ベトナム出張報告

2004年6月24日

        

ベトナムの交通手段はバイクが中心。中には4人乗りの家族も

2. 共同声明の調印:


共同声明の調印式

 ター郵電大臣と「IT人材育成プログラム」に関する共同声明に調印。「IT人材育成プログラム」とは、ベトナムの人材と日本のビジネスとの橋渡しをする観点から、IT技術者/専門家を日本語環境で育成し、両国のIT産業の連携を強化することを通じて、相互の経済発展を図るもの。

 

3. 会談概要:

(1) キエム副首相


キエム副首相との会談

  • キエム副首相より、日本のIT戦略とその成果を高く評価していること、日越は文化的共通点も多く、協力関係構築に利するという認識、小泉首相の東アジアコミュニティ構想について賛同しており、最初の実現国としたい旨発言。
  • 私より、日越協力については、今回の署名をもとに具体化を着実に進めたい。また、ハノイの文廟に見られるように、ベトナムは古来より勤勉であると同時に人を大事にする国であり、今後の繁栄の可能性は、極めて高いとの認識を示した。
  • さらに、欧州、米州、アジアを比べると、3極間の貿易量は拮抗しているのに対し、情報流通量では圧倒的にアジアが劣っており、これをバランスさせるためには、両国のIT協力を推進し、アジアの良い成功事例を構築することが重要。また日本はIT戦略での成功体験をアジア諸国と共有する必要があると発言。


(2) ター郵電大臣他各関係省庁幹部


ター郵電大臣はじめベトナム関係省庁幹部との意見交換

  • ター大臣より、ベトナムのIT事情について、97年にインターネットがスタートして、現在の利用者数は500万人、9,800市町村のうち、4,000市町村がインターネットを用いて接続、現在のIT産業の成長率は年約30%との説明。IT分野においてベトナム政府は日本が最大のパートナーであると認識。
  • 私より、日本でのIT革命の進展に関し、現在約7,500万人の携帯電話の加入者、約1,500万人の高速インターネットの利用者、97%の電子申請達成等、日本のIT事情について説明。
    さらに、日本でIT政策がうまく機能した理由について、①IT戦略本部等の「組織・体制の整備」、②e-Japan戦略、e-Japan戦略Ⅱ、e-Japan戦略Ⅱ加速化パッケージ等の「IT戦略の策定」、③評価専門調査会、PDCAサイクルに見られる「評価手法の導入」、④民が主役で官が支援等「政府の役割の明確化」、の4点であると発言。
  • ター大臣より、日本のIT戦略で得たノウハウをぜひベトナムにも共有させてほしいと発言。
  • ベトナム教育訓練省副大臣より、日本のアジアIT政策を歓迎。ベトナム人は数学、物理が得意、今後は日本語でのIT技術者教育の重要性、大学間連携の有効性について発言。
  • ベトナム科学技術省副大臣より、科学技術省としてはナノテクノロジー、環境、バイオテクノロジーの各分野に関心を持っている。また、これまでのe-Learningセンターの構築やCICCの活動に謝意を表明。今後、インターネットコミュニティの構築、ソフトウェア産業の日本市場への参入について期待している。
  • ベトナム投資計画省より、①政策立案及び管理運営に関する専門家の育成、②IT関係のインフラ構築、③両国による共同研究、の3点における協力の要望を提示。また、ODAの積極的活用の要望。そのために、①これまでは複数分野の人材育成だったが、IT専門の人材育成に注力したい、②通信網、光ケーブル等IT関係のインフラ整備等に対し、円借款を有効活用していきたい、③日本の民間企業の投資をお願いしたい旨を発言。
  • 私より、ベトナムはASEANの中で発展の可能性が最も高い国の一つとの認識。IT政策のモデルとなるプロジェクトを日越で構築し、他のアジア諸国へ広げていくことが重要と発言。IT政策の推進にあたっては、各省庁が連携することが重要であり、ベトナムにおいても省庁連携の上、優先順位を付け一つのまとまった形での意見を期待する旨発言。
    また、日越のIT分野における協力は、人材育成と共通基盤整備のためのインフラにまず着手することが重要との認識。また、投資に関して主役はやはり民間企業であるが、日本企業が安心して投資できるよう、投資の受け入れや税制など長期的安定的な政策運営をベトナム政府にお願いしたいと発言。
    さらに、日本は科学技術の分野においてIT、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、環境の4つを重点分野と考えているが、具体的協力を推進するためには、ベトナム側において、どの分野の何について協力して欲しいと考えているか明確にしてもらいたいと発言。
  • 今後両国間でIT分野における緊密な協力を推進していく旨を確認。



日本企業との夕食会。この間、5回停電

4. 視察等:

(1) ホーチミン市(6月20日)

<1> 富士通ベトナム工場(Fujitsu Computer Production of Viet Nam)


富士通ベトナム工場

1. 概 要:
 広大な工場施設において、プリント基盤の設計からエッチング、レーザードリル等の工程を経て、ベトナム人工員による電子部品のはんだ付け作業により製品化する過程を視察。

2. 所 感:
 
工場管理においても、その生産効率性についても相当にレベルの高い工場であり、それを下支えしているのが、手先が器用で勤勉なベトナム人人材(しかもベトナムでの工場労働者の平均の月給は60ドル程度)であることを実感。日本語のわかる現地社員の育成、ベトナム政府との更なる協力関係構築において我が国のサポートが生かせる点も多いと思料。

3. 参 考:
(ア)1995年12月設立
(イ)従業員数2500名
   
(内大学卒350名。管理職:越人19名・日本人12名)
(ウ)ノートPC、携帯電話、デジタルカメラのプリント基板等製造
(エ)2002年度輸出額は360億円。ベトナムで第1位。

<2> e.town

1. 概 要:
 
施設全体を管理するREE(Refrigeration Electrical Engineering Corporation)社の説明及び入居している日系関連企業の業務概要の説明を受けた後、実際に数箇所のオフィスを視察。

2. 所 感:
 
ベトナムにおいて最新のネットワークインフラを整備している上に、広大な吹き抜けのロビー、フィットネス設備などもある充実した環境等、先進国のインテリジェントオフィスそのものがベトナムにも出現していることに、この国の産業成長の息吹が感じられた。
 
他方、ベンチャー企業のインキュベーション機能については、まだこれからの状態。

3. 参 考:
(ア)2002年9月完成
(イ)約90社が入居。うち10社が日系企業。

<3> 雑感
 
ホーチミン市内には、オペラハウス、欧州の鉄道駅を彷彿とさせる中央郵便局、壮麗な聖母マリア教会、イタリアン・ルネッサンス様式の華麗な人民委員会庁舎などが残っている。フランス統治時代の建物等が、現在でも華やかさを醸し出していると同時に、絶え間なくあふれ返るバイクと人の賑やかさが渾然一体となったこの地独特の雰囲気を十分に感じ取れた。

 一方、自家発電を備えた一流(?)のレストランにおいても夕食の際に5回も停電を経験するなど、インフラ整備にはまだまだ問題があると思った。

(2) ハノイ市(6月21日)

<1>Emotion Bar(インターネットカフェ)


インターネット・カフェにて

1. 概 要:
 
ベトナムに急速に増えつつあるインターネットカフェにてその設備や速度などを体験。

2. 所 感:
 
最もモダン(という説明)のインターネットカフェだったが、暗い店内に並ぶマシンはADSL接続されており、想像していたよりもずっと快適にネットサーフができた。ただし、出てきたコーラはあまり冷えていない。通常の家庭がPCを購入するのはまだ難しいとのことであるが、若者がこういったカフェで最新の情報に自由に触れていることを実感。

3. 参 考:
(ア)ハノイ市内にあるインターネットカフェは約90店舗
(イ)ADSLといっても電話線の3倍程度の速度が現実的
(ウ)接続使用料は1分1円程度が相場

<2>ハノイ工科大学


ハノイ工科大を視察

1. 概 要:
 
ハノイ工科大学学長より大学概要について説明を受けながら構内を視察。環境科学技術研究所等に立寄り、環境汚染解析や、コンピューターによる画像操作などが紹介された。

2. 所 感:
 
フランスとの技術交流や、日本の長岡技術科学大学との共同プログラムの実施など、ベトナム人学生が世界各国で学んだ知識をこの国の発展に役立てるべく戻ってくるという国際的な研究体制の構築に腐心している点に感心。また、IT分野の教育にかなり力をいれていることを実感。

3. 参 考:
(ア)設立1956年、ベトナムで最初の国立大学
(イ) 教員数約1000人
(ウ)在校生27,396人
(エ)長岡技術科学大学との共同プログラム
 
日本語、英語、工学基礎教育に重点を置いた教育をハノイ工科大学にて受けた後編入学試験に受験し、長岡技術科学大学にて後半を受ける。修了生は両大学の学位が授与される。

<3> 雑感
 
ハノイ市内では、李朝時代の1070年に建立された孔子廟を見学。池の周囲に立つ82本の石碑に刻まれた300年にもわたる科挙試験の合格者の名前は、この国が古くから学問と人材を重視していたことがよくわかる。



孔子廟にて 後ろの石碑に科挙の合格者名が刻まれている

自民党幹事長 衆議院議員茂木としみつ

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