2017年2月1日
平成29年2月1日
2月1日の衆議院予算委員会で代表質問に立ちました。
質疑の全体の内容は以下の通りです。
【茂木委員】
おはようございます。自由民主党・無所属の会の茂木敏充です。
いよいよ本日から平成二十九年度予算の審議がスタートしたわけであります。きょうは、この平成二十九年度予算について、また、昨年秋の臨時国会で質問させていただいたフォローアップとして、経済構造改革、働き方改革についても質問させていただきます。
まず、総理が積極的に展開をされております外交についてです。日米関係、日ロ関係、二点について質問させていただきます。
一月の二十日、第四十五代アメリカ大統領としてトランプ大統領が就任をいたしましたが、就任演説の中で、アメリカ第一主義、アメリカ・ファーストを強調し、オバマ政権とは全く異なる政策、これを進めることが予想されます。また、トランプ大統領は、理念より実利、そして、国際協調や多国間の枠組みよりも二国間、バイの駆け引き、取引を重視する政治手法を志向していると言われております。米国新政権の政策については、国際社会全体が注目をいたしております。
このような中、我が国を取り巻きます安全保障環境は、北朝鮮の核、ミサイルの開発、さらに中国の台頭など、厳しさを増しているのは間違いありません。日本外交の基軸であります日米同盟、これを強化していくことが喫緊の課題であります。
私も、一月の中旬、アメリカを訪問いたしまして、向こうの上院議員、そしてトランプ新政権に近いシンクタンクの関係者等々と会談をしてまいりましたが、日米同盟の重要性、これにつきましては米側も認識を共有している、このように感じたところであります。
一方、トランプ大統領本人は、NATOを初め同盟国にも相応の負担を求める、こういった発言もしています。
そこで、質問であります。総理は、昨年十一月、世界の指導者に先駆けて当時のトランプ次期大統領と非公式の会談を行い、日米同盟の重要性を確認されました。また、先週末の電話会談で、今月の十日に日米首脳会談を行うことで合意をされました。主要国の中ではかなり早いタイミングでの首脳会談になる、このように考えております。
そこで、今後、トランプ新政権との間でどのように日米同盟、日米関係、これを拡大そして深化させていくのか、総理のお考えを伺います。
【安倍内閣総理大臣】
日米同盟関係というのは、日本の外交、安全保障上の基軸でございます。なぜ基軸かといえば、安保条約において、第五条、日本が外国からの侵害を受けた際に共同対処をするということになっております。
アジア太平洋地域の安全保障環境は厳しさを増しています。委員が例として挙げられたように、北朝鮮はこの数年間で、弾道ミサイル、技術的、能力的に相当向上させているのは事実でございます。そして、それに搭載するための核実験も行い、弾頭化が進められているという認識があるわけであります。彼らがもし日本に対してその能力を振り向けてきたときに、もちろんミサイル防衛もございますが、彼らに対して、日本に対するそうした攻撃に対しては米国が必ず報復する、これが抑止力になるわけであります。アメリカの報復を恐れ、結果として、日本に対するミサイル、弾道ミサイルの発射をちゅうちょする、あるいは行わないということになるわけでございます。
そこで、大切なことは、日米の同盟関係は信頼関係に裏づけされている、日本が攻撃をされれば必ずアメリカも共同対処するし、アメリカが報復する、これを内外に示していくことは日本の抑止力、平和と安定にもつながっていくわけであります。
トランプ大統領との間においては、この同盟関係が確固たるものである、確固たる信頼関係の上に成り立っているということを内外に示すものにしていきたい、このように思います。
また、もちろん、経済関係におきましても、日米で、これはウイン・ウインの経済関係を今までも構築しておりますが、さらに新政権との間に、経済においても両国がお互いに協力をしていく、関係を深めていくことによって両国とも大きく裨益をしていくということを示していくものにしていきたい。
この二十一世紀に、日米がともに手を携えて、地域の平和と安定を確保し、そしてさまざまな課題にもともに取り組んでいく同盟としていきたい、
このように思っています。
【茂木委員】
首脳会談におきましては、日米同盟、このきずながしっかりしている、このことを世界
に向けて発信していただきたいと思っております。
そして、今総理が触れられた貿易政策の関係でありますが、トランプ大統領は、TPPから離脱をする大統領令に署名をし、NAFTA、北米自由貿易協定の再交渉も表明をいたしました。米国に雇用と産業を取り戻す、米国にとってより有利な貿易政策を追求する、こういった姿勢を示しております。また、中国、日本、メキシコ、この国の間で貿易不均衡が存在する点、この点を指摘し、日本の自動車市場、これも批判する発言も行って
いるところであります。どうも、国際経済を、かなり前の、輸出入だけの狭い世界で捉えているような気もするわけであります。
では、このような状況を踏まえ、世界第一位のGDPのアメリカ、そして第三位の日本、世界経済をリードすべき日本とアメリカが、TPPの取り扱いを含め、どのような経済関係を構築していくのか。まだ首脳会談前で不透明な部分も多いと思いますが、総理の基本的なお考えを伺います。
【安倍内閣総理大臣】
確かに、今委員が御紹介されたような、日米の貿易関係等々についてトランプ大統領側が見解を示されているということは私もよく承知をしております。
