」をお聴きいただきましてありがとうございます。
今回は新学期になってはじめての放送ですので,特別番組として,衆議院議員の茂木敏充先生をお招きして,これからの人材教育について日本の現状と海外の現状を比較しながらお話をしていただくことになりました。よろしくお願い致します。
茂木先生,今日はよろしくお願い致します。

茂木:  はい,おはようございます。よろしくお願い致します。

林:  先生,日本の教育の現状を海外と比較してどのようにお考えですか。

茂木:  私は国会議員になって12年たちます。昨年は大臣として,今ライブドアのホリエモンなどで話題になっているIT・情報通信にかかわり,また科学技術担当大臣でもあったので,海外へ行く機会が多かったのですが,アジアの国々や今非常に教育が進んでいるといわれているフィンランドなどを訪問する中でやはり日本の教育も改善した方がいいなと思う点が非常に多いんですね。

林:  先生はその他に外務副大臣もお務めになっていたということで,広い見地から教育についてお話をお伺いしたいと思います。まず最初に,先生は,教育とは何であるとお考えでしょうか。

茂木:
 いきなり,林さんらしい非常に哲学的な質問というか,難しい問題提起ですね。私は,日本の教育というのは,先生が生徒を教えるという一方通行になっているような気がするんですね。それに対して,英語では教育をエデュケイション(Education)と言いますが,このエデュケイションという言葉はどこからきているかといいますと,ラテン語にエデュコ(Educo)という言葉があり,そこからきているんです。
ラテン語のエデュコという言葉の意味は何かといいますと,もともとは「引き出す」という意味なんです。個々の生徒・子どもたちがそれぞれ違った個性や潜在能力を持っている。これを先生が引き出すのだという,つまり上から下へというよりは双方向からという点で,私は教育に対する基本的な考え方が日本と欧米とでは少し違うんじゃないかと思っています。

林:  教育の歴史から見て,今の教育をどのようにお考えでしょうか。

茂木:
 またシリーズの中で,歴史教育の話は議論させていただきたいと思うのですが,人類の歴史と教育という観点から,本当に乱暴な言い方をすると,私は,人類というのは勉強に向いていないんじゃないかと思っているんですよ。林さんの前でこんなことを言うのはちょっと問題かもしれませんが…。
具体的に説明しますね。人類の歴史は,原人が地球上に現れてから180万年,ホモサピエンスが出現してから15万年と言われているんです。つまり,何十万年,何百万年の世界なんですよ。ところが,例えば文明ということになりますと,4大河文明,エジプトとかメソポタミア,インド,黄河文明でもたかだか4000年なんですね。世界に教育機関が出来てからの歴史となりますと,1000年とか2000年なんです。ですから,人類というのはやはり机に向かって勉強することより野山をかけずり回って獲物をとったりすることのほうが得意な動物で,あまり勉強には向いていない。少なくとも人類史的にはそうとも言える訳です。
そうすると,苦手科目の克服といっても,動いていることが好きで勉強は嫌い,その嫌いな勉強の中でも一番苦手な科目から始めたらいつまでたっても勉強好きにはならないんじゃないか。それよりはむしろ苦手な勉強の中でも一番良い科目を伸ばす。こちらの方が人類の勉強には向いているんじゃないかと私は思いますね。苦手科目をやるとやはりうまくいかない,すると,勉強をやってもつまらないということになりますから,それよりはむしろ得意科目を伸ばす。例えば,得意な英語で良い点数が取れるようになった。それだったら国語もやってみよう,国語もうまくいくようになったら今度は違う科目もやってみよう。こういうふうに成功体験を積み重ねることが大切だと思います。
もう1つ,勉強も役に立たないとしょうがないですよ。役に立たないことをいくらやっても忘れてしまいますし,また,自分でやってよかったなという気持ちにもなれませんから。成功体験を重ねることと役に立つ・意味のあることをやるということが重要じゃないかと思っています。ただ,こんなふうに言うと,茂木さん,本当にそれで受験は大丈夫なんですか,社会人になってから大丈夫なんですかなどと聞かれるんですけれども,実はラジオの前でとても恥ずかしいのですが,私は理科がものすごく苦手だったんですよ。

