2006年1月26日
1月26日の衆議院予算委員会で自民党を代表して質問に立ちました。質疑の内容は
以下の通りです。
○茂木委員
自由民主党の茂木敏充です。外交問題、それからIT革命について質問させていただきます。
まず、外交から入ります。 今日の国際社会には大きく二つの潮流が起こっていると私は思っています。その一つは、人類史上かつてない大きな規模、スピードで進んでいるグローバル化、そして各国の相互依存関係の深化という問題であります。そしてもう一つは、例えばEU、そして北米のNAFTAに代表されるような地域のグループ化、そして域内協力の進展という問題です。
第一の潮流であるグローバル化の進展は、経済の効率化を上げていく、そして種々の利便性を幅広く世界に伝播させる、こういう肯定的な面もあります。しかし、その一方で、貧富の格差が広がる、そしてテロや、感染症といった新たな脅威、さらには地球環境問題など、さまざまな問題が瞬時かつ大規模に国際社会に伝播していくといった、負の側面も抱えるようになったと思っています。
グローバル化に伴うこのような課題に対して、国際社会がこれまで以上に幅広く緊密に連携していく、国際協力を図っていく、こういうことが必要な時代に入っています。
第二の潮流である地域協力の進展、これはEUの拡大そして深化が典型でありますが、ほかにもNAFTA、アフリカのAU、南アジアのSAARC、そして南米においてはメルコスール、こういった形で、世界各地でグループ化、域内協力が大きく進んでいるわけです。
明日から経済産業大臣と農水大臣は、ダボス会議に出席されるということですが、例えばWTOのような国際会議、国際的な交渉の場でも、グループ内でも、あるいは地域内で、いかに意見を集約して、グループの裏づけをとって会議に臨むかが重要になってきています。
このような国際協力、そして地域協力という観点から見ると、アジアは遅れている、統合はおろか経済圏づくりにもいっていないという問題を抱えていると思います。
これまでの日本は、例えば日米、日中のような二国間、バイを中心にした外交をしてきました。もちろんこれからも日米同盟や、日中、日韓関係は重要ですが、国際社会の二つの大きな潮流を考えると、今度はそれ以上に、マルチの外交、多国間の中で、日本がきちんと発言力を強めて、国際協調でもリーダーシップをとっていく、こういう姿勢が重要ではないかと考えています。
「マルチの外交の強化」の観点からしますと、日本にとって今特に大切な事が二点あります。その一つは、国連の改革をきちんとやり、その中で日本が安保理の常任理事国になっていくこと。もう一つは、東アジア共同体構想をしっかり進めていくことであると思っています。
国連は、昨年創設60周年であり、今年は日本が国連に加盟してちょうど50周年という記念すべき年であります。
こちらの表(図1)をごらんいただきたいと思います。1945年に国連ができたとき、加盟国はわずか51カ国でした。それが現在、5倍の191カ国に広がっております。
ところが、常任理事国P5は創設当初から全く変わっていません。そして、非常任理事国は1965年の時点で6カ国から10カ国に増えましたが、それ以降40年間全く変わっていません。この中であおりを受けているのが、アジアとアフリカです。
当初国連加盟国が9カ国であったアジアは現在、6倍、54カ国になってきている。そしてアフリカは、4カ国から10倍以上の53カ国になっている。しかし、常任理事国の数で見ますと、アジアは1カ国、非常任の枠が2つ、アフリカは非常任の枠が3つ。それに対して北米と西欧、この地域は加盟国数は29カ国ですが、常任理事国は3つ、非常任の枠は2つ持っているという状況です。
図1 国連の構成
同時に、今国際社会を取り巻く課題は、従来的な安全保障や自由貿易という問題だけではなくて、地球環境の問題であったり、テロとの闘い、経済分野でも知的所有権など、これまでは考えられなかったような様々な問題が出てきています。まさに国連改革が必要な時期に来ていると感じます。
昨年来、G4でのいろいろな活動もありました。そして、今、日本はアメリカとの協調も模索しております。日本にとって、今年、安保理のメンバーであるうちが本当にラストチャンスという思いも持っているところです。この点先週の施政方針演説におきまして、総理も国連改革への取り組みの意気込みを述べていらっしゃいます。
また東アジア共同体につきましても、昨年12月クアラルンプールで開かれました東アジア首脳会議に、総理が出席をされて、東アジア共同体構想が盛り込まれた共同声明にお隣の温家宝首相のペンを借りて、たしか署名をされておられました。
