2003年2月9日
平成15年2月12日
外務副大臣 茂木敏充
1. 概要
(1) 2月2日から9日にかけ、欧州に出張し、イラク問題を中心に安保理主要国(英・仏・独)と意見交換・調整を行い、また、対イラク査察の責任者であるエルバラダイIAEA事務局長及びブリックスUNMOVIC委員長と会談を行いました。
各国における主な会談の相手は、仏はグルド・モンターニュ大統領顧問及びコラン・ド・ヴェルディエール外務次官、英は、オブライエン外務政務次官(イラク担当)、ラメル外務政務次官(アジア担当)及びイングラム国防閣外大臣、また独はシャリオット外務次官でした。
この他に仏でバラデュール下院外務委員長(元首相)、フランソワ・ポンセ上院議員(元外相)他政界関係者と懇談し、英では主要なシンクタンクである王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)及び国際戦略問題研究所(IISS)関係者と意見交換しました。
(2) それぞれの会談で当方は以下の我が国の基本的考え方を説明しました。
(3) これに対し各国政府関係者は、一様に我が国の基本的立場を共有する旨述べた上で、仏は現在は査察を継続することが重要であると強調しつつ、今後の一連の動きを注視して国際社会の一員として責任を果たす用意があると述べていました。英よりは英米首脳会談(1月31日)、英仏首脳会談(2月4日)を行う等首脳レベルでも各国との協調に努力している旨説明がありました。また独も査察継続の必要性を述べつつ、武力行使に反対という独の立場は一部で言われている単なる平和主義ではない、脅威の事実が明確にされれば、アフガン、コソヴォのようにこれまでも国際社会の平和とテロとの戦いに大きな役割を果たしてきていると述べました。
(4) また、第2の安保理決議の採択について、英は採択を強く選好しており追求していく、ブレア首相とブッシュ大統領の会談(1月31日)でもこの点で合意したとの説明がありました。一方仏独は査察の継続の重要性を強調しつつ、特に安保理常任理事国である仏は第2の安保理決議について、今後の状況の推移を踏まえて検討されるべきとの考えを 述べていました。我が方からは、日本としては外交努力を通じた平和的解決を強く望んでいるが、仮に軍事行動が不可避となれば第2の安保理決議が採択されることが望ましいとの立場を説明しました。
(5) また、イラク訪問を直前に控えたエルバラダイ事務局長(2日)及びブリックス委員長(7日)両氏との会談が実現しましたところ、両名とも手続き面はともかく、より根本的問題である実質面でイラク側から積極的な協力がないとの強い認識が示され、8、9日のイラク訪問を通じ、イラクが根本的に態度を改め積極的協力が引き出されることを期待していました。ブリックス委員長よりは積極的協力とは単独インタビューの実施やU2機の飛行が認められるだけでは十分ではなく、要はVXガス、マスタードガス、炭疽菌はじめ大量破壊兵器が残っているのであればこれを廃棄のために差し出し、既に廃棄したと言うならば廃棄の証拠を提示することが重要であると述べていました。更にブリックス委員長はイラク側の協力が不十分な場合には14日の報告にそれを反映せざるを得ないと述べていました。
写真左 エルバラダイIAEA事務局長との会談 |
写真右 ブリックスUNMOVIC委員長との会談 |
(6) 2月5日にパウエル米国務長官による安保理報告が行われ、先週末のブリックス、エルバラダイ両氏のイラク訪問を踏まえ14日に安保理への査察報告が予定され、一方米英をはじめとする軍隊の集積が進んでいる中で、イラク問題を巡っては国際社会が重要な局面に差し掛かっており、各会談相手と今後とも緊密に連絡をとり協力をしていくこととなりました。
(7) イラク問題に関する一連の会談を終え、我が国からの初めての政治レベル参加者としてミュンヘン安全保障会議に出席しました。同会議は主要国の安全保障関係者が出席する安全保障分野のダボス会議と称せられ、本年もラムズフェルド米国防長官、フィッシャー独外相、イワノフ露国防相はじめ主要国の外交・防衛当局者が出席していました。当方よりは「国際テロリズムのグローバルな挑戦」のセッションの冒頭で国際テロリズムを中心としつつ、現下の最も喫緊の課題であるイラク、北朝鮮の問題にも言及し、国際協調のあり方について我が国の考え方を述べました。主催者であるテルチック議長(ヘルベルト・クヴァント財団理事長)より、日本の政治レベルの参加を歓迎し、来年以降も引き続いての参加要請がありました。
写真 ミュンヘン安全保障会議にてスピーチ |
2. 成果
(1) 各国政府及び査察の長に、副大臣レベルより、我が国のイラク問題への対応における基本的考え方を説明することにより、国際的協調の下で外交努力を推進し、本問題の平和的解決に努めるとの我が国の強い姿勢を改めて示すことができたと考えます。問題解決への今後の連携についても各国との間で確認できました。
(2) 各国において直接イラク問題への対応に関わっている政府高官と会い、率直な意見交換を行うことができました。意見交換を通じていずれの国も本問題への対応にあたり、イラクの大量破壊兵器保有への懸念が強く、我が国同様、国際協調の下で本問題を解決しなくてはならないとの強い決意を有していることが看取されました。
(3) またイラク政府の要請を受け同国を訪問することになった査察の両責任者と直接会い、査察の状況や見通しにつき、詳細な説明を受けることができました。特にブリックス委員長については出発直前のタイミングでの会談となりましたところ、改めて査察が大量破壊兵器の廃棄という目的を果たすためには、イラク側による積極的協力の具体的実施が不可欠の前提条件であることが強く認識されました。
(4) 今後、我が国としてはイラク情勢を巡る一連の動きを踏まえ、状況の推移を注視しつつ本問題への対応を検討していくことになりますが、かかる検討を行う上で今回の一連の会談はきわめて時宜を得たものとなったと考えます。
3. 日程
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