林:  茂木大臣は,それでも東京大学をご卒業になられた…。

茂木:
 当時の東大には,理科は二次試験の入試科目にありませんでした(笑)。高校1年の時の物理で15点とったんですよ。100点満点で15点では駄目だと理系をあきらめて,文系の方に進んだんですが,試験科目にある数学もあまり得意じゃなかった。一応,サイン・コサインとか微分・積分とかは覚えたんですが,大学入試以来1度も使っていないですよ。
しかし,国会議員になって12年,大臣もやりましたが,理科や数学が苦手で困ったということはないですよ。いろいろな企業の経営者,そうそうたる企業の社長さんにも会いますが,数学ができない,微分ができないために恥をかいたことは1度もありません。
それから,去年私は科学技術担当大臣をやっていたのですが,政府に総合科学技術会議というのがあり,そこのメンバーには,京都大学の総長であったり,東北大学の名誉教授であったり,日本学術会議の会長であったり,科学の各分野の一番の人というか,鉄腕アトムの世界のお茶の水博士みたいな人たちがそろっているわけですよ。それを取りまとめる議長役を私がやったわけです。物理が15点の私でもちゃんとその取りまとめができるわけですから,苦手科目にそんなにきゅうきゅうする必要はないんじゃないかと思っています。

林:  国際化の時代,IT化社会などとよく言われます。時代の変化に対応するために,教育はどのようにあるべきだとお考えでしょうか。

茂木:
 ITの話はできたら来週あたりにしたいと思っています。一つはやはり国際化と英語の問題です。私も国際会議などに出ることが多いわけですが,最近,どこの国の代表もみんな英語で発言するんですよ。全ての会議が英語で進行し,同時通訳は付きますが,同時通訳を使っている人というのはほとんどいないですね。ヨーロッパの人もこの10年ぐらいで非常にうまくなり,それからアジア,特に中国の人が非常に英語がうまくなってきています。
それにくらべて,日本人は下手なんですね。英語が苦手なんですよ。考えてみますと,我々は中学校で3年間英語をやり,高校でも3年間,さらに大学に行くと教養課程で2年間やりますから,合わせて8年間もやっているのに話せない。これは少し考えないといけないなと私は思っています。

林:  今日は衆議院議員の茂木敏充先生をお招きして,外務副大臣,科学技術担当大臣を務められたご経験から,教育とは何か,時代の変化に対応した教育とは何かについてお話をお伺い致しました。まだまだお聞きしたいことが沢山ありますので,また来週もよろしくお願い致します。

2. 時代の変化と教育の対応 (2005年4月2日)
林: 
 今朝も「開倫塾の時間」をお聴きいただきましてありがとうございます。今朝の「開倫塾の時間」は,先週に引き続き,衆議院議員の茂木敏充先生をお招きして,これからの教育と人材育成,日本と海外の教育事情の現状の比較についてお話していただきたいと思います。ご承知かと思いますが,先生は科学技術担当大臣をお務めになり,その前は外務副大臣という非常に重要なお仕事をなさっておられました。先生よろしくお願い致します。

茂木:  おはようございます。今日もよろしくお願い致します。

林:  先週の放送の最後に伺った,時代の変化と教育の対応についてのお話の中で,グローバル化で英語が必要であるにもかかわらず,私を含めて日本人は,それを身に付けることがなかなか大変だというお話がありました。まず,今日はそこからお話していただきたいのですが。

茂木:  先週の最後に,国際会議でも英語がほとんど国際語になっていること,そしてヨーロッパはもちろん,アジアや中国の人はものすごく英語が上手になっているのに,日本人の英語でのコミュニケーション能力は低いという話をしました。実は私,去年の今頃大臣としてフィンランドに行っていました。その機会に,フィンランドの首都へルシンキにある小学校も視察したんです。そこで女性の校長先生が小学校の6年生を何人か紹介してくれたんですが,驚いたのは,みんな英語がうまいということなんです。その中の一番英語が上手な子に,「君,何カ国語を話すの?」と聞いてみたら,「フィンランド語を含めて4カ国語を話します。」と言うんです。小学校6年生ですよ。話を聞いてびっくりしてしまいました。