そこで総理は国連改革、そして日本の常任理事国入り、さらにアジアにおける東アジア共同体づくり、これらにどう取り組まれていくのか、基本的なお考えをお聞きしたいと思います。
○小泉内閣総理大臣
国連加盟国が、60年前51から現在191カ国、4倍近くになったということから、国連での役割、日本の責任も、時代の変化につれて変わってきているだろうというご認識だと思いますが、私も現在、世界が非常に狭いといいますかグローバル化といいますか、瞬時に情報が行き交う、そしてお互い協力していかなければならない課題が多い中で、国際社会の中での日本の役割も大きくなってきたと認識しております。
その中での国連改革でありますが、昨年は、日本とドイツ、インド、ブラジル、このグループ4、G4と言っていますが、この四カ国が、ともに協力して安保理常任理事国になろう、国連改革に臨んでいこうという協力態勢をとったわけでありますが、これは採択に至りませんでした。
しかし、これだけG4が協力して各国に働きかけ、国連改革の重要性と、また、またとない国連改革の必要性が多くの国から共有されるなど、一定の成果は得たと思います。今後、このG4案が採択されなかったという点も踏まえて、さらに、他の国々とどういう協力態勢がとれるか、今のG4との協力とアメリカを中心としたこの採択に賛同しなかった国との関係という点も踏まえて、新たな国連改革の状況をどう開いていくかというのが現在の課題だと思っております。
日本としては、さまざまな国際会議で日本としての役割なり責任を果たすように多くの国から期待されております。G8という先進国の首脳会議のみならず、アジア太平洋会議、APECあるいはアジアとヨーロッパのASEM、そしてASEANプラス3、日中韓、さらに、初めて去年十二月に行われました、インド、ニュージーランド、豪州も加えたASEANと日中韓との東アジア・サミット、こういう会議で、これはほとんど毎年のように会議がたびたび開かれます。首脳会議のみならず、その間、各担当大臣、また、政府部内での担当者が頻繁に調整に走り回るというように、極めて会議が多く、調整課題も多い。
そのような中で、日本としては、今後、日米同盟というものを基本に、国際社会の中でどのように各国と協力していくか、私は、これほど国連改革の機運が盛り上がってきた時代はないと思っております。
国連改革には国連の事務局の改革等、さまざまな改革があります。中でも一番大きな改革が、安保理の常任理事国の数をどのようにふやすかということですが、まだ合意が出ておりませんので、今までのG4での協力の成果を踏まえて、今後、各国と協力する道をこれからも模索しながら、これを現実的な改革につなげていきたいと思っております。
○茂木委員
総理が触れられた東アジア首脳会議ですが、私は、東アジア共同体を目指すという意味で画期的な一歩だったと思っています。
では、どうしてこういった東アジア共同体が地域の共通目標になってきたか。その背景には、三つの歴史的な変化がアジアでもあると思っています。
その一つは、アジアは、これまで、言語や文化が違うという壁がありましたが、著しい経済成長、そして相互依存関係の中で、共通の経済活動や生活様式がアジア全域に浸透して、一体感が醸成されるようになってきたこと。
二つ目には、90年代のアジア金融危機、そして最近のテロ、海賊問題、さらには鳥インフルエンザ、感染症対策、まさに地域が一致して協力をして解決しなければならない課題というのが大きく浮上してきていること。
そして3番目には、台頭する中国そしてインド、これらの国とどう良好な関係を築いて、枠内にどうこれらの国を取り込むか。さらにアジアの各国で起こっているさまざまなナショナリズム、この高まりを国際協調の方向に振り向ける、このような必要性が生まれてきているからです。
EUの場合、長い年月をかけて統合を今なし遂げようとしています。1950年にシューマン・プランが発表されました。それから50年、EUがどうしてここまで来られたのか。もちろんそこには、もう二度と戦争を起こしたくないという思い、第一次世界大戦、第二次世界大戦の苦い経験が背景にありながら、同時に民主主義そして自由経済という共通の目標があり、この共同体構想を引っ張っていく牽引車として、ドイツ、フランスという存在がありました。このことはEU統合にとって大きかったと考えています。
おそらく、これから東アジア共同体をつくっていく上で、牽引車になっていくのは、日本であり、お隣の中国、ということになってくると思います。この日本と中国、東アジア共同体のメンバー構成についても、今、若干意見が違うようであります。牽引車の間で認識が一致しないと、こういった壮大な構想をまとめていくことは難しいのではないかと考えております。
この東アジア共同体の構想、これが昨年の首脳会議以来、大きな機運の高まりを見せる一方で、日中間で今ハイレベルの対話が途絶えている。中国が靖国問題を理由にしてこのハイレベルの対話を拒否している、これは私は非常に残念なことだ、と思っています。靖国問題と首脳会談をリンクさせる、こういう中国の対応には問題があると考えていますが、同時に、中国との間に対話の窓口は開いてると言うだけで、中国の出方を待っているだけではなかなか今の膠着した現状を打開することは難しいとの思いも持っています。
中国をどう見るか、これについては様々な議論があるわけですが、お隣の中国が経済的に発展することは基本的にだれから見ても好ましいことだと思っております。そして、どんな中国を期待するか、日本が、アジアが、世界が。これは、オープンで開かれた、そして未来志向の中国であります。同時に、レスポンシブル・ステークホルダー(Responsible Stakeholder)、日本語にすると恐らく、国際秩序を支える責任者としての中国の役割ということだと思います。そのような場に中国を引き出していく努力も必要ではないかと考えています。
こういった観点から、今後の東アジア共同体づくりにどう取り組んでいかれるのか、またその中で、ハイレベル対話も含め日中外交をどうしていくのか、外務大臣の見解を伺いたいと思います
○麻生国務大臣
昨年の十二月に第一回の東アジア共同体サミットというのが開かれました。これは、従来のASEANプラス3に加えまして、インド、オーストラリア、ニュージーランド、この三つが入ったところが非常に大きな意味があると思っております。この地域におきましては、ほかにもAPECとかASEANとか、会議がいろいろありますけれども、そういった中で、インド、ニュージーランド、豪州の三カ国が新たに入った大きな形での会議が新たに立ち上がったというのは、私どもは記念すべきことだと思っております。
今言われましたように、その中では、言語が違う、人種が違う、加えて宗教がもう全然違いますので、ヨーロッパの場合、仮にも、シャルルマーニュ大帝の時代以来、キリスト教という、文化というか宗教で一応の枠がくくられておりましたけれども、アジアの方は、ヒンズーもあればイスラムもあれば仏教もある、いろいろ宗教も違いますので、なかなか難しいという極めて悲観的な話が一方にあります。
かつてフランスとドイツが一緒になるわけがないと言われたECが今のEUになるまでの間、かれこれ、今茂木先生が言われたように五十年の月日がたっております。結果として、両方で手を組み、またいろいろな形で、東ヨーロッパというものの脅威というか、ソ連の脅威がなくなった以後、意義がまた新たに問われたりするなど、いろいろ環境も違いますが、アジアの場合は、少なくとも、この地域において、世界人口のほぼ五割強ということになるこの地域、インドと中国があるせいもありますけれども、その中にあって、今間違いなくアジアというのは経済的に伸びておりますから、その国々が手を携えていろいろな形でやっていくというのは、やはり1997年のアジア通貨危機というのが非常にきっかけになった。しかも、あのときに、少なくともインドネシア、タイ等々に、積極的に通貨危機に対応した国というのは日本であることははっきりしておると思います。そういった意味では、頼りになる国として日本の存在は大きかったと思っております。
いろいろな意味で、今、アジアという中で、感染症とか鳥インフルエンザを言われましたけれども、みんなが共通に考えなければならない問題がこの地域に、特に人口が密集しているせいもあって非常に大きいのだと思いますので、そういった意味で共同体に向けた流れが出てくると思っております。
今、中国の話が出ましたけれども、私どもも、一つの問題だけで、ほかの問題はすべてだめで、全然話も面会もないというような形は少々異常と思っております。
私どもは、いろいろな国際会議場で向こうの外交部と会うこともしばしばありますけれども、私どもは常にオープンという姿勢はずっととり続けております。今、少なくとも韓国とも協議をしておりますので、今言われましたように、靖国の問題だけで会わないというのは多分中国だけだと思っております。
その他の部分は経済に限らず人的交流ももの凄い勢いでふえておりまして、多分、日中間で400万人を年間で超えると思っております。そして、韓国も、昔は年間で1万人が今1日1万人を超えるほどの交流というほどになりましたし、共通のサブカルチャーとして、ジャパニメーション、Jポップ、Jファッション、いろいろなものが出てきて、共通の話題もいっぱい出てきたというのは、従来とは状況が恐ろしく違う。それを補完しているものとして、やはりインターネット等々の通信技術の進歩というのがそれを非常に助長しておると思っております。
やはり、こういった一つの大きな共同体ができ上がるというのは大変大事かつ有意義かつ経済的にもいろいろな意味もあることだと思っておりますので、この問題につきましては、いろいろ山あり谷ありとは思いますけれども、日本としては、積極的に関与していくことが日本の国益にも資する、アジアの人たちにも資すると思っております。
○茂木委員
先ほど申し上げたレスポンシブル・ステークホルダー(Responsible Stakeholder)、中国が国際秩序を支える責任者としての役割を担うということでは、安倍官房長官が、官房副長官時代、私も外務副大臣で協力して六者協議を立ち上げましたが、これは私は一つの成功例だと思います。中国は六者協議で議長役をやり、きちんとした役割を果たす立場に立っています
私は、これを単に北朝鮮、六者協議の問題だけではなくて、例えばアジアにおけるエネルギーの問題、環境問題、そして、先ほど申し上げた東アジア共同体づくり、こういう課題をテーマに対話の窓口を広げていく、日中関係を改善していく、こういうことも必要だと思いますが、官房長官の見解をうかがいます。
○安倍国務大臣
日中関係については、日本にとって安全保障上も経済上も極めて重要な二国間関係の一つである、こう思っております。ただいま委員御指摘のとおり、いろいろな場を通して中国との窓口を開いていく、あるいは関係を深めていくということは極めて重要であり、有意義であろうと思っております。
経済関係について言えば、日中間は今や切っても切れない関係になっていまして、日本企業は、中国への輸出で利益を得ておりますし、また投資によって競争力を得ています。一方、中国も日本からの投資によって雇用を確保しておりますし、また日本にしかできない半製品を輸入し、そしてそれを加工して輸出することによって大きな外貨を獲得している。まさに、日中は互恵の関係になっているんだろうと思います。
そこで、先ほど茂木先生御指摘になった、中国がしっかりとレスポンシブル・ステークホルダーになっていくためには、これはゼーリック副長官もかねてから主張していることでありますが、例えば中国もWTOの一員でもあるわけですから、たとえ政治問題が起こったとしても経済関係を毀損することはないという原則をつくる必要があるだろうと思っています。
政治問題を達成するために経済に圧力をかける、あるいは経済界にプレッシャー、ハラスメント的なことが起こるということになれば、それは、それそのものが土台を揺るがしていくことになりますし、また、WTOの一員として、果たしてそれがステークホルダーとしてとるべき行動かどうかということになると思います。
そしてもう一点、政治問題をやはり達成するために会わないというこの外交手段を梃子に使う、これは明らかに私は間違いであろう、問題があるからこそ、窓口を開いて、会って話し合いを継続していく、これがやはり成熟した国家のとるべき態度ではないかと思います。
一方、日中関係は極めて重要であります。また、先ほど茂木委員が、今世界の中で起こっているこのナショナリズムをしっかりと冷静に抑制していくことが大切と述べられたのはまさにそのとおりであると思っています。日本においては見事に冷静な対応をしていると思います。この二年間、いろいろなことが起こったわけでありますが、日本人はだれ一人中国の国旗を焼いた人はいません。あるいはまた、胡錦濤主席の写真を破いた人もいませんし、乱暴ろうぜきをした人もいません。以前同じように、今もそしてこれからも、中国の人たちを温かく迎え入れ、接していく、これは私たちの誇るべき態度であろうと思っています。
やはり、日中間の未来を担う若者の交流を進めていくことも大切であります。今回の補正予算におきまして、高校生の日本へのホームステイの人数をふやしています。日中友好会館においては、短期のホームステイを千人余りふやし、国際交流基金では、長期のホームステイを150人ほどふやしました。さらに、こうした試みを通じて日本に対する誤解を解いていく努力をしていきたいと思っております。
○茂木委員
今外務大臣と官房長官から答弁いただきましたが、本当に日本が考えていることが中国に対しても国際社会にも正しくメッセージとして伝わるように、一層御努力いただきたいと思っております。