その中で、確かに、貿易面だけの結果、輸出と輸入の差額等の認識だけでいいのかどうかということでありますが、決してそんなことではなくて、お互いが経済関係を密にしていくことから大きな利益を上げている、両国が裨益しているということを認識し合うことがまず大切であろう。そして、両国が、貿易だけではなくて、経済はさまざまな側面がありますから、その側面の中でどのような経済関係を構築していくべきかということをしっ
かりと腰を据えて、いわばがっぷり四つで話し合っていきたい、こう考えているところでございます。
例えば自動車についても、日本の自動車関連企業は、米国において、これは、直接の雇用にさらに関連の雇用も含めますと、自動車だけで百五十万人の雇用もつくっているわけでございますし、日本の投資によって直接生まれている雇用だけで八十五万人あるわけでございます。
そうしたこと等も含めまして、これから、いかに日本は米国に雇用を生み出し、そして米国の産業界の全体の、米国に進出している日本企業も含めた米国産業界全体の生産性の向上あるいは競争力の強化に貢献をしていくんだ、あるいは雇用にどういう貢献をしていくのか、大統領が示しているインフラの整備に日本はどういう形で協力をしていくことができるかどうか等々も含めまして、大きな枠組みの中においてしっかりと話をしていきたい、このように思っております。
また、TPPにつきましても、我々は、アジア太平洋地域に自由で公正な経済圏をつくるということに大きな価値を見出しているわけであります。
これは、大きな価値があるという認識においては今も変わりがないわけでありますし、国会で批准をいただいたからこそ、日本の確固たる意思として米国あるいは世界に示していくことができる、このように考えております。
【茂木委員】
確かに、総理御指摘のように、自動車をとりましても、一九八〇年代と比べますと今の状況は全く変わっております。八〇年代の半ばぐらいは、日本から三百四十万台輸出をして、日本の自動車メーカーは現地では六十万台の生産でありました。それが現在は、現地で三百九十万台の生産体制をつくり、そして、総理おっしゃるように、ディーラーであったり間接雇用も含めれば百五十万人雇用している。これは明らかに米国経済に対する大きな貢献でありまして、まずは、こういったことをしっかり理解してもらうということが必要だと思っております。
同時に、御指摘のように、日米がこれから協力をしていく分野、AIであったりロボット、こういった新技術もあると思います。エネルギーの分野もあります。そして、アメリカは今、東海岸で高速鉄道を計画しておりますが、これには日本の技術が必要であります。こういったインフラ投資の分野、狭い貿易ではなくて、日米がより幅広い枠組みで協力をしていく、こういったことが重要なんだと思っております。米側も総理の早期訪問は期待をしております。
ぜひ、しっかりした会談で、日米同盟、日米関係が強固である、こういったことを世界に向けても示していただきたい、このように考えております。
外交でもう一点、日ロの関係についてお伺いをいたします。
昨年の十二月、プーチン大統領が訪問いたしまして、安倍総理と実に十六回目となります首脳会談が行われたわけであります。昨年秋の予算委員会でも質問させていただきましたが、ロシアとの関係の改善、これは単に日ロの二国間の関係にとどまらず、緊張する東アジア情勢において、この関係改善というのが極めて地域全体にとっても戦略的な重要性を持っているんだと考えております。
戦後七十年間全く動いてこなかった、解決できなかった大変難しい課題でありますが、首脳間の対話を進めて、平和条約締結に向けて着実に前進していくことが極めて重要だと考えております。
そして、その十二月の首脳会談では、四島において共同経済活動を行うための特別な制度について交渉を開始する、そして、元島民の方々によります四島の訪問手続の改善を迅速に検討することを合意されたわけであります。
総理は、首脳会談後の共同記者会見において、今回の合意を出発点に、自他共栄の新たな日ロ関係をともに築いていこう、このようにプーチン大統領に呼びかけられたわけであります。安倍総理がプーチン大統領との間で信頼関係を築き、そして、新しいアプローチのもと重要な一歩を踏み出したことは大きな意味を持っている、このように考えております。
総理はことしの前半にもロシアを改めて訪問する、このことを検討していると聞いております。
そこで、新たな制度のもとで、共同経済活動に関する昨年の合意をいかに具体化し、領土問題を含む平和条約締結問題の解決につなげていくのか、総理のお考えを伺います。
【安倍内閣総理大臣】
昨年の十二月にプーチン大統領と首脳会談を行い、二人だけで長時間の会談を行いました。そこで、平和条約問題を解決する、両首脳の真摯な決意を声明に書き込むことができたと思います。そして、プーチン大統領自身も記者会見で、最も重要なのは平和条約の締結であると明確に述べました。その意味におきましては大きな成果があったと認識しております。
今委員が御指摘をいただきました、北方四島における特別な制度のもとでの共同経済活動については、四島において初めて日本人とロシア人が経済活動を行うことになるわけであります。そうした活動を通じて、お互いを理解し合い、そして地元住民の日本への信頼を深めていくという点で、平和条約の締結に向けて大きなプラスになると考えております。そのためにも、お互いの立場を損なわない新しい仕組みをつくるべく交渉を進めていく考えであります。
もちろんこれは困難な挑戦ではありますが、私とプーチン大統領との間で、平和条約の締結に至るプロセスの一環としてこの交渉を行うことでも合意をしています。
また、首脳会談では、平均八十一歳と高齢になられる、もう時間がないと語る北方四島の元島民の方々の切実な思いを胸に、人道的な観点から、北方四島の墓地訪問に関する現行の枠組みによる手続を改善することで一致をいたしました。