林:   それは校長先生ではなく,生徒さんですね。

茂木:
 もちろん,生徒さんです。さっそくその授業を見せてもらおうと教室に行きました。英語の授業は全部英語でやるんです。お隣の国のスウェーデン語の授業は全部スウェーデン語でやるんです。一方,日本は,日本語を使いながら英語の教育をする。フィンランドでは英語の教育はそのまま英語でやるという方法を取り入れており,これはイマージョン教育といってカナダなどが有名なんですが,やはりコミュニケーションの手段としての英語教育がきちんと確立されているなと思います。
日本はどうして駄目なのかといいますと,文法からやるからなんです。赤ちゃんを見て下さい。日本語を文法から勉強する赤ちゃんなんていないでしょ。語学はやはり耳からです。カナダなどの国々では,「聞くことから入って次に話す」とコミュニケーションの手段として語学を考えているのですが,日本は,江戸時代,さらにその前から,知識を習得する手段として英語・外国語をとらえてきた。杉田玄白などが「蘭学事始」や「解体新書」などを翻訳するための語学,外国の進んだ技術や文化を取り入れる手段としての外国語だったのです。かつては中国語であり,その後はオランダ語や英語であったりしたわけです。
今だに日本は,こういう習慣から抜けきっていないんです。ですから私は,「今の英語はコミュニケーションの手段」と最初からとらえ,ネイティブな英語が堪能な先生に教えてもらうのが良いと思っています。

林:  そろそろ,そういう状況から脱却した方が良いということですね。

茂木:  小学校から英語教育をやっていいんじゃないかと思います。フランスは,小学校1年生から外国語教育を取り入れています。先ほど述べたフィンランドもそうですが,ドイツや韓国でも,小学校3年生から英語教育を取り入れています。やはり多感なというか耳が良い小さい頃から英語教育を始めた方が良いと私は思っています。

林:  ところで,時代の変化ということでもう1つ,先生は,IT分野についてはどのようにお考えでしょうか。

茂木: 
 最近,ライブドアのホリエモンが非常に話題をよんでいますが,やはり時代は変わってきたなと思うんですね。
私は,堀江さんとも友人ですし,楽天の三木谷さんやソフトバンクの孫さんもよく知っているんです。新興企業ですが,例えばソフトバンクの今の資産というのは4兆円なんです。これは,だいたい東京電力と一緒なんですね。楽天の資産というのが1兆円,これは三菱重工と同じなんですよ。それだけIT革命が進み,IT企業が急成長する時代といえるんですね。
二百数十年前にイギリスで産業革命というのが起こった。産業革命は,いってみれば労働力の考え方を変え,世界中の製造業の生産コストを圧倒的に下げた。それに対して,IT革命は,流通コストやトランズアクションコストというものを下げる。これがいろいろなところで社会の変化につながっていると思います。

林:  IT革命で,どんなことが変わるとお考えでしょうか。

茂木:
  例えば企業では,今までは商業といえば店舗を持たなければいけなかったんです。ところが,インターネットの時代というのは,三木谷さんの楽天のネットショップもそうですが,店舗をもつ必要が無くなる。ちっちゃな企業でもインターネットを使って全国展開や世界展開などが代理店無しでやれるように,企業経営も変わっていくのです。
それから,社長と社員の関係も変わるんですね。今まではピラミッド型の組織というか,社長がいて役員がいて,部長,課長,係長,平の社員がいるという企業組織でしたが,これからはインターネットで社長と社員が直結できるんです。例えば日立やソニーもそうなんですが,誰でも社長にメールをうてるようになっていて,社長はそのメールを見て,社員に直接指示ができる。そうすると,中間管理職がいらなくなってしまうんです。今までのピラミッド型の組織から台形型になるというか,幹部と社員が双方行でそのまま結びつく時代に変わっていくと思います。
私は,教育もおそらくそうなるんだと思います。先生と生徒の関係が一方通行ではなく,両方が相互に交流する。さらに言うと,単に先生が知識だけを持っていても,生徒には立派な先生だとは思ってもらえないような時代になってくると思っています。

