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第9回産業競争力会議での発言

平成25年5月22日

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 3月の産業競争力会議で、これまでの日本経済にはヒト・モノ・カネの澱みがあると申し上げた。その澱みの解消には、その原因となっている3つの歪み、すなわち、「過小投資」、「過剰規制」、「過当競争」を是正する必要がある。
 1つ目が「過少投資の是正」。前政権下の昨年7-9月期の成長率は年率▲3.5%であったが、10-12月期を経て、安倍政権発足後の足下2013年1-3月期の成長率は+3.5%となり、まさに政権交代を経て、日本経済は「ネガ」から「ポジ」へと転化した。この成長は、過度な円高が是正され景況感が改善する中で、消費と輸出が牽引した結果である。他方、今後の力強い成長の実現のためには、未だマイナスレベルの設備投資の拡大が鍵となる。あらゆる手段を使って、設備投資の拡大を早急に図る必要がある。
 1月の緊急経済対策で「日本企業回帰」を目指し、前例のない税制措置や思い切った投資促進策を打ち出した。こうした取組の結果、民間設備投資は本年2兆円を超える規模の底上げが見込まれる。また、デフレ、過度な円高の是正をはじめ、立地環境も改善されつつある。
 この民間投資の回復の胎動を本格化させるため、今後3年間で設備投資を10%増加させ、リーマンショック前の水準である70兆円以上に戻すため、既存の税制の拡充に加え、これまでと次元の異なる画期的な設備投資の支援策を講じる。
 例えば、最新の医療設備やロボット介護機器などは、技術進歩が極めて早く適切なタイミングで導入を判断できない。投資を躊躇する企業を後押しすべく、企業が設備を購入するのではなく、リースで確保できるよう、支援策を打ち出す。また、太陽光パネルや蓄電池など、長い目で見れば経済的にpayするものでも、初期投資が大きく個人としては導入に踏み出せない。こうした製品を初期投資なしで提供する民間サービスを、国の出融資により支援する「クリーンエネルギー・ファイナンス制度」を創設する。
 こうした取組により、日本企業回帰<back>、そして規制改革<change>に加えて、本格的な投資拡大・収益向上・所得増大<up>を実現する。
次に「過剰規制の改革」である。現在も電力システム改革など、「岩盤規制」の改革を断行している。 この動きをさらに一歩進め、企業が萎縮せず新事業にチャレンジ、そして再チャレンジできる仕組みを創設する。
 4月の産業競争力会議で紹介した健康長寿関連サービスや、自動走行の公道実証といった新たなチャレンジを後押しすべく、例えば、医療保険の隣接領域でのホワイトゾーンを確保するため、「事業の適法性を確認する認定制度」や、自動走行の公道実証などについて、これまでの地域単位ではなく、企業ベース・事業ベースで特例的に規制を緩和する「企業実証特例制度」を創設する。また、資金面では、中小企業の経営者や後継者を悩ませている、個人保証問題にも取り組む。
 こうした取組により、開業率と廃業率の逆転、付加価値の高いサービス産業の創出を目指す。
 3番目、「過当競争の解消」である。事業再編を進めるには経営者の決断が何より重要である。思い切った税制措置・金融措置で、収益力を高める経営改革を後押しし、過剰供給構造にある分野での再編を迫る。その上で、国としても海外市場獲得を狙ったM&Aや海外展開を全面的に支援する。
 こうした取組により、世界になくてはならないグローバル企業を数多く輩出し、インフラ輸出を進め、中小企業も含め世界で勝ち抜く製造業の復活を目指す。
 以上の三つの歪みを根本から是正し、メタボ体質から国際競争に勝ち抜く筋肉質の日本経済にするため、今後5年間を「緊急構造改革期間」と位置付け、集中的に取組を進める。その中心的政策手段として、臨時国会に向け、「産業競争力強化法案(仮称)」を策定する。これを中核に、あらゆる政策資源を集中的に投入し、民間投資と所得の増大による自立的・持続的な経済成長を実現する。