アフガニスタン視察記

2002年8月6日

平成14年8月4日から6日までの、アフガニスタン視察のご報告です



8月4日(日)

08:25 アフガニスタン カブール着

 タイ航空、パキスタン航空(PIA、別名Perhaps I arrive-多分到着するだろう-と言われる航空会社)、国連機と乗り継ぎカブールへ。成田出発から26時間後。

 カブール(現地ではカーブルと発音)では、戦乱でホテル施設が崩壊状態。一流ホテルと言われるのはインターコンチネンタルだけだが、そこも水道が使えない、テロの危険があるということで、ゲストハウスに宿泊。(下の写真)

注)宿泊したゲストハウスNo.195
ゲストハウスと言っても、風呂・トイレ共同のいわゆる“民宿”で、初日はシャワーも雨水程度。二日目からシャワーが完全復活して感激!といった状態。

12:00 在カブール日本大使館にて打合せ兼昼食

 大使館は現在修復中(現場を視察したら大使館の裏庭で地雷の探査中!)で、保育所を改装した仮住まい。冷房施設のないこの仮大使館に5月までは大使以下寝泊りの合宿生活を送っていたとのこと。体調を崩し一時帰国中の駒野大使の代理を務める藤井次席、NGOから外務省に転籍し、現地語にも堪能で何でも屋の同じく藤井書記官、警察庁からの出向で主に警備を担当する蒲書記官(現地警備員の訓練のため毎朝4時半からトレーニング中)、会計担当の一番若い林書記官の4人で本当によくやっている。ただ、今後を考えると経協の専門家がいないとこの大使館は回っていかない。聞けば9月より専門家が着任とのこと。

15:00 ワルダック内相と会談

 アフガニスタン移行政権では、多民族国家のバランスを取ることが重要で、29名の閣僚も民族のバランスを重視している。ワルダック内相は州知事から入閣した最多民族パシュトゥーン人。自分の担当ということもあって議論は治安、警察再建に集中。この分野の支援ではドイツがリードしている。各国のアフガニスタン支援状況を見るとそれぞれ重点分野を持っている。アメリカは国軍の再建、イギリスは麻薬対策、フランスは文化遺産、イタリアは司法分野といった具合だ。

 日本がこれから重点的に取り組んでいくのは「Resister for Peace」と呼ばれる元兵士の動員解除と職業訓練を通じた地域社会への復帰プログラム。もう一つ、難民・避難民の再定住化支援事業。双方共に今後のアフガニスタンの復興に向けて重要なプロジェクトだが、なかなか難しい事業でもある。

これとは別に、目に見える事業としてREAP(簡単な道路修復などの緊急雇用創出事業)というプログラムがある。これは道路の瓦礫などを集めて道や側溝の修復などを行う簡単な工事で、日本とUNDPが共同で実施している。工事現場には右の写真のようなプレートが掲げてあり、一目で日本のやっている支援事業だということがわかる。失業者にとっても特別な職業能力がなくてもやれる仕事で、彼等にとって1日2ドルの収入というのは現地の生活水準からすれば大変大きい。

16:00 JICAプロジェクトの視察

 JICAプロジェクトとして修復した女学校と現在修復中の病院を視察。学校はJICAがすでに実施している6校の改修の内の1校だが、5月上旬に着手して2ヶ月で完成させたとのこと。ただまだ机がない。校長先生に聞くと、これからは教員の確保が課題との事。病院は1977年に日本の無償資金協力案件として建設された結核センターの改修事業。新築なら20億かかる建設が改修だと7,000万円で済むとの事。ただ、そうは言ってもJICAの事業は少しコスト高な気がする。一教室当たりの建設改修費は、JICAプロジェクトで150万に対し、民間NGOの事業では50万(ただし耐震構造などを考えると80万~100万が妥当な線かもしれない)。

 日本に帰ったら現場を案内してくれたJICAの地曳アフガン事務所長の記事が今日付けの読売新聞に載っていた。部長職を投げうってのカブール赴任、58歳。まだ着任したばかりだが、相当な意気込みでアフガニスタン復興に取り組んでいる。

18:30 高橋UNAMA首席政治顧問他と懇談

 高橋氏は外務省からUNAMA(国連アフガニスタン支援ミッション)に出向している。30年近くこの地域を担当している専門家。こういう日本人もいるんだなぁと感じた。国全体としての復興戦略の欠落やテクノクラートなど復興実施体制の不足を強調。「この国は金だけ出してもダメ」と。多分本当にアフガニスタンのことが好きだからなのだろう。中央アジアにおけるアフガニスタンの戦略的位置付け、国内の改革急進派と保守派の綱引き、バランスなどについて延々と議論。