林:  インターネット時代には知識だけではダメ? それでは先生と生徒の関係はどのようにあるべきだとお考えでしょうか。

茂木:
 これまでは物事を知っていれば先生は立派だと思われたかもしれません。しかし,今はものを知るだけだったら,ネットで検索すれば子どもだってすぐできるんですよ。昨年末,スマトラ沖で大地震が起こり,インドシナ半島に大きな津波が押し寄せました。この津波,これは英語でも“tsunami”なんです。なぜ英語でも“tsunami”になったかというと,それは,1946年,今からちょうど50年前にアリューシャン列島で大きな地震が起こりまして,それによる7mから8mの波がハワイへ押し寄せました。その波をハワイの日系人が“tsunami”という言葉でよび,それがハワイからアメリカ本土に伝わって英語にもなったんです。
物知りだと思うでしょう。先ほどインターネットで調べただけなんです。そんなものなんです。つまりインターネットで調べると,単なる知識や情報は誰でも簡単に入手できる時代なんです。先生がいくら教材を準備して生徒に教えようとしても,そういうことはもう生徒が自分で調べられるんです。そうすると,教える側ももっと別なもの,経験というか知恵というかを持たなくてはいけない。これが変化への対応ということだと思います。

林:   ありがとうございます。なかなか話が尽きないですね。今日の「開倫塾の時間」は,衆議院議員の茂木敏充先生をお招きして,これからの教育と人材育成についてのご提案と,特にITについてのお話をお伺いしました。先生からさらにいろいろなことを教えていただきたいので,また来週もおいでいただいてよろしいでしょうか。

茂木:  はい,結構ですよ。

林:   よろしくお願い致します。茂木先生,それから放送をお聴きの皆様,ありがとうございました。

3. インターネット時代の教師と生徒 
4. 教育の質の向上と学生の自立   (2005年4月9日)
林:   おはようございます。開倫塾塾長の林明夫です。今朝の「開倫塾の時間」も前回,前々回に引き続きまして,衆議院議員で,外務副大臣,そして科学技術担当大臣をお務めになりました茂木敏充先生から教育についてのお話をお伺いしたいと思います。茂木先生,よろしくお願い致します。

茂木:  はい、よろしくお願い致します。おはようございます。

林:
  今、教育の中で一番大事なことの一つは教育の質の向上だと思うのですが,今日はそれについてお話をお伺いしたいと思います。よろしくお願い致します。
茂木先生は,学校の先生についてどのようにお考えでしょうか。

茂木:  山田洋次監督が制作された映画に,「学校」という作品がありました。確か西田敏行さんが主役で,夜間中学校の先生役をやられたと思うんですが,ある場面で同僚の先生を囲んで西田さんがこう言うんですよ。「あなたは,教師というものを型にはめて考えていないか。」「生徒を引き付けるのは,勉強の内容じゃなくて教師の人間の部分なんだよ。」と。私,先週もこの番組で,インターネットの時代になるともう知識だけじゃ駄目で,経験や知恵というものが大切だという話をしたわけですが,これはある意味西田さんの言葉につながるところもあるんじゃないかな。教師が生徒たちから見て魅力的であるということが極めて重要で,そのためにはやはり教師の資質そのものが問われ,そこに競争があるということが必要じゃないかなと思っています。

林:  教師の資質や教育の質の向上について,茂木先生はどのようにお考えでしょうか。

茂木:  例えば先々週お話したフィンランドでは,小学校の先生にも大学院修士号の取得が義務付けられるようになってきています。それから先生の競争という点で一つ例を挙げますと,私は,東大を出た後,ハーバード大の大学院に進んだのですが,最初の試験の時にびっくりしたことがあります。なぜかと言うと,英語で2時間ずっと解答を書き続けて、やっと終わり,くたくたになって帰ろうとすると,別な先生が入室してきて,何やら用紙を配り出したからなんです。たまらないな,また引き続きテストかと思ったらそうではなく,その授業を担当した先生を,今度は学生が採点するための用紙だったのです。用紙には授業が適切であったか,使用した教材はどうだったかなどのいろいろな項目があって,5段階で評価するんです。3以下ですと,その先生は次の学期から学校に来られなくなります。

林:  厳しいですね。

茂木:   非常に厳しいですから,先生も熱心に授業に取り組みます。もちろん大学院レベルだから学生が教授を適切に評価できるという面もあります。しかし,どのレベルでも何らかの評価,競争というのは教師の側にも必要なんじゃないかと,私は思います。

