活動報告

在瀋陽総領事館事件に関する報告に対する質疑

平成14年5月14日

 私は自由民主党を代表し、今般の在瀋陽総領事館事件に関して、緊急に質問を行います。

 5月8日午後、中華人民共和国瀋陽市の我が国の総領事館において、北朝鮮からの亡命者と言われる男性2名と幼児を含む女性3名が総領事館の敷地内に入り、これを中国武装警察官が不法に引きもどすという事件が発生しました。武装警察官により総領事館の門扉から引き離される女性の姿は、ビデオ映像と共にメディアを通じて広く世界に報道され、国民の間にも大きな反響を巻き起こしました。特に、メディアを通じて報道された武装警察官と領事館へのかけこみを図った女性2人とのもみ合いの傍らで呆然と立ちつくす幼い女の子の姿は、多くの人の心を痛める光景であったと思います。

 また、総領事館へ突入した男性2人が、我が方の総領事館員の同意を得ることなく総領事館に立ち入った中国側武装警察官によって、総領事館の建物内の査証申請待合室において身柄を拘束され、連行された事実は、人道上の問題と同時に、我が国の総領事館の不可侵が侵された重大な法的問題として、国民の深い憂慮と懸念、さらに外務省に対する一層の不信を巻き起こしました。

 私は、本件問題は人権外交の新たな旗を揚げるべき我が国外交の威信を著しく傷つけると同時に、人道上の側面及び国際法上の側面から重大な論点を有する問題であると深く認識しますが、本件に対する総理の基本認識についてまずお伺い致します。

 全ての国民が、そして世界がわが国の対応を注視している問題であります。我が国としては、毅然たる態度で本件にあたり、まず何よりも人道的立場から連行された5人が朝鮮民主主義人民共和国に送り返される様なことが無いようあらゆる外交手段を行使し、その安全と身柄の確保を含めた然るべき対応を引き出すべく最大限の努力を行うべきであると考えますが、今後の政府の対応について総理大臣に明確な方針を伺います。

 8日に事件が発生してから、現地在外公館の対応を含めた外務省のこれまでの対応について、多くの国民の間に厳しい意見が存在しています。この問題について、外務大臣にお伺い致します。

 まず、今回の問題は、国益を担うべきわが国外交当局の緊張感の欠落、危機意識の希薄さを露呈し、在外公館の危機管理のあり方について、大きな問題を投げかけた事件であったと思います。例えば、北朝鮮からの難民申請希望者が国境を接する中国において第3国の外国公館へ駆け込む事態が頻発する状況において、我が国の総領事館はさしたる緊張感もなければ、緊急事態への対応準備も全く怠っていました。今回の事件を一過性の問題と捉えることなく、全世界における我が国の在外公館の危機管理対処能力や情報収集能力の強化、さらに警備体制の改善を一層図っていくことが重要です。早急かつ抜本的な対応が必要であると考えますが、外務大臣の御認識をお伺いします。

 また、本件事件については、中国政府は10日に外交部報道官談話の形で、中国側武装警察官は我が方の副領事の同意を得た後、入館し、5名を連行することについても日本側が同意したのは勿論、何と感謝の意まで表明したとの調査結果を公表しております。日中双方の発表は大きく食い違っていますが、本件の一連の事実認識として、中国側武装警察の立ち入りや連行について、我が方の総領事館関係者の同意がなされたか否か、また現場での抗議は行なったのか否かについて、外務大臣の明確な答弁を求めます。

 最近、外務省では度重なる不祥事が発生し、国民から外務省のあり方について厳しい声が提起されています。今回の事件でも関係職員の対応の不備が指摘されているところですが、現場限りの甘い処分で済む問題ではありません。外務省全体として管理責任も含め厳しい措置が必要と考えますが、今後の対応について外務大臣のお考えを伺います。

 今回の事件の背後にある問題として、外務省職員の特権意識についても言及せざるを得ません。領事上の特権及び免除の目的は、同条約にもうたわれているとおり、任務の能率的な遂行を確保することにあるにもかかわらず、外務省員は外交官個人に付与された特権と勘違いしています。こうした誤った特権意識の改革について外務大臣の改革姿勢を伺いたいと思います。

 最後に人事制度の問題点に接れます。外務省における人事制度は語学を中心として人事が組まれています。チャイナ・スクール、ロシアン・スクールなど当該語学の研修を行った人間中心の固定的人事に陥っています。このため、今回のように特定の国との間で問題が起こった場合でも、毅然とした態度で主張すべきを主張し得ないという体質ができあがっているのではないかとの懸念を有しますが、外務大臣の人事制度に対するご認識をお伺いします。

 今回の事件が投げかけた教訓は、極めて重く、かつ多方面に及びます。これを今後の改革の礎とし、総理、外務大臣のリーダーシップのもとで外務省改革を断行し、わが国の外交活動や在外公館のあり方に対する国民の信頼を一日も早く取り戻されることを切に希望しつつ、私の質問を終わります。