イラク訪問

2021年8月22日

2003年にイラク戦争終結直前と直後に外務副大臣として訪れて以来、18年ぶりのイラク訪問です。セキュリティ対策のため事前公表しない電撃訪問で、防弾車に乗り、ヘルメットと防弾チョッキを装着しての移動です。

前回は、フセイン大統領による支配を終え、イラクがまさに新たな時代を迎えようとしているタイミングでの訪問で、世界の政府関係者でも、戦後初のバグダッド入りでした。当時は空港が使えなかったため、鉄の塊のような防弾車で6台のコンボイを組み、ヨルダンのアンマンから陸路で約1000キロ、10時間かけて一気に走破したのをよく覚えています。イラク戦争以降、日本は、発電所の改修、港湾、上下水道、石油施設等のインフラ整備を中心に、イラクの経済・社会の復興を支えるため、160億ドル以上の支援を行ってきました。凶弾に倒れた奥大使、井上書記官らと、イラク復興のために奔走した日々を思い出しました。

イラクに降り立つ前の機内の窓からは、チグリス川が見えました。古代メソポタミア文明はチグリス・ユーフラテスという二つの川の恵みによって発展しました。メソポタミアとは「川の間の地」を意味するギリシャ語が語源です。世界最古とも言われるメソポタミア文明では、楔形文字やハンムラビ法典、60進法など、現代文明の基礎となる数々の発明が生まれました。ところで、ハンムラビ法典の「目には目を、歯には歯を」という言葉が有名ですが、実は、これは、目をやられたら目をやり返す、好き勝手に報復していいという意味ではありません。目をやられたのに目以上のことはやってはいけない、その罰は同程度のものでなければならないという、抑制的処罰、比例性の原則を定めたものです。

バグダッドは、預言者ムハンマドが7世紀にイスラム教を創唱した後の8世紀から13世紀までの間、イスラム帝国アッバース朝の首都として繁栄しました。アッバース朝は、西は北アフリカ、東は中央アジアまでを版図に組み入れた巨大な帝国です。その最盛期、バグダッドはまさに世界の政治、経済、文化の中心で、「アラビアン・ナイト」の主な舞台にもなっています。イラク人は当時の栄華を誇らしく語ります。

イラク料理には羊の肉や鶏肉を多く使いますが、鯉の一種の焼魚マスグーフも名物料理です。ただ、個人的にはチグリス川の鯉はディープフライにして、そこにレモン醤油少々というのが最高だと思います。

さて、話が飛びましたが、イラク戦争直後の前回の訪問に続き、今回の訪問も、イラクが国家一丸となって改革に取り組む重要な時期での訪問でした。今年10月には新制度の下での議会選挙が控えており、日本として、この選挙を成功に導くために必要な支援を行っていきます。サーレハ大統領やカーズィミー首相からも、日本への信頼と二国間関係の一層の発展に向けた強い信念を感じました。バグダッドは50度近い暑さですが、この日差しに負けないくらいの強い想いで、二国間関係を強化していきたいと思います。

0泊で、このあとイランに向かいます。

自民党幹事長 衆議院議員茂木としみつ

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