林:  先生の教育の質の向上,つまりTeacher Educationのためにはどうしたら良いでしょうか。

茂木:
 教えやすいことを教え、採点しやすいことだけで生徒を評価していては駄目だと思います。フィンランドだけでなくスウェーデンもそうなんですが,北欧では長期担任制をとっています。これは,総合性の学校,小・中が一貫となったような学校で,担任の先生がずっと同じなんです。ですから,ペーパー試験をしなくても,普段のやり取りの積み重ねで個々の生徒の能力がわかるんです。その子がどれくらい考える力を持っているかがわかるんです。
日本の場合は,担任の先生が毎年変わるので,子どもの能力の評価をペーパー試験でやっているんです。試験しやすい内容,例えば年号を問うなどの,あまり意味のないこと,ただ点数をつけやすいもので評価しているだけで,子どもの本当の能力を評価していないんじゃないかと私は思います。
私は常々,小中一貫教育や中高一貫教育の話をしています。初回の放送で「エデュコ」という言葉を使わせていただいたんですが,長い目で子ども達を見てその子どもの持っている潜在能力を「引き出す」ことが,本当の教育だと思っています。つまり,この子ども達にはどのような能力があり,それをどう引き出していったらいいんだろうと考える教育に変えていく必要がある。小中・中高一貫教育はそのための制度改革なんです。

林:  アメリカには,チャータースクールという制度があります。これについて茂木先生はどのようにお考えですか。

茂木:   これは,学校の自由度を増やすということなんです。日本は公立と私立という学校形態ですが,アメリカでは新しい形態として,第3セクターのようなところも小学校などを作れるというかたちになっています。「作った後は自由にやって下さい。ただし,一定期間に成果が上がらなかったら廃校になりますよ。」ということになっています。単年度のカリキュラムが全部決まっていて,1年間のうちにこのような内容を指導しなさいというのではなく,もう少し長いスパンで,「学校が自由度を持ってやって下さい。ただ最終的な成果についてはきちんと評価させてもらいます。」という制度をとっているのです。日本でも,それぞれの学校,それぞれの先生がもう少し自由度を持って子ども達を教えていくことが,これからは重要ではないかと思いますね。

林:  学校の校長先生にも裁量権があった方が良いということですね。

茂木:  それぞれの学校の自由度の拡大ということで,もちろんそうですね。

林:   最後になりましたが,大学教育と学生の自立というテーマについてお伺いしたいと思います。

茂木:  大学教育で私が通った東大とハーバード大を比べて,どちらの学生のほうが勉強熱心だったかと言うと,明らかにハーバード大の学生のほうが熱心でした。では,アメリカ人は勉強が好きで日本人は嫌いかというと,そんなことじゃないんだと思います。一番の違いというのは,奨学金なんです。

林:  奨学金ですか。

茂木:   日本の学生は親の臑(すね)をかじって,親のお金で大学に行くのがほとんどです。高校時代は受験,受験で過ごしていますから,大学生になったら青春を謳歌しようと,テニスをやったりいろいろなサークルに入ったりするんです。一方,アメリカの学生は,奨学金をもらって,ローンを組んで自分のお金で大学へ行きます。大学で何を学ぶかによって社会に出てからの価値が変わってきますから,しっかり勉強しないと元がとれないという思いを持っています。この点,アメリカの学生の方が早く自立しているんじゃないかと思います。

林:  社会人になってからの違いはどうですか。

茂木:  日本では,例えば「あなたのお仕事は?」と聞くと,「東京三菱銀行で働いています。」あるいは「ソニーに勤めています。」という答えが返ってきます。これに対して欧米人は,「私は金融関係の仕事をしています。」「システムエンジニアです。」などと,自分の職種について話すんですね。学校にしても,「東大生です。」「一橋大に行っています。」「足高に通っています。」ではなくて,自分は何の分野の勉強をしている,どのような目標を持って勉強をしているということの方が重要じゃないかと思います。どこで学ぶかよりも何を学ぶかの方が大切です。さらに学ぶにあたっては,先生だけでなくいろいろな職種の社会人もその経験を持ち込んで教育の現場を作っていくことが,これからは大切になってくると思います。子ども達の能力を引き出す,つまり「エデュコ」のための力をみんなで,社会全体として膨らませていくことがこれからの教育では重要だと思っています。

林:  ありがとうございました。今回は3回シリーズの最後ですが,衆議院議員の茂木敏充先生から貴重なお話をお伺い致しました。教育というのは英語の語源は「エデュコ」である。「エデュコ」とは引き出すという意味だということを教えていただきました。私達一人ひとりがもっと子ども達の限りない可能性を引き出す努力をしていかなければなりませんね。茂木先生,ありがとうございました。

茂木:
 今回は3回シリーズで私の教育への思いを語らせていただきました。ありがとうございました。