元島民の皆さんと話をしたら、何とか今生きているうちに故郷で朝を迎えたいという話をしておられました。今の枠組みでは、それはなかなかできないということでございますが、何とかその実現に向けて全力を傾けていきたいと思いますし、この機運に弾みをつけるため、本年の早い時期にロシアを訪問したいと考えております。
七十年以上動かなかったこの領土問題を解決することはそう簡単なことではないとは思いますが、ぜひ、我々の世代でこの問題に決着をつけ、終止符を打ちたい、このように思っております。
【茂木委員】
ぜひ、ことし日ロ関係が新しい朝を迎える、こういう年になるように、総理の活動を期待するところであります。
それでは、平成二十九年度予算案について質問させていただきます。
今回は、我々が政権に復帰をして五回目となる本予算案の編成であります。平成二十九年度予算案は、過去最大となります九十七兆五千億円の予算規模で、さまざまな政策を盛り込んで、めり張りのきいた、そしてメッセージ性のある予算になっていると思います。
平成二十九年度予算案の大きな特徴、ポイントを挙げるとすれば、図の一に示したように、三点になると思っております。
まず第一に、安倍政権が一貫して進めてきた経済再生と財政健全化の両立をさらに推し進めていることであります。政権交代前と比較して、税収は十兆円以上増加、公債発行額も十兆円以上減少いたしております。
二つ目に、政策の柱として、一億総活躍社会の実現に向けた施策を充実し、保育所の受け皿拡大、保育士、介護職員の処遇改善や給付型奨学金の創設などを行うことといたしております。また、人工知能、ロボット、そして自動走行など、今後の成長分野に予算を重点配分いたしております。
さらに三番目に、社会保障の持続可能性を高めるため、経済・財政再生計画の二年目の予算として、予算全体の三分の一を占めます社会保障費の伸びを五千億円に抑制する、こういうことにいたしました。そして、この目的達成のために、医療・介護制度改革を実行することといたしました。
図の二をごらんください。平成二十九年度予算案においては、政権交代前と比較して、税収は十四兆円増加、そして国債発行額は十三兆円減少など、経済の再生と財政健全化が大幅に進んでいることが図からも明らかだと思います。
ただし、平成二十八年度の予算では、税収が当初予算より一・七兆円下回ると見込まれることから、補正が行われたわけであります。昨年は、新興国の経済の陰り、そして英国のEU離脱問題など、世界経済の下振れリスクが大きく、また、昨年の前半でいいますと、為替が大きく円高に振れたことから、輸出企業や海外展開企業の収益が目減りした、こういう側面も大きかったと思います。
足元ではこの下振れリスクは緩和されていると見られますけれども、世界経済で不測の事態が起こる危険性はゼロではありません。もちろん、まず、不測の事態が予想されたら、昨年の景気対策のように、経済対策のように、速やかな対応、まさに機動的な財政政策をとることが必要であります。
しかし、より根本的な課題として、国際経済の変動にできるだけ影響を受けにくい経済体質にしていくことが重要であります。日本の輸出依存度、現在は大体一四%でありまして、これはヨーロッパ諸国、中国等とも比較して低い水準であります。
これをさらに、為替等によります影響を受けにくい内需の拡大、国内での新しいマーケットの拡大、さらには新技術分野への投資などによりまして進めていくことが必要だと思っております。
この点につきましては、この後、経済構造改革のテーマで質問をさせていただきたいと思います。
そこで、一億総活躍社会の実現に向けた施策についてお伺いをしたいと思います。
女性の就業者、これが増加を続けている中で、子育てや介護をしながら仕事が続けられる環境を整備することが特に重要でありまして、保育、介護の受け皿の整備が急務であります。
保育所等の定員は、政権交代前の平成二十四年の四月には二百三十六万人でありましたが、安倍政権では保育所の整備を加速し、ことしの四月には二百八十三万人、実に五十万人の増加となる見通しであります。また、介護施設、在宅サービスにつきましても、二〇二〇年代初頭には五十万人の受け皿を整備することとなっております。
同時に、保育であったりとか介護の分野、恒常的な人材不足の問題がありまして、人材の確保、育成が急務であります。
図の三をごらんください。安倍政権におきましては、図に示したように、保育士、介護職員の処遇改善を着実に続けてきました。平成二十九年度予算においても、保育士についてプラス二%の改善を行います。これにより、安倍政権になって、合計でプラス一〇%、月額にして三万二千円の処遇改善を行うことになるわけであります。
そこで、まず総理に、一億総活躍社会の実現に向けたこれまでの取り組み、成果をどう受けとめていらっしゃるのか、また、今後の意気込みについてお聞かせください。
【安倍内閣総理大臣】
一億総活躍の未来を切り開くことができれば少子高齢化という課題も必ず克服できる、こう考えております。
その中で、それに立ちはだかるさまざまな壁があるわけでありまして、その壁を取り除いていかなければならない。
例えば、画一的な労働制度もそうなんだろうと思いますが、今御紹介いただいた保育の問題もそうです。また、介護の問題もそうであります。介護をしながら、あるいは子育てをしながら、仕事もできるという状況をつくらなければならない。
そうしたさまざまな壁を一つ一つ取り除いていく決意でございます。
具体的には、昨年六月に閣議決定したニッポン一億総活躍プランに基づき、希望出生率一・八や介護離職ゼロ、そしてGDP六百兆円に向けた施策を展開してまいります。
今回の予算案では、今もう既に御紹介をいただきましたが、我々が政権に復帰する前は、例えば介護士や保育士の皆さんの待遇はマイナス一・二%、下がっていたわけであります。そうであれば、なかなか、保育士の道を目指そうという人たちにとって、この意欲が鈍ってしまうわけでありますし、士気も低下をしていくということになります。
そこで、保育、介護の受け皿整備とともに、保育、介護人材の処遇改善として、保育士等については、おおむね経験三年以上で月額五千円、七年以上で月額四万円の加算を行うとともに、全ての保育士等を対象に二%、介護人材については、技能や経験に応じて昇給する仕組みを構築し、月額一万円相当の改善等を盛り込んでいます。こうした取り組みにより、保育士等の改善は政権交代後は合計で一〇%、そして、介護人材の処遇は、自公政権のもと、合計で月額四万七千円の改善が実現することになるわけであります。
また、保育の受け皿は、安倍政権の三年間で、今もう既に御紹介をいただいておりますが、三十一・四万人分もの整備を進めており、これは年平均で約十一万人増、年平均四万人増だった民主党政権時の二・五倍を超えるペースで今整備を進めているわけであります。
これに加えまして、今回の予算案では、幼児教育の無償化の範囲のさらなる拡充、給付型奨学金制度の創設、無利子奨学金の希望者全員に対する貸与の実現等を盛り込み、誰にでもチャンスのある教育環境の整備を進めていく考えでございます。
最大のチャレンジである働き方改革につきましても、同一労働同一賃金の実現、また、いわゆる三六協定でも超えることのできない、罰則つきの時間外労働の限度を定める法改正等に向けて、三月に実行計画を決定し、改革を加速させていく考えであります。
【茂木委員】
図の三の一番右側をごらんいただければと思います。平成二十九年度予算案におきましては、保育士について、全職員を対象とした処遇改善だけではなくて、今総理の御答弁の方にもありましたように、一定のキャリアを積んだ職員に対しては、追加で最大月額四万円の処遇改善を行う予定であります。
この四万円というのは極めて重要な意味を持つんです。これが、まさにこの四万円というのが、保育士と、女性の普通の産業の労働者の賃金差に相当する額でありますから、ようやくこれで、キャリアを積んだ人についてはほかの産業と一緒のところまで来るという形でありまして、今後も、保育士全体の賃金のボトムアップと同時に、キャリアに応じてそれが給与にしっかりと反映をされる、こういった制度設計が必要だと思っております。
同時に、保育の分野で頑張っている人たち、本当に意欲を持って頑張っているわけでありますから、そういった人たちが活躍の場を広げて、そしてキャリアアップできるような、キャリアアップへの支援策、こういったことも一層充実をしていただきたいと思っております。さて、予算の三番目として、社会保障の持続可能性を高める取り組みについてお聞きをいたします。
私も党の政調会長として年末の予算編成に取り組みまして、社会保障費の伸び、自然増でいきますと六千四百億、これを五千億に抑えるという経済・財政再生計画の目安を二年連続で達成することができたわけであります。
振り返ってみますと、日本の皆保険そして皆年金、いずれも、昭和三十年代、総理のおじい様の岸総理のときに法制化をされたものであります。
そのころの日本は、働き手が多くて、また、お年寄りの割合は今よりずっと少なかったわけであります。しかし、今は長寿社会が進んでおります。そして、社会保障費は大幅に増大をいたしております。社会保障制度、これを持続可能なものとして将来世代に引き渡していく、これは我々の世代の責任であります。
日本近代化の父と呼ばれます渋沢栄一の言葉に、およそ人は自主独立すべきものである、すなわち自営自活の精神は、実に同胞相愛の至情とともに、人生の根本をなすものである、こういった言葉があります。この言葉からは、社会保障制度改革を進めるに当たり重視すべき二つの基本的な考え方、これが導き出されるのではないかなと思っております。
その一つは、小さなリスクは自助、大きなリスクは共助、公助という考え方であります。渋沢翁の言葉にあるとおり、小さなリスクにはできるだけ自営自活の精神に基づいて自助で対応していく、そして、こうした自助の努力が、共助、公助、すなわち同胞相愛を持続可能なものにするんだと考えております。
そして、二つ目は、年齢ではなく負担能力に応じた負担という考え方であります。最近は、元気で収入のある高齢者も多く、現役並みの収入がある人がいる一方で、現役でも収入も低い人がいるわけであります。そこで、誰もが自主独立の精神に基づき、負担能力に応じて公平に負担してもらうようにすることが大切だと考えております。
そこで、塩崎厚生労働大臣にお伺いをいたします。
私が今お話をしました二つの基本的な考え方、来年度の予算にどのように反映をされているのか。
高額療養費の見直しであったり、介護納付金の総報酬割の導入、こういった施策、基本的な考え方との対比で、来年度の主要な制度改革の内容を、わかりやすく、そしてできるだけ簡潔にお願いいたします。
【塩崎国務大臣】
ありがとうございます。社会保障の問題につきまして今お話を頂戴いた
しましたが、社会全体が高齢化をしていく、そして社会保障費が増大をする、そういう中で、御指摘のような考え方を含めて、世代間そして世代内の負担の公平を図る、制度を持続可能なものに同時にしていかなければならない、そして次世代にその制度を引き渡していく、こういうことが大事だということでございます。
国民の自助を推進する観点からの取り組みといたしましては、本年一月から、健康維持増進や疾病の予防に取り組む方が医療用から市販薬に転用された医薬品を購入した場合に所得控除が適用されますセルフメディケーション税制というのがスタートを既にしているわけでございます。