 夕食は屋外で取った。昼間の暑さとは打って変わって、夕暮れ以降のカブールはとても涼しくて、風が日焼けした肌に心地いい。満点の星がとても綺麗だった。


8月5日(月)

09:00 ショマーリ平原帰還民登録所視察

 カブール市内から30分程度(ランドクルーザーをとばして)のパキスタン側からの帰還民を受け入れる国連運営の登録テント。

 道すがら見るのはほとんど日本車。9割以上がトヨタの車とのこと。車のボディーに「西濃運輸」「日野自動車教習所」などと日本語で書かれた車もある。支援物資の一環かと思ったら中古の輸入車で、日本語を消さない方が確かに日本から入ってきたということで高く売れるとのこと。

ショマーリ平原の登録所は、パキスタンの国境から300km程度だが、峠超えなどの悪路が続き、帰還民は一昼夜以上かけてこの登録所に辿り着く。砂漠の真ん中にテントが並び、外はとにかく暑い。多い日はここに1万人以上のアフガン帰還民が列を作る。(左の写真)

 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)を中心に国連の各機関が運営している登録所で、アフガンへの帰還登録をする家族など一人当たり当面の生活費として20ドル、それに小麦、シーツ、石鹸などが配給される。同時に地雷に対する教育やワクチンの注射なども実施する。「戦争しか知らない子どもたち」という本も出版しているUNHCRカブール事務所の山本氏に話を聞くと、予想以上の難民の帰国に頭を抱えているとのこと。当初は帰還難民を120万人(内パキスタンからの帰還が40万人)と予想していたが、今年の3月から7月のパキスタン側からの帰還だけですでに120万人。小麦の配給なども減らさざるを得ず、今後UNHCRですら資金不足が心配だと言う。

12:00 市内のレストランで昼食

 アフガン料理は鶏や羊が中心だが、塩・コショウの味付けで日本人の(少なくとも僕の)口に合う。この日もチキンスープ、シシカバブ、チキンの照り焼き、マンツー(餃子と小籠包の中間位?)、フライドライスなど食べきれない位の料理を注文。現地では最高級のレストランとのことだが、8人で食べてなんと総額47ドル(1人600円程度)。

15:30 アブドラ外相と会談

 カブール大学医学部卒の41歳。タジク人。96年から北部同盟の報道官を務め、97年外務副大臣、昨年から外相に就任している。ガーニ財務大臣と並んで主要閣僚の一人で、人当たりもよく英語も堪能だ。中央アジアにおけるアフガニスタンの結節点としての重要性を盛んに強調していた。これまでこの地域に利害関係が少ない日本こそ、様々な面でイニシアティブを取ることが可能と感じた。

17:00 ガーニ財務大臣と会談(下の写真)

 世銀出身のエリート、53歳。アフガニスタン人というより、まさに国際人。「アフガニスタンの銀行機能について国内で短期に銀行を育てるのは不可能。ドイツ・アメリカ・日本などから健全な外資系を入れたい」と語っていた。僕が「日本の金融機関は決して健全じゃないよ」と言うと、笑いながら「その点についてのコメントは控える」と言っていた。財政・金融面でも法律は全て作り直し。その中心人物がこのガーニ財務相だが、極めて合理主義。出来る分、敵も多いとの事。

18:00 シャー元国王表敬

 現在はFather of the Nationという称号を与えられている。日本も2度訪問されており、その時の思い出や、天皇陛下が皇太子時代にアフガニスタンをご訪問された時のことをとても懐かしそうに語っていた。表敬のつもりで伺ったが、とても親日的で王宮の中庭にテーブルを出してお茶を飲みながら40分以上も会談させて頂いた。

19:00 NGO関係者との懇談会

 夕食の時間にアフガニスタンで活動している日本のNGO関係者と懇談する機会を持ったが、とにかく皆若くてしっかりした使命感を持っている。また、女性が多い。この日会った十数人の中でも、男性は3人。ちなみに国連からアフガニスタンに来ている日本人でも7人中5人が女性とのこと。国内では「最近の若者はどうなってるんだ」などということをよく耳にするが、外に出てみると日本の若者も捨てたもんじゃないと感じる。懇談は3時間以上に及んだ。大使館やJICAもこれからもっとNGOとの連携や協力を密にしていったらいいと感じた。

自民党幹事長 衆議院議員茂木としみつ

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