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政調会長会見要旨

平成24年2月24日

【冒頭発言】

 平成24年度予算に対して、「わが党の政策ビジョンと平成24年度予算」という形で自民党の考え方を取りまとめましたので、発表します。目次をご覧いただくと全体の構成が出ていますが、これまでは政府の予算に対する問題指摘から入っていたのですが、今年は年度途中で政権を奪還して、我々として予算を作り直すという考えから、前半に、横ぐしの大きな方針を打ち出しました。一つ目が「デフレ・円高からの脱却と「投資立国」を目指した強い国家へ」、2つ目が「持続可能な財政の確率へ」、3つ目が徹底した「行財政改革」、4つ目に「自助・自立を基本とした安心できる社会保障制度の構築へ」5つ目が「日本を強くしなやかな国へ(国土の強靭化)」です。

 

 最初にデフレ・円高からの脱却と「投資立国」を目指した強い国家へということで、GNIベース(グロス・ナショナル・インカム、国民総所得)で、実質3%、名目4%の成長を巡航速度とするとしてあります。そして、デフレ・円高からの脱却に向けて、欧米先進国並みの物価目標、2%程度を政府と日銀のアコード(協定)によって定めるととともに日銀が国債の管理施策に協調していくということで、更に大胆な金融緩和策を断行すべきだと書いています。そして、3つ目の項目の「徹底した行財政改革」について、先日の三党合意では公務員の給与削減について7.8%の深堀りでしたが、我々は、単に国だけではなくて、地方公務員も含めて人件費を大幅に削減して、国費ベースで1兆5000億円のスリム化を行うこととしました。また、社会保障、「自助・自立を基本とした安心できる社会保障制度の構築」ということで、大きな我々の方針を最初に示していまして、(1)額に汗して働き、税金や社会保険料などを納め、また納めようという意志をもつ人々が報われることと、そして(2)自助・自立を第一とし、共助さらに公助の順に従って政策を組み合わせていくとし、たとえば、生活保護のことを書いています。生活保護が、今3兆円を超えるという大きな伸びを示している中で、我々の考え方は手当より仕事。これを基本に不正受給により厳格に対処するとともに、就労の一層の促進、現金給付から現物給付(例えば住宅確保とか食料回数券の配布)、そして医療扶助の適正化など必要な見直しを行って、国費ベースで8000億円を削減します。それから5番目の「日本を強くしなやかな国へ」ということで、災害が起こってから対応すると、やはり被害が大きくなるし、同時に費用もかかることから、「事前復興」の考え方に沿って、これを国家の最優先課題として取り組みをしていきたい。具体的に、「国土強靭化基本」、そして同法に基づく「関連省庁所管の国土強靭化関連施設整備促進法」を策定していく。そして、わが党は「コンクリートから人へ」などという空虚なスローガンではなく、国土の強靭化に集中的に取り組んでいく。このため、見通しの甘さが明らかな政府の復興計画および全国防災施策を全面的に見直すとしています。

 

 我々としての考え方は、削減を深堀できる分については厳しく深堀をし、そしてその分の予算を必要な重点分野に投入していくことです。全体的に見ると政府予算と比べて1.1兆円を削減しています。今回、我々の考えを示すにあたり、正直にきちんと日本の財政の姿を国民にお示しすることが大事だということで、基礎年金の国庫負担2分の1への引き上げについては、その財源を交付国債といった形の「隠れ借金」、「飛ばし」によるのではなくて、きちんと赤字国債として計上することとしています。その一方で、我々が進めるデフレや景気対策、これにより景気回復を図り、税収増もたらすことにより赤字国債の発行額をさらに縮減していきたいと考えています。ちなみに、予算案への賛否については、今後の予算審議を見極めて最終判断しますが、このとりまとめにあるように現段階において政府の考え方とわが党の考え方に相当の隔たりがあると考えています。

 

 

 

【質問】

 今日政策ビジョンをまとめたということで、これをベースにマニフェストのまとめに入っていくかと思いますが、これはどんな段取りでいつ頃までにまとめられるのでしょうか。

 

【答え】

 この中に入っていない項目が政権公約との関係で出てきます。例えば憲法改正の問題は予算とは直接関係しておりません。今回大きく5つの柱を立てましたが、比較的予算との関連性の高い重点政策に絞りました。それ以外にも憲法の問題や農業、食料安全保障、地方、雇用など10本程度の柱の政権公約を準備しているところです。今回の政策ビジョンもその中に反映されるということになりますが、タイミング的には3月末に取りまとめをしたいと思っています。ただ、発表についてはまさに選挙公約ですから選挙の時期をにらみながら、どういった形でどう発表するか検討していきたいと考えています。

 

 

 

【質問】

 生活保護の8000億円を抑制する点については、無駄なところを削るということについて民主党政権との違いが明確だと思うのですが、民主党政権のどこが問題で、どう違いますか。

 

【答え】

 生活保護は3年間で25%増えている。特徴としては、一つは地域的バラツキが大きいということ。もう一つは最近、働ける世代の生活保護が非常に増えている。生活保護の受給者が全体で200万人を超える中、81万人が稼働世帯。もちろん障害をお持ちの方もいらