2009年4月14日
戦略プログラムの策定
今回の経済対策のベースとなったのが、自民党「日本経済再生戦略会議」の戦略プログラムで、私も戦略会議の幹事長として、取りまとめにあたってきました。以下、その概要を紹介します。
今回の対策は短期の景気対策に止まらない中期的な戦略プログラム(3年間)で、まず今後日本が目指す3つの将来像(1)低炭素革命に対応した「グリーン経済社会システム」の構築、(2)地域のポテンシャルを高める「21世紀型インフラとシステム」の整備、(3)健康長寿と子育てを支える「質の高い生活コミュニティ」の形成を明示しています。対策の規模は40兆円(うち本年度補正予算で15.4兆円)、3年間で200万人の雇用創出を目指します。
雇用対策と中小企業対策
緊急対策としては雇用対策、中小企業をはじめとする資金繰り対策、予算の前倒し執行の3つが柱になります。
緊急の雇用対策、なかでも「雇用調整助成金」は今年2月だけで187万人の雇用を下支えするなど相当な効果上げています。今回はこれを6000億円拡充し、ワークシェアリングなど雇用維持に努める企業への休業手当ての助成などを行ないます。
また、中小企業の資金繰り対策(予算3兆円、事業規模42兆円)では、昨年10月からの緊急保証の承諾実績が9.4兆円、約45万件に上っており、今回はこの保証枠を20兆円から30兆円に拡大、セーフティネット貸付の融資枠も10兆円から15.4兆円に拡げることとしました。同じく30兆円の保証枠を設けた10年前の特別保証は7800社の倒産を回避し、7万7000人の雇用維持効果がありました。バージョンアップした今回の金融対策ではこれ以上の効果が期待されます。
「新3種の神器」の普及促進
高度経済成長期には3種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)、3C(カー、クーラー、カラーテレビ)などと言われていましたが、低炭素革命が進む現在は、太陽光パネル、エコカー、省エネ家電がまさに「新3種の神器」になってきています。今回の対策では、これらの大幅な普及促進を図っていきます。
まず太陽光発電では、全国3.2万校の公立小中高校への太陽光パネルの設置をはじめとしたエコ改修を進めます。同時に学校の耐震化、デジタルテレビ、パソコン・校内LAN等のIT環境の整備を3年間で集中的に行う「スクール・ニューディール」構想を実施に移します。
また、エコカーの分野では、ハイブリッドカー等の環境対応車を新車で購入した場合、今年4月から導入した減税(平均10万円)に加え、1台10万円を助成します。そして、13年を超えて使用している古い自動車をスクラップし、一定の燃費基準を満たす新車に買い替えた場合、1台25万円を助成します。
グリーン家電(省エネ型エアコン、冷蔵庫、テレビ)についても、購入価格の5%相当分のエコポイント(他の製品を購入できるポイント)を付与し、地デジ対応テレビについてはさらに5%上乗せします。つまり10万円のエアコンなら5000円、地デジ対応TVなら1万円分の買い物ポイントがつくことになるわけです。
医療・介護・地方の支援
農業の分野でも水田フル活用や耕作放棄地の解消などに向け、1兆円という大規模な対策を打ちます。また、最先端の技術開発とその事業化に7900億円の資金を投じます。さらに、主要都市間の幹線道路の早期開通や、今後3年間でデジタル・ディバイド(地上波テレビのデジタル化、ブロードバンド・ゼロ地域・携帯電話の不感地帯)の全面解消を目指します。
一方、健康長寿の分野では地域医療の再生に向け「2次医療圏(人口約30万人のエリア)」単位で医師不足の解消や病院の施設整備、ネットワーク化などを進めます。また、介護分野でも入所待機者解消に向けて介護拠点整備を加速(16万人分)するとともに、3年間で30万人の介護人材の確保を目指します。
さらに今回の経済対策を国と地方自治体が一体となって進める上で地方の負担を出来るだけ軽減するように地方への臨時交付金(2.4兆円)を創設、特に財政状況の厳しい地方に重点的に配分していきます。この臨時交付金はすでに各地方から大変な反響を頂いており、地方での事業推進を大きく後押しすると思います。
今回の戦略プログラム、経済対策の着実な実施で、一日も早い景気の回復を図り、さらに「日本の自信回復」と「政治の信頼回復」につなげていきたいと思います。
以下、「日本経済再生への戦略プログラム」の本文及び関連資料(別紙1、2)を掲載します。
自由民主党政務調査会
日本経済再生戦略会議
日本経済再生への戦略プログラム
―今、未来への投資、新たな成長ステージへ―
1.はじめに
2.「戦略プログラム」の目的
3.新たな成長ステージに立つ日本の姿:「再び世界をリードする質の高い経済社会」
4.緊急対策(雇用・中小企業・金融・前倒し執行)
現下の極めて厳しい経済状況に鑑み、下記の対策を緊急に実施することにより、雇用や資金金繰りの問題を早急に解決する。
① 緊急雇用対策(本年度補正予算額1.9兆円)
② 緊急中小企業・金融対策(本年度補正予算額3.0兆円、事業規模41.8兆円)
<中小企業の資金繰り支援>
<大企業・中堅企業の危機対応と成長力強化>
<住宅・土地金融の円滑化>
③ 平成21年度当初予算について過去最大級の前倒し執行(80%を目標。入札制度の改善を含む)。
5.戦略プログラムを牽引する「主要10施策と達成目標」
新たな成長ステージに立つ日本の将来像を実現するため、下記の10施策を優先的な主要施策として実施する(具体的な内容及び雇用確保・創出効果を含めた目標値は別紙1のとおり)。
(1) 世界をリードするグリーン経済社会システムの構築(本年度補正予算額1.5兆円)
① 太陽光発電(本年度補正予算額6100億円)
② 環境対応車(電気自動車等)・グリーン家電の普及促進(本年度補正予算額8700億円)
③ 公共交通機関及び交通・物流インフラの革新(本年度補正予算額
300億円)
(2) 21世紀型のインフラ整備・システム開発(本年度補正予算額2.3兆円)
④ 最先端の技術開発とその事業化(本年度補正予算額7900億円)
⑤ 食料自給率の向上・自然環境の保全(本年度補正予算額1兆100億円)
⑥ 「国土ミッシングリンク」の結合等による地域経済活性化の新たな基盤作り(本年度補正予算額4300億円)
⑦ デジタル・ディバイドを全地域で全面解消(本年度補正予算額1000億円)
(3) 健康長寿と子育てを支える質の高い生活コミュニティの形成(本年度補正予算額2.0兆円)
⑧ 地域医療の再生と最先端医療技術の革新(本年度補正予算額8200億円)
⑨ 介護拠点整備と介護分野の雇用創出(本年度補正予算額8400億円)
⑩ 安心こども・子育て対策(本年度補正予算額3700億円)
6.戦略プログラムを加速する制度改革
(1)地方負担の軽減(本年度補正予算額2.4兆円)
(2)基金方式の創設・拡充(本年度補正予算額2.6兆円・再掲)
「地域医療再生基金」「世界最先端の研究資金」など、基金方式の活用による複数年度事業の実施。
(3)税制(0.1兆円)
住宅取得のための贈与税の軽減、中小企業の交際費課税の軽減、研究開発税制の拡充。
7.戦略プログラム12分野別施策メニュー
主要10施策の推進と同時に今後のフロンティア分野で「世界一」を目指す、地域を中心とした「現場力」の再生、21世紀型インフラ整備でアジアの中核拠点を形成するという観点から、戦略プログラム12分野で今後3年間に包括的かつ集中的な対策を進め、雇用の創出、安心安全の実現と民間主導の経済活性化、地域活性化の基盤づくりを行う(12分野で直ちに事業化するプロジェクトと主な先行実施・検討中のプロジェクトは別紙2のとおり)。
<フロンティア分野で「世界一」を目指す>
(1)低炭素革命への取組
(2)資源戦略・リサイクルの推進
(3)最先端の医療技術の取組
(4)ソフトパワー(コンテンツ、観光等)の発信
<地域を中心とした「現場力」の再生>
(5)医療・介護・保育・少子化分野
(6)教育分野
(7)農林水産業分野
(8)中小企業対策
(9)安全安心・防災対策
<21世紀型インフラ整備でアジアの中核拠点に>
(10)国際競争力インフラの整備
(11)人材力強化・研究開発の推進
(12)IT分野・電子政府の加速化
8.“夢に日付を”