時間の関係で、IT革命の問題に入りたいと思います。
先週初めからのいわゆるライブドア・ショックは今週に入りライブドア幹部四名の逮捕にまで進展して、大きな注目を集めています。報道によると、現状での中心となる容疑事実は風説の流布等による証券取引法の違反ということですが、厳正な捜査により事件の全容解明が早急になされることを期待したいと思っています。
こうした事案に対しては、捜査当局による厳正な対処に加えて、そもそもこのような市場をゆがめる行為を防止する制度的な対応も極めて重要だと思います。例えば百分割、こういった過剰な株式の分割や自主規制となっている四半期の開示を悪用して投資家を欺く、こういう行為は二度とあってはいけないと考えております。
昨年から今年にかけて、既に制度的な対応、変更が行われている点もあります。分割につきましては、昨年の三月から東証の方で五分割までという自粛が行われています。また、分割後、株券の印刷までに一定の期間がかかってしまう、それで需給のアンバランスが生じるという問題につきましても、株券の振替制度の活用、そして、これからペーパーレスの時代になっていきますから、対応はなされると思います。
この問題でポイントは三つあります。一つは、情報の開示が十分かどうか。そして二つ目は、企業のコーポレートガバナンスがしっかりしているか、機能しているかどうか。そして三つ目は、証券取引所、そして市場の監視機能が十分かどうか。
日本の証券等監視委員会では、本体の人員は先ほど大臣の答弁のように300人、それで地方の財務局も入れて550人ぐらい。これに対してアメリカの証券取引委員会、SECの方は3900人の体制なんです。私は、体制そのものについても考えなければいけないと思っております。
与謝野大臣、ファイナンシャル・タイムズが日本の東証をどう呼んでいるかご存知ですか。Tokyo Stock ExchangeではなくTokyo Stop Exchangeだと。これは笑い事ではありません。
やはり私は、ここで世界の投資家マーケットというものが東京を見放すようなことがあったら本当に深刻なことになります。機能の強化や制度の充実を今後もきちんとフォローしていく必要があります。自民党においても、私は今、企業統治委員会の事務局長を仰せつかっておりますが、政府とも連携をして、必要な措置を取っていきたいと思っております。
開示についても、「四半期開示」は自主ルールではなく、きちんと証券取引法で担保する必要があると考えておりますが、これについて与謝野財政・金融担当大臣に所見を伺います。
○与謝野国務大臣
四半期の開示、すなわち財務諸表を公開するということにつきましては、平成15年から自主的な問題として各社が開始をしまして、大体、上場会社の約9割の方がそういうことを行っておりますけれども、実はこの四半期の開示の財務諸表の真実性については、証取法の罰則等でその真実性が担保されていないという問題があります。経済のスピードは速いですし、また、投資家が投資をするに当たって、必要な情報を得る、その真実性は罰則等によって担保されているということは、多分多くの投資家が要請をされていることではないかと思っております。
この国会で提出をいたします証取法等一連の法律改正の中で、やはり四半期ごとの財務諸表についてもその真実性が担保されるよう、罰則等においてそれをなすということを考えなければならないという意見が今非常に強くなっておりますので、茂木議員の御指摘の方向で法律改正をしなければならないと私は考えております。
○茂木委員
しっかり取り組んでいただきたいと思います。
ライブドアが本当にIT企業として付加価値や新しいビジネスモデルを市場や顧客、消費者に提供してきたか、これについてはいろいろな指摘も今あるところです。IT革命、そしてITベンチャーの名前のもとで、実際には新しいビジネスモデルを提供するのではなくて、マネーゲームに走って実体以上に株価、そして株式時価総額をつり上げる、こういうことには問題があると思います。
株価の見方にはPERとか、いろいろな指標がありますが、大づかみに申し上げると、日本の企業の場合、大体、年間に上がる収益の10倍から20倍ぐらいの株価、時価総額がついている。それが新興のベンチャー企業では、伸びているところで50倍ぐらいの株価が出てくる。ライブドアなどになりますと、一時は200倍、こういう値段がついていたわけです。200倍というのはどんなイメージかといいますと、年々、倍々ゲームで企業というのが伸びていくことになります。どこかでやはりそういう路線は限界が出てくるのではないかと思います。
当然、今後は過剰なM&Aを用いる経営手法の見直しが迫られることになっていくと思います。ただ、その一方で、日本におけるIT革命、これはしっかり進めていかなければならないという思いも強く持っております。
2001年以降、遅れていると言われた日本のIT戦略は相当進んでいます。
総理には何度も見ていただいた図表(図2)でありますけれども、わが国のIT戦略では世界最先端のIT国家の実現に向けて、まずはe-Japan戦略でインフラの整備を行いました。そして、インフラの整備ができた段階で利活用の方に「戦略Ⅱ」で重点を移します。さらに、利用者の視点でのラストスパートとして、医療とか教育の分野、電子政府、セキュリティーの分野、これらを強化して今日まで至ってきているわけです。
私は大きな成果が出ていると考えていますが、IT戦略本部の本部長としての総理が、この五年間のIT戦略の成果や課題についてどのようにお考えか、お聞かせいただければと思います。
○小泉内閣総理大臣
茂木議員もIT担当大臣として日本のIT戦略には大きくかかわっていただき、そして今、目標どおり世界最先端のIT国家を実現しました。今後、このITを、我々一人一人、生活面においてITとはこんなに便利なのかと実感できるような社会にしていきたいということで進めております。世界もIT戦略には、しのぎを削っておる状況であります。しかも、技術の進歩はもう驚くほどであります。そういう技術の進歩に遅れてはなりません。
せっかく最先端IT国家になったのですから、これからも最先端のIT国家であり続けなければならない、不断の改革をしていかなければならない。我々が例えば病院に行く場合も、あるいは役所に行く場合でも、自宅でも、IT社会というのはこういうものかということをわかり易く理解していただくような努力が必要ではないでしょうか。
今、スーパーマーケットやお寿司屋さんでも、知らないところでIT技術が使われています。ああこんなところにこういう技術が使われているのか、これがIT社会なのかとわかるように、できるだけわかりやすく、国民の皆さんにも理解し協力していただくような体制をとって行きたい。時代が変わったな、これからますます便利になるな、同時に安全面でもしっかり配慮していこう、という意識を持つことも大事だと思っております。
○茂木委員
今総理の方から、世界最先端であることの難しさ、そのために不断の努力が必要だというお話がありました。二点だけ指摘させていただきたいと思います。
一つは、ITの力を行政改革、そして構造改革にもっと生かしていく必要があるという点です。
こちらの図(図3)をごらんいただきたいと思います。電子政府の状況についてです。行政手続の96%まで申請は電子的にできるようになった。しかし、どこまで実際に使われているかということになると、手続の多い登記とか国税を見ても、不動産の登記で0.07%、それから国税の申告でも0.26%、まだここまでしか使われていません。この実利用を増やしていくことが極めて重要だと私は思っています。
それから、総理の方からも病院の話がありましたが、レセプトのオンライン化もしっかり進めていかなければならない大切な分野だと考えています。
松田IT担当大臣、そして厚生労働大臣から答弁いただければと思います。
図3 電子政府の現状
○松田国務大臣
茂木先生のおっしゃるとおりで、環境はできてまいりましたが、その利活用が本当にまだこれからというところであるのはそのとおりでありまして、まさに何のためにやってきたかといえば、ITを使って、まさにこの日本の国を改革し、国民に最も便利な使いやすい、そして小さな政府をつくっていこうということであります。
そういう意味で、ごく最近、新しくこれからの五年間の改革戦略をつくらせていただいたわけでありますが、その中の一つの大きな眼目は、まさに今茂木議員がおっしゃった、行政のせっかく整備したオンラインシステムをいかにしてもっと活用していただくか、ということでございます。
そのために、具体的に、これから三月末までに、議員の図の通り登記とか国税とか社会保険、こういったところが大どころでございますが、こういったところを中心にいたしまして、オンライン利用促進を進めるべき対象手続というのをきちっと決めまして、いつまでにどうするか、具体的な行動計画をつくります。
ITの活用を妨げている理由、うまく進まない理由がいろいろあります。例えば、せっかくオンラインにしたのに添付書類がオンラインではいけないとか、いろいろありますので、そういったところを全部整理いたしまして、三月末までにしっかりとした行動計画をつくって、本当の意味の電子政府をつくり上げてまいります。それを今度の改革の大きな内容にいたしております。
○川崎国務大臣
今御質問いただきましたIT化について、私は、まず標準化という問題と、やはり進めるには期限を区切ってやる必要があると考えます。そういう意味では、昨年の暮れに医療改革大綱の中で、平成23年当初から、もうオンラインでしか請求を認めないというところまで決めていただきました。したがって、これを5年間の中でどう実行させるかという段階に今年から移ってまいります。
変換コードはもう既に診療機関にはかなり入っていますから、変換コードを用いることによって標準化する、診療機関に診療報酬等でインセンティブを与える、それから、情報セキュリティーがしっかりするということ、この三つをしっかりやって、平成23年から基本的にはすべてのレセプトがオンラインで請求という形に変えたいと思っております。
○茂木委員
ITの力を行政改革、そして構造改革に生かしていくことは極めて重要であると考えております。松田大臣、また関係大臣の一層の御尽力をお願いを申し上げます。
時間の関係で、最後にもう一つ、IT産業の国際競争力の問題について触れさせていただきたいと思います。
最近、インターネットの急速な普及、それからITベンチャーの発展、こういったことがもてはやされているわけですが、一たびパソコンの中を見てみると深刻です。CPUすなわち中央演算処理装置、これはインテルとAMD、そしてまた基本ソフトはマイクロソフトのひとり勝ちという状況です。今後日本のIT産業の国際競争力をどうつけていくかということが非常に重要な、深刻な課題だと思っています。
こちらの図(図4)を見ていただくと縦軸に利益率、そして横軸の方に売上高に対する研究開発投資がとってあります。マイクロソフトとかインテル、オラクル、サップといった欧米の水平分業のモジュラー型産業群は収益も高いし、そして研究開発、新しいイノベーションにもどんどん投資をしています。一方日本のベンダー、情報通信産業は収益が低いわけです。しかも垂直統合ですからいろいろな分野に事業が広がってしまっている、また十分な投資が新しい分野に向けられないという問題点を持っています。
ただ、私は悲観するだけではない、時代は変わっていくと思っています。
90年代から始まったIT革命の第一幕はパソコンとインターネットが中心で、欧米の水平分業型のモジュラー産業群が主役でありました。これを追いかけるのではなくて、これから始まるIT革命の第二幕、これは携帯電話はじめ多様な端末が超高速のネットワークでつながれる、こういう時代になってきます。そうなると日本の技術は凄いのです。情報家電、モバイル端末、光通信、モバイルシステム、これからの時代に向けた日本の技術というのは素晴らしいものがあります。
図4 主要IT企業の営業利益率と研究開発投資
問題は、これを単体の技術、単体の製品にとどめるのではなくて、産官学が連携してこれを一つのシステム、ネットワークとして、ソリューションとして組み立てていく。このことを早急にやっていく必要があると思っております。
私は1980年にアメリカに留学をしました。1980年という年は、日本の自動車の生産台数がアメリカを追い抜いた年です。アメリカにとっては、アメリカの文明でもある自動車で日本に負けたと非常にショッキングで、どうにかしてアメリカの産業競争力を回復しようということから、当時ヒューレット・パッカードの会長でありましたジョン・ヤングを中心にしてヤング委員会というのを立ち上げます。そして、産官学がまさに一体になって、コアコンピタンス・集中と選択、官から民への技術移転、そしてベンチャーの振興ということをやって、それが現在のアメリカ経済、アメリカ産業の復権につながっているわけです。
私は、今、IT革命が二幕にまさに入ろうとしているこの時期に、日本においても、日本版の産業競争力会議というものをつくって、産官学が一体になった取り組みを早急に進めることが極めて重要だと思っております。松田大臣に所見をうかがえればと思います。
○松田国務大臣
茂木委員のおっしゃることはもっともでございます。先生の御提案も含め力いっぱい進めてまいりたいと思います。 ちょうど科学技術基本計画の答申もいただきました。第三期の科学技術基本計画の中でも、ITは重点推進四分野の一つであります。おっしゃった趣旨に沿って本当に日本のIT産業を世界に冠たるものに是非していきたいものです。御協力をよろしくお願いいたします。