また、負担能力に応じた負担という観点からは、平成二十九年度予算におきまして、医療や介護の制度改革を実施することとしております。今御指摘があったとおりでありまして、例えば、七十歳以上の高額療養費制度につきましては、所得の低い方や長期に療養される方に対してはきめ細やかな配慮をする。同時に、現役並み所得区分の方につきましては、六十九歳以下と同様の負担上限額とする。そしてまた、一般区分の方々につきましては、外来特例と世帯単位の負担上限額を引き上げるといった見直しを段階的に行うことに
しておるところでございます。また、現役世代に負担をしていただいている介護納付金につきまして、医療保険者の加入者数に応じた負担から、被用者保険者の間では各医療保険者の総報酬に応じた負担への段階的な移行ということを始めさせていただこうと思っております。
こうした制度改革を着実に実施するとともに、今後とも、自助、共助、公助、このバランスの視点から公的保険給付の内容などにつきまして必要な見直しを行って、社会保障制度を持続可能なものにしてしっかりと次世代に引き渡していきたい、このように考えております。
【茂木委員】
私は、昨年秋の予算委員会で、日本経済の再生に関連いたしまして、地域中核企業の支援、そしてもう一つ、第四次産業革命の推進など、経済構造改革の必要性を提案いたしまして、政府からも前向きな御答弁をいただきました。
そのうち、自民党では、経済構造改革に関する特命委員会を設置いたしまして、現場をよく知っている専門家からヒアリングを行うなど集中的な検討を進め、昨年十二月に中間報告を取りまとめました。総理にも御報告をいたしました。
図の四をごらんください。我が党の経済構造改革に関する特命委員会の中間報告においては、経済的なインパクトが大きく、先行的な実施が望まれる最重点施策として二点、一つは、大企業とともに、もう一つのエンジンとして、これから日本経済を引っ張っていく地域中核企業の重点的支援策の導入、そして二つ目に、第四次産業革命を人々の暮らしを豊かにするために実際に活用していく、実装していく、特に自動走行システムの世界最速の社会実装と新技術、システムによる医療・介護革命の実現、この二点を提案させていただきました。
そこで、まず、地域中核企業の支援について取り上げたいと思います。臨時国会で申し上げましたとおり、中核企業は全国に大体二万五千社、今存在をしております。
そして、図の五にお示しをしましたように、これらの中核企業、資本金でいいますと一億円から十億円の企業でありますが、売上高や設備投資で見ても、地域経済の牽引力がむしろ大企業よりも高いと見込まれております。
実際、リーマン・ショック以降七年間で、一企業当たりの売上高は、図にありますように二五・四%伸びておりまして、その隣の大企業の〇・八%と比較しても、伸びが大きいことがわかります。
また、一企業当たりの設備投資額も、赤いカッコで囲んでございますが、一〇〇%近く伸びておりまして、大企業は五〇%の伸び、二倍の伸びということになるわけであります。
昨年秋の予算委員会でも、こうした地域中核企業の支援策として、予算、税制、金融、あらゆる施策を総動員していく、このために新たな法律を早急に制定すべきと提案をさせていただきました。
また、さまざまな施策、各省庁にまたがっております。これを、地域経済の好循環実現、こういった観点から一つにしっかりとまとめて、積極的に活用することが極めて重要だと考えております。そこで、質問でありますが、こういった自民党の提案も踏まえて、政府としては、来年度の予算や税制改正においてどのような対応をとっているのか、また、既に提案をいたしております地域未来投資促進法につきまして、法案提出に向けた準備状況はどうなっているのか。世耕大臣、お願いいたします。
【世耕国務大臣】
お答えいたします。茂木委員からは、昨年の臨時国会でかなり踏み込んだ質疑をいただきました。また、年末には、党の政調会長として、あるいは特命委員会の委員長として、かなり具体的な御提案をおまとめいただきました。そういったことを踏まえて、経済産業省としても、各省と連携をしながら検討を進めてきたところであります。
その結果、今国会に、地域未来投資促進法案という法案を提出させていただきます。この法案は、まさに、今茂木委員御指摘のように、国として予算、税制、金融などあらゆる政策を集中させる仕組みになっております。具体的には、今御指摘の地域中核企業が中心になって地域経済を引っ張っていく、そういう事業を地域経済牽引事業として認定いたしまして、そういう事業に対して、国があらゆる政策を総動員して応援をさせていただきます。
具体的には、まず予算面では、内閣府の山本大臣のところと連携をいたしまして、地方創生推進交付金、これを活用して、こういった地域中核企業を中心とする地域経済牽引事業に支援をさせていただきます。あるいは、リスクマネーの供給、これは中小企業基盤機構とかREVICを活用して、リスクマネーの供給というのも進めていきます。あるいは、規制の特例、例えば、農地の転用許可ですとか市街化調整区域の開発許可に関して特段の扱いをするというようなこと。あるいは、ビッグデータの活用に関しても、公共機関が持っているビッグデータをこういった事業に対して使っていただけるような用意をする。そして、最後に税制としては、やはり機械装置、建物といったものの投資に関して特別償却を認めたり税額控除を行う。こういうことをしっかりとやっていきたいというふうに思います。
茂木委員から御提案いただいた地域中核企業を中心として地方経済を活性化するという施策に、国としても全力を挙げて取り組んでまいりたいというふうに思っています。
【茂木委員】
今、世耕大臣の方からお話のありました地方創生推進交付金、これがこの事業に使えるようになった。山本大臣の御協力もありまして、やはり全省でこの問題に取り組むんだ、こういう姿勢が示せたのではないかなと思っております。地域中核企業、全体でいいますと二万五千社ぐらいありますが、まずはこのうち二千社ぐらい、恐らく一市町村で数社になってくると思いますけれども、そういったところを抽出して重点的に支援をしていく。今後三年間ぐらいで、この二千社の設備投資が一兆円伸びますと、GDPは五兆円増大をする。こういった取り組みをしっかりと進めていきたい、このように思っているところであります。
次に、第四次産業革命の推進についてであります。
現代社会におけます技術の進歩、目まぐるしいものがあります。人工知能ワトソンが人間の医師が見つけることのできなかった難病患者の病名を探し当て、また、囲碁や将棋の世界ではAIが世界のトップクラスのプレーヤーを打ち破る、こういったことが起こっております。こうして日々、新しい技術やサービスが生まれ、アプリケーションの範囲も広がっていく、こういった現実があるわけでありまして、こういった進歩をスピード感を持って人々の生活へ取り込んでいく、社会実装していく、このことが極めて重要だと考えております。
党の提言では、ロボット、AI、自動走行の社会実装によりまして、医療・介護革命や、地域における高齢者、なかなか今、遠くのスーパーに行くのが非常に困難だ、こういう状況があるわけでありまして、事故等も心配をされるわけでありまして、こういった高齢者の方々にとって安心な生活の足の確保を図り、経済活動や人々の暮らしを向上させる、こういったことを党の提言では打ち出しております。
もちろん、この分野、民間部門、これが主体になるのは当然でありますが、政府の側のコミットメント、積極的な取り組み姿勢というのも極めて重要だと考えております。
そこで、平成二十九年度の予算案では、これらのロボット、AI、そして自動関連の予算、どこまで対応しているのか、お聞かせいただければと思います。
【石原国務大臣】
茂木委員が委員長として取りまとめられた中で、第四次産業革命を人々の暮らしを豊かにするために活用する、まさにそのとおりだと思います。
今回の二十九年度予算案の中では、ロボット、AI、自動走行関連予算、もちろん省庁をまたがりますけれども、三百八十九億円を計上させていただいております。
委員御指摘の三つをちょっと具体的に御説明させていただきますと、質の高い医療の実現を含む幅広い出口に向けたAIの応用研究で七十一億円、ICT活用による建設現場の生産性向上、いわゆるi―Constructionでございますけれども、このほか、自動走行システムの世界最速の社会実装と御指摘をいただいております、トラック業界が景気がよくなって人手不足になってきておりますので、ドライバー不足解消のための隊列走行等に向けた自動走行システムの研究開発、二十六億円などなどでございます。
委員が御指摘いただいておりますように、新しい付加価値を生み出すイノベーションというもの、それを社会実装して初めて国民の皆さん方が、ああ、日本の技術はこんなにすばらしいんだということを実感していただけますので、やはり予算対応、委員は民間が主体であると。私はもう一つ、やはり構造改革、前に御指摘されておりましたけれども、これとあわせて行っていくことが必要だと思っております。
委員に取りまとめいただきましたこれらの中間答申でございますけれども、政府の方の未来投資会議とも連携をさせていただきまして、年央には成長戦略の中でしっかりと書き込ませていただきたい、こんなふうに考えております。
【茂木委員】
ありがとうございます。それでは、この図をごらんください。実はこれは、AI、人工知能によりますレンブラントの新作の肖像画であります。マイクロソフト社とオランダのデルフト工科大学などがチームを組んで、レンブラントの特徴となる絵画、この色遣いや構
図などをAIに徹底的に学習させまして、最後は、レンブラントの絵の具の厚みの特徴を出すために3Dプリンター、これも使って、レンブラントの新作、昨年完成をさせたわけであります。
このように、AIに代表される第四次産業革命はここまで急速に進んでおりまして、我が国としても、これまで以上のスピードで取り組んでいくことが必要であります。まずはやってみることだと思います。AIや第四次産業革命を一つ一つ具体的な成果につなげていくために、政府としてもしっかりと取り組み、予算面、税制の面、規制緩和を進めていただきたいと考えております。
それでは、働き方改革、こちらに移らせていただきます。
総理が施政方針演説で最大のチャレンジとされた働き方改革であります。昨年の九月の予算委員会でも、働き方改革の主要政策課題として、図七にお示しをしましたように、五つの課題、一つは、非正規雇用の処遇の改善、二つ目に、長時間労働の是正、三つ目に、より柔軟な働き方への環境整備、四つ目は、希望する分野への就労に向けた人材の育成、最後に、育児、介護の人材不足解消、この五点を挙げ、総理にも質問させていただきま
した。昨年来、自民党でも、働き方改革に関する特命委員会を立ち上げまして、集中的な検討を進めておりますが、きょうは、特にこの中で二点について、政府の検討状況の確認をしたいと思っております。
まず、長時間労働の是正の問題であります。一昨年のクリスマスになりますが、電通に入社して一年目の女性社員が過労自殺するという大変痛ましい事態が発生をいたしました。このようなことは二度と起こらないようにしなくてはいけない、このように考えております。働く人たちの健康を守るためにも、また、子育てなど多様なライフスタイルと仕事を両立させるためにも、長時間労働の慣行を断ち切ることが必要であります。このことが、経営側にもより効率的な仕事のやり方を求めることにつながっていくんだろうと思っております。
そこで、民進党など野党四党は、長時間労働を規制する法案を国会に提出し、国会審議を求めているわけであります。
しかし、野党の法案、この内容をよく見てみますと、時間外労働の上限について、厚生労働省で定める時間を超えない範囲内としているだけで、具体的に誰が何時間の上限をかけるか、全く決めていません。これでは実効性がなく、全く意味がない、このように考えております。
自民党は、野党の提案している、省令、省庁に丸投げではなくて、労働基準法そのものを改正して、月何時間までと明確に時間外労働の上限を法律上定めるべき、しかも罰則つきのものとすべきだと考えております。
総理のお考えを伺いたいと思います。
【安倍内閣総理大臣】
ただいま茂木委員長が御指摘をされたように、一年余り前に、入社一年目の女性が、過酷な長時間労働によって、その状況の中でみずから命を絶つという大変悲惨な出来事がございました。しかし、この長時間労働によって、過酷な状況の中でみずから命を絶つ、それは彼女だけではないのは事実でございます。こうしたことにしっかりと終止符を打たなければならないという決意を持って、我々は、時間外労働の長時間労働が何時間かということを決めて、しっかりとこうしたことを防止していくという決意を持って取り組んでいきたいと思います。
まさに今議論になっているのは、何時間まで許されるのかという時間外労働について、何時間がこれはもう許されない長時間労働であるかということが、今まさに議論の焦点になっているわけですね。
であるならば、それをちゃんと法案に入れ込むことによって、当然議論ができるわけであります。その時間を出さずに、厚生労働省令に丸投げしてしまっているのであれば、つまり、この何時間だということを示さないまま法案が出ているのであれば、それは議論ができないということになってしまう。我々政府としては、それは、そのまま出すことは、そういう形で出すことは無責任である、我々はこう考えております。
そしてまた野党は、月百時間という数字のみに着目をし、脳・心臓疾患の労災認定基準、野党が言う過労死基準をクリアしていないのではないかと批判をしておりますが、誰に対して何時間の上限とするかを決めるに当たっては、最低限、この労災認定基準をクリアするといった健康の確保を図ることは当然のことであります。
その上で、女性や高齢者が活躍しやすい社会とする観点や、ワーク・ライフ・バランスを改善する観点など、さまざまな視点から議論する必要があります。
政府としては、実現会議で取りまとめる三月の実行計画に沿って、法改正に向けた作業を加速し、いわゆる三六協定でも超えることができない、罰則つきの時間外労働の限度について、どのような方に何時間の時間外労働の上限を設けるのかを明記した法案を提出する考えでございます。
【茂木委員】
ぜひ、省庁任せにするのではなくて、政治のリーダーシップで、具体的な上限の時間を
示していただきたい、このように思っております。もう一つ、希望する分野への就労に向けた人材育成の問題があります。
雇用情勢は大きく改善いたしておりますが、雇用のミスマッチは依然続いておりまして、人材の成長分野への移動も進んでおりません。その背景には、民間企業におけます教育訓練費の低下傾向もあるとは思います。希望する分野への就労に向けた人材の育成の強化、これが働き方改革の中でも極めて重要だと考えております。
昨年末の自民党の中間報告でも、アベノミクスの成果により雇用情勢が改善をした結果としての果実、具体的には労働特会の余剰金を活用して人材投資を抜本的に強化、集中支援を行う未来への人材投資プラン、図の八にその概要をお示しいたしましたが、この未来への人材投資プランを提言いたしております。来年度の予算編成の過程で、厚生労働省のこのテーマ、しっかり私は対応していただいたと考えております。
そこで、自民党の提案が来年度予算にどのように盛り込まれて、今後どのような取り組みをしていくのか、改めてお伺いをいたします。
【塩崎国務大臣】
自民党の未来への人材投資プランにおきまして、具体的な財源並びに対象となるべき分野における人材投資の具体的な提案をいただいております。
働き方改革を進めるに当たりまして、人口減少に伴う労働力の供給の制約あるいは人材不足、これを克服するためには、働き手一人一人の能力の開発、これを通じた生産性の向上というのが実に大事だ、こういう御提案をいただいているわけであります。
このため、政府としても、働き方改革実現会議での議論、そしてまた、今の自民党の未来への人材投資プランも踏まえて、人材投資関連の施策につきまして、平成二十九年度の、来年度の予算におきましては千七百三十億円、これは前年度に比べますと四百四十億円多い予算を予定させていただいております。
具体的には、先進企業の好事例を活用したオーダーメード型の訓練、一人一人に合わせたものですね、中小企業への新たな人材育成支援、そして、個人のキャリアアップや子育て女性のリカレント教育を支援するための専門実践教育訓練給付の給付率を六割から七割に引き上げる、そして、女性対象講座の拡充を行うということも予定しております。高レベルなIT資格など、資格を取るのに一年から二年かかるというものがありますが、この長期の離職者の訓練の新設そしてまた拡充も予定しております。また、託児所がついた職業訓練を含めて、子育て女性の再就職に向けた受講料無料の職業訓練の充実、さらには、成長企業が転職者を受け入れて行う能力開発や資金アップに対する助成の拡充、こういったことを予定しておるところでございます。
三月に取りまとめられます働き方改革実行計画、これにもしっかりと入れ込んで、取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
【茂木委員】
とてもいいプログラム、魅力のあるプログラムが盛り込まれていると思います。ぜひ、これからまた職場に復帰したい、いろいろな考えを持っていらっしゃる女性や、非正規の方も含めて、この周知を図っていただきたいと思っております。
そして、こういった取り組み、なかなか一年だけでは十分な成果を上げることができないわけであります。我々は、三年間で総額八千億円規模の対策を集中的に取り組むべき、このように提案をさせていただいております。予算措置でありますので、原則としては単年度ごとの取り組みとなる、このことは理解をいたしておりますが、最近の雇用情勢の改善によりまして、雇用保険の積立金、これは今、六兆円になっているわけでありまして、政府、その資金を十分活用して、数年度にわたって集中的な取り組みを進めていただきたい、このように考えているところであります。
最後に、現在政府で検討されている、テロ等準備罪を新設する法案についてお伺いをいたします。
二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を三年後に控え、テロ対策は最重要課題であります。既に百八十七の国と地域が締結をしております国際組織犯罪防止条約によって、テロを含む組織犯罪を未然に防止するとともに、テロ対策の国際協力、これが可能となってまいります。
ところが、日本はこの条約を締結できておらず、このための国内担保法の早期整備が必要不可欠であります。
かつて政府が提案をした共謀罪につきましては、一般の民間団体や労働組合等が処罰の対象になるのではないか、また、心の持ち方や思想を理由に処罰をされてしまうのではないか、こういった懸念が指摘をされていました。こういった懸念を払拭するためにも、今回のテロ等準備罪では、一般の人は対象とならない、このことを明確にするとともに、処罰を本来の目的に限定する必要があると思っております。
そこで、処罰の対象となる組織や犯罪の要件について、また、対象犯罪の総数も、これまでの法案では六百を超えるなどと言われてきたわけでありますが、今回のテロ等準備罪ではどの程度まで絞り込まれる見通しなのか。
金田大臣お答えください。
【金田国務大臣】
御質問にお答えをいたします。国際組織犯罪防止条約、いわゆるTOC条約でございますが、この国内担保法のあり方につきましては現在検討中でございます。国民の皆様に、国際組織犯罪防止条約、いわゆるTOC条約を締結しまして、国際社会と協力をしてテロを初めとする組織犯罪と闘うことの必要性そして重要性を御理解いただくとともに、かつての法案に対する国民の皆様の不安とか懸念といったものが解消できるように、法案の内容について詰めの検討を進めてまいりたい、このように考えているわけであります。
かつて政府が国会に提出をいたしました組織的な犯罪の共謀罪というものに対しましては、過去の国会審議等において、通常の活動を伴う団体も対象となるのではないか、あるいは、内心が処罰されることとなるのではないかといった不安や懸念が示されておったわけであります。
そこで、私どもは、テロ等準備罪に関しましては、基本的な考え方といたしまして、適用対象となる一定の犯罪を犯すことを目的として結合しております組織的犯罪集団を条文の中で定義して限定する、そして、合意に加えて実行準備行為があって初めて処罰の対象とする、こういったことを検討しているところであります。
そのような限定によりまして、さきに申し上げた不安や懸念が取り除かれて、一般の方々が処罰の対象となることはあり得ないことはより明確になるものと考えておるわけであります。
また、御指摘にございました対象犯罪の数につきましても、条約を所管いたします外務省と協議をしながら、政府部内で慎重に検討をしているところであります。
いずれにしましても、国民の皆様に、国際組織犯罪防止条約を締結し、国際社会と協力をしてテロを初めとします組織犯罪と闘うことの重要性、必要性を御理解いただきますとともに、かつての法案に対します国民の皆様の不安や懸念というものを解消することができるように、法案の内容について詰めの検討を進めてまいりたい、このように考えておる次第であります。
【茂木委員】
対象犯罪、しっかり絞り込みをしていただきたいと思っております。
それから準備行為、いろいろな準備行為があると思うんですけれども、そこの中で、どの部分は対象になるのか、どれは除外をされるのか、このことも明確にお示しをいただきたいと思っております。
このテロ等準備罪につきましては、この後同僚の梨議員から具体的に質問させていただきたいと思いますが、我が党としては、三年後の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、国際条約との整合性を踏まえつつ、国民の理解が得られる法案の内容としなければならないと考えております。政府の側でも、しっかりとした対応、明確でわかりやすい答弁をお願いいたします。
平成二十九年度の予算案、いよいよ今日から審議がスタートをしたわけであります。一日も早い予算の成立、これが最大の景気対策になってくる。
安倍政権では、一つ一つ具体的な成果を出す、これに努めてまいりました。まさに、この平成二十九年度の予算を一日も早く成立させ、景気回復の実感、これを全国津々浦々、地域の隅々まで届けていきたいと考えております。最後に、政府においては、きょうのような、国民にわかりやすい、しっかりとした説明をお願いして、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございます。