2005年4月14日
社会保険庁を解体し新しいシステムを創る会
年金制度をはじめ社会保険制度に対する国民の信頼を回復するためには、その重要な一翼を担う社会保険庁の業務の抜本的な見直しと組織の刷新、さらに職員の意識改革が不可欠である。
こうした観点から「社会保険庁を解体し新しいシステムを創る会」では、100名を超える わが党衆参国会議員を集め、これまで真剣な議論を重ねてきた。
社会保険庁に対する国民の信頼が失墜し、年金の未納率が大幅に増加している中で、あるべき新組織については「国民の信頼回復」を図ることが最も重要であり、さらに組織改革が「職員の意識改革と内部統制の抜本的強化」「透明性と効率性確保」につながるものでなければならない。
上記の目的を達成する解は従来の延長線上の社会保険庁の組織、業務の部分的見直しにはない。現在の社会保険庁を解体し、新たな組織、運営体制を確立することが不可欠である。
(1)年金と政管健保の分離
社会保険庁が担う公的年金制度と政管健保の業務は、それぞれに政策目的、制度の特質やサービスの特性が異なっている。公的年金と政管健保をそれぞれに適した「別組織」が担うことにより組織としての目標がより明確となり、業務の大幅な効率化が期待される。年金とは別組織となる政管健保については、国とは切り離された公法人において運営することが適切であり、その具体的な中味と組織のあり方、運営方法については今後の医療保険制度改革の中で別途検討することが適当である。
(2)新たな独立行政法人の設立と職員の身分
年金業務については、公的年金制度を運営する新たな機関として独立行政法人「年金機構(仮称)」を設立し、関連業務をこの新法人に移管する。
新法人の職員の身分は業務運営の合理化、効率化と職員の意識改革の視点から「非公務員型」とすることが望ましい。ただし、当初は「公務員型」でスタートし、定期的見直しの中で適切なタイミングに「非公務員型」に移行するというアプローチも考え得る。
新法人への人の移管については、意欲と能力のある者に限定して、新法人で再雇用する形を取ることとする。なお、強制徴収等公権力の行使に関する法制上の整備を合わせて実施する必要がある。
(3)地方組織の再編
地方組織については、47都道府県ごとに設置されている社会保険事務局は全て廃止し、ブロック単位で管理する新たな「支社」を置く。312の社会保険事務所については、人口・面積・業務量等を勘案し、最適な配分を検討、再配置を行う。
地方の人員配置についても、ゼロベースで本来あるべき配置を決め、その上で「県間移動も含め、機動的、弾力的な配置と移動」を行うこととする。
(4)業務の改善と外部委託
社会保険庁の業務では徴収業務、運用業務、給付業務それぞれにつき、民間レベルからすれば業務改善、効率化の余地が大きく残されている。まず全ての業務について新法人で直接行う「コア業務」と外部委託、民間開放が可能な「非コア業務」との切り分けを客観的な第3者機関で一定期間(半年程度)かけて行うことが必要である。この際、全国の社会保険事務所の現場業務については、出来る限り外部委託が可能となるよう仕分けを行い、例えば1つの社会保険事務所の業務を丸ごと外部委託し、他の事務所と比較・競争が出来る等の工夫を組み込むことが望ましい。
現状の未納率が40%に達する保険料徴収業務については、組織的な徴収専門官の創設や民間資源(インターネットバンキング等)の活用により、国民が納付しやすいチャネルを拡充する。なお、2002年3月まで国民年金保険料の徴収業務を請け負っていた市町村に再び委託することが可能か否かについては別途検討することとする。
(5)システム改革
社会保険庁の既存のシステムについては、現在のデータ通信役務契約を2年以内に解約、残債を処理し、その後7年間で利用停止とする。その間、5年以内に新たなシステム「次期社会保険事務システム(仮称)」を構築する。
同時に、新法人に「CIO(情報化統括責任者)とCIO補佐官」を配置し、システムの調達はCIO補佐官の助言に基づき、CIOの責務において実施する。
次期社会保険事務システムの開発は、システムに格納されているデータの標準化、整理を行った上でシステム開発を開始するいわゆるデータ中心アプローチを志向し、インターネット技術を活用してシステム開発を行う。また、個人情報保護やセキュリティ対策のために、システム利用の履歴を保管し常時監視する。同時に、システム内の情報を他の媒体で持ち出すことが出来ない端末を導入する。
監査については、半年ごとに「システム監査」と「セキュリティ監査」を実施し、その結果を国民に開示することとする。
(6)成果主義と組織のスリム化、業務の効率化
以上の組織、業務の抜本的改革によって目に見える形で大幅な人員削減を行い、「削減目標と実際の成果」について業務改善の監査結果とあわせ、毎年国会への報告を義務付ける。
組織に成果主義を徹底し、現場の社会保険事務所については「保険料の収納率の向上」と「国民サービスの向上」を主要な指標に事務所単位で目標の設定、成果の評価を実施する。
職員の処遇についても、職員が意欲と目的意識を持って収納率の向上、国民サービスの向上に取り組むことが出来るよう、成果主義を導入し、人事・処遇面で民間企業と同等のインセンティブを与える。
政府・与党においては、上記の提言を踏まえ、社会保険庁の改革方針の速やかな決定とその実施を図ることを強く求める。