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尖閣諸島での中国漁船衝突事件について

今回の尖閣諸島での中国漁船衝突事件の、中国人船長の逮捕から拘留期限前の突然の釈放に至るてん末は、まさに民主党政権の迷走であり稚拙な外交の結果です。 戦後の日本外交史に大きな汚点を残すことになりました。
今回、中国の対応がレアアースの輸出禁止や日本人4人の拘束など、露骨なまでに強硬なのは確かですが、菅政権として最初に船長逮捕に踏み切った時点、さらに粛々と捜査を進めるとして拘留を延長した時点で、中国側の出方や最終的な着地点を描けていたとはとても思えません。 確たる見通しがないままに方針を発表し、問題が発生すると方針がぶれるという民主党政権の体質が典型的に現れた事案です。
問題の性質は違いますが、鳩山前総理の普天間移設や、菅総理の消費税発言も起承転結は今回の事件と全く同じです。 尖閣諸島がわが国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いのないところです。
歴史的経緯について簡単に説明すれば、尖閣諸島はどの国の支配も及んでないことを明治政府が慎重に確認した上で、明治28年1月に正式にわが国に編入しました。これは、日清戦争後の下関条約発効よりも前であり、下関条約で割譲された台湾及び澎湖諸島に、尖閣諸島は含まれていません。また、サンフランシスコ平和条約において日本が放棄した領土にも尖閣諸島は含まれず、沖縄・南西諸島の一部としてアメリカの施政下におかれました。
沖縄返還後は、当然わが国の施政下に戻り、日米安全保障条約の適用範囲です。 中国が領有権について独自の主張をし始めたのは、石油資源が埋蔵されている可能性が指摘された1970年以降で、それ以前は日本による領有に異議を唱えたことはありませんでした。 これらの歴史的事実を内外に明確にし、中国側の不当な主張を退けなければなりません。
さらに、衝突時のビデオ公開などわが国の正当性を国内はじめ諸外国に情報発信し、東シナ海での警戒・監視の強化等を通じ、領土の保全と日本漁民の安全操業の確保を早急に進める必要があります。
しかし、民主党政権は、全く正反対の稚拙な対応をとりました。「法令に基づき粛々と対応する」との方針が、中国側の圧力を受けた途端、突然に船長釈放という方針転換の腰砕け状態。国際社会に「日本は圧力をかければ譲歩する」という誤ったメッセージを発信してしまいました。
今回の惨めな結末に至った背景には、現政権の領土問題・資源外交の重要性に対する認識の甘さ、政権交代以来の日米同盟の軋み、さらに民主党政権に戦略を描いたり、中国への根回しを行える人材が全くいないと言ったいくつかの決定的な問題点があったと思います。
現在、民主党は、まさに責任を持って「政治主導」で解決すべき外交問題を、検察に責任を押し付けて逃げています。「政治主導」が聞いてあきれます。さらに那覇地検が外交上の配慮を理由として本当に釈放を独自で判断していたとすれば、捜査機関である検察当局の権限を超えたものであり、法治国家の根底を揺るがす異常な事態です。
民主党が沈むのは構いませんが、日本を沈ませるわけにはいきません。 今の民主党政権に何が決定的に欠けているのか。例えば、国の根幹にかかわる安全保障や領土、主権に対する認識不足、様々な利害が絡む問題でのプロセスマネジメントの問題、中長期のビジョンを描き、それを実際に動かす力。単に批判だけではなく自民党ならこうする、という主張も含め今後の国会で徹底的に議論していきたいと思います。