11月28日(月)から12月3日(土)にかけ、衆議院予算委員会の海外調査団のメンバーとして北アフリカのチュニジアとモロッコを訪問しました。両国はアフリカの中でもマグレブ諸国(アラビア語で太陽が沈む地域という意味)と呼ばれ、中東の西側、アフリカ大陸の北端に位置し、イスラム教徒が多く、公用語もアラビア語です。今回の2カ国訪問で私が歴訪した世界各国の数もちょうど50カ国となりました。訪問及び視察の概要は以下の通りです。
○チュニジア(11月29日、30日)
チュニジアは、アフリカの最北辺に位置し地中海に面しています。アフリカの国といっても首都チュニスの緯度は金沢、水戸とほぼ同じで、日本と変わらないくらいに肌寒い気候でした。チュニス近郊には、紀元前にフェニキア人の商業都市として栄え、象を連れてピレネー、アルプス山脈を越えてローマと戦った名将ハンニバルで有名なカルタゴの遺跡などがあります。
現在、日本はフランスに次いで2位の援助国(2003年実績85.5百万ドル)であるなど、日本とチュニジアとは協力・友好関係にあり、来年が外交関係樹立50周年の節目の年となります。
チュニジアでは、首都チュニスでガンヌーシ首相をはじめとする政府要人と会談するとともに、日本の援助の現場を視察しました。なお、ガンヌーシ首相等との会談は、当地の新聞で写真入で報道されました。
11月29日(火)
1.モハメッド・ガンヌーシ首相との会談
ガンヌーシ首相は、財政大臣等の要職を歴任し、1999年に首相に就任しました。会談はチュニスの中心部にある首相府で行われました。
議員団から、良好な二国間関係が継続していることを嬉しく思うとともに、今後とも両国関係の強化が重要と考えている、との認識を述べました。また、先日チュニスで開催された世界情報社会サミット(WSIS)の成功へのお祝いとわが国の国連安保理常任理事国入りへの支援についてのお礼を述べました。
首相からは、日本の経済援助への感謝の言葉とともに、チュニジアへ移転された技術を他のアフリカ諸国へ広げていく三角協力を推進したい、日本を発展のモデルとしたいとの発言がありました。首相とは、今後とも協力関係・友好関係の維持・発展に努めることで一致しました。
(写真)カンヌーシ首相と会談
2.モハメッド・ヌーリ・ジュイニ開発・国際協力大臣との会談
次に、国際協力省でジュイニ開発・国際協力大臣と会談しました。ジュイニ大臣は、若干44歳ですが、すでに大統領府経済顧問などの要職を歴任しています。
議員団から、良好な二国間関係を嬉しく思う、日本の経済援助は転換点にあり、経済援助は被援助国の発展につながり、日本国民への説明責任が果たせものである必要がある旨述べました。
大臣からは、これまでの日本の経済協力への感謝の言葉とともに、経済協力の一層の強化と民間投資の促進の要請がありました。大臣とは、両国の関係が二国間関係のモデルとなるよう関係を更に発展させることで一致しました。
3.アブドッラフマーン・ブハリズィ代議院財政・計画・地方開発委員会委員長等との会談
チュニジア代議院において、ブハリズィ代議院財政・計画・地方開発委員会委員長ほか同委員会委員と会談しました。議員団から、政府間のみならず国民を代表する議員間の友好関係も重要であり、両国の友好議員連盟をはじめとして議員間の友好関係を深めていきたい旨述べました。同時に日本のODAの成果について政府関係者だけではなくチュニジア国民に広く理解してもらえるようチュニジア国会議員の尽力を要請しました。
ブハリズィ委員長等からは、経済援助のほかに民間投資の促進を通じた関係強化を図りたいとの発言がありました。委員長等とは、お互いに国民の代表として二国間関係の発展に努力することを確認しました。
会談後、2006年予算案審議中の代議院本会議を傍聴しました。
4.電気・電子技術者育成プロジェクトの視察
チュニジアは、自由貿易協定に基づくEU諸国との間の関税の撤廃を控え、国際競争力を強化するため、産業を担う人材の育成に力を入れています。わが国からは、チュニジアの電気・電子技術職業訓練センターに対し、JICAの長期専門家5名の派遣、訓練機材の供与等の技術協力を行い、技能者の育成や在職者の技能向上に取り組んでいます。長期専門家のリーダー等からプロジェクトの説明を受けた後、訓練用の機材や講義の現場を視察しました。
5.エルオムラン幼稚園施設改修・機材供与計画の視察
この事業は、チュニス市エルオムラン地区にある幼稚園の施設改修と滑り台、回転遊具、ジャングルジム、ブランコ等遊具の供与・更新を内容としています。わが国からは、この改修・機材供与のために、草の根・人間の安全保障無償資金協力として、NGOであるチュニジア女性連盟バルドー支部へ約100万円の資金が供与されました。議員団は、整備された施設と遊具を視察しましたが、多くのNGOのメンバーが出迎えてくれるとともに、幼稚園児が日本語の歌を披露し議員団のメンバーにバラの花を贈呈してくれるなど大歓迎されました。
(写真)幼稚園の子供達と
6.ラデス発電所の視察
ラデス発電所は、チュニス郊外にあるチュニジア最大の発電所(471MW)で、天然ガス焚き複合火力発電所です。わが国からは、JBICが国際金融業務として民間金融機関と協調して73百万ドルの融資を行うとともに、丸紅が30%の出資をしています。事業スタートからまだ3年とのことですが、しっかりしたオペレーションが行われているという印象を持ちました。
7.青年海外協力隊員等との懇談
チュニジアへ派遣されている青年海外協力隊員、JICAの専門家等と懇談し、現地での活動状況や生活について話を聞きました。現地では、米等の物資が調達しにくいなど生活環境が厳しいとのことで、お土産として持参した日本米が大変喜ばれました。
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11月30日(水)
ラデス・ラグレット橋建設計画の視察
ラデス・ラグレット橋建設計画は、チュニス市の南北をつなぐ環状道路のうち、フェリーによる通行のために交通の障害となっている区間に橋梁を建設して、交通渋滞の解消を図る計画です(2004年8月着工、2007年8月完成予定)。チュニス市内の朝夕ラッシュ時の交通渋滞は深刻で、ニーズの高い案件。JICAのフィージビリティ調査によって計画が策定され、JBICが8,403百万円の円借款を供与しています。橋梁の建設現場を視察し、主要橋梁を請け負っている日本企業の関係者から工事の説明を受けました。
○モロッコ(12月1日、2日)
モロッコは、アフリカの西北に位置し、ジブラルタル海峡を挟んで対岸にはスペインがあります。また、映画「カサブランカ」で有名なモロッコ最大の商業都市カサブランカやマラケシュ、フェズなどの世界文化遺産を擁しています。人口270万人のカサブランカは、映画のイメージ(実際はハリウッドでロケ!)とは違って、街は人と車でごった返しており、空港からホテルまでの約30?の距離を1時間近くかかりました。
衆議院議長をはじめとする政府要人との会談は、カサブランカから北東に100kmほど離れた首都ラバトで行われました。ラバトの王宮の近くは、官庁、大学、大使館等があり、カサブランカ市街に比べ閑静で整然としていました。
現在、日本はフランスに次いで2位の援助国(2003年実績 64.8百万ドル)であるなどモロッコとは協力・友好関係を維持しています。今回のモロッコ訪問は、おりしも国王モハメッド6世のモロッコの国王として初の日本御訪問(11月27日~11月30日)の時期と重なり、地元マスコミで宮中晩餐会の模様をはじめとして、日本御滞在中の国王を大きく取り上げて報道していました。我々議員団のモロッコ訪問に対しても、現地マスコミがテレビで政府要人との会談の模様を大きく報道するなど、モロッコ側の高い関心が伺えました。
12月1日(木)
1.アブデルワヘド・ラディ衆議院議長との会談
我々の訪問に対し現地パトカーの先導や全ての手配をしてくれた人物。かつて協力大臣を務め、1998年に衆議院議長に就任しています。
当議員団から、まず、モロッコ国王の御訪日を大変歓迎したことを述べるとともに、豊富な観光資源を有効活用すべきことやわが国の経済協力がモロッコ国民の理解を得るために努力してほしい旨述べました。
議長からは、わが国の経済援助への感謝の言葉とともに、日本を発展のモデルケースにしたい、今後は経済援助とともに民間投資の促進を期待している、といった発言がありました。議長とは、今後とも二国間の友好・協力関係の強化に努めることで一致しました。
(写真)ラディ議長と会談
2.ムスタファ・ハニヌ財政・経済開発委員会委員長等との会談
次に、日本の衆議院予算委員会に相当する財政・経済開発委員会のハニヌ委員長、ハリ副委員長ほか委員会メンバーと会談しました。
委員長等からは、経済援助は住民に大変感謝されている、モロッコで事業を展開している矢崎総業を例に日本からの投資を促進してほしい、との発言がありました。
3.ミムーン・メフディ調査・調整局長との会談
メフディ局長は、2002年まで5年間在中国大使を務めており訪日経験もあります。日本大使館によれば、今回の我々の訪問に対し、モロッコ政府の多くの省庁からぜひ会談したいとの要請があり、メフディ調査・調整局長は経済協力案件全体の調整責任者ということで会談を受けました。
局長からは、これまでの日本の経済協力に感謝するとともに、民間部門での関係は進展していないので、特に情報通信、観光等の分野での企業進出をお願いしたい旨の発言がありました。
4.モハメッド・マルガウィ運輸次官との会談
議員団から、経済協力の実施状況を把握するために、円借款による高速道路整備の状況を視察する予定である旨発言しました。
次官からは、運輸関係では、高速道路、鉄道、港湾関係での両国の協力関係は緊密であるとの発言がありました。
5.高速道路整備事業
モロッコは、欧州との市場統合、マグレブ諸国との関係強化等の観点から、道路網の整備に力を入れており、全長1,500kmに及ぶ高速道路整備のために、わが国からも円借款の供与が行われています。高速道路整備の状況視察をするとともに、カサブランカ高速道路公団事務所で、同公団関係者とJBICの担当者から、整備状況と今後の予定等について説明を受けました。
6.青年海外協力隊員等との懇談
モロッコで活動する青年海外協力隊員、JICA専門家等と大使公邸で懇談し、現地での活動状況や生活について話を聞き、意見交換をしました。青年海外協力隊員からは、現地での活動に生きがいを感じているが、月400ドル程度の生活費の支給では、やりくりが難しいといった苦労話が聞かれました。
でも、あくまで苦労話であって不平、不満ではありません。日本の若者は遠くアフリカの地でも情熱と使命感を持って本当によく頑張っています。日本の国内でももっとしっかり改革を進めなければ、月400ドルで日本の国際貢献の最前線に立っている彼らに申し訳ないと痛感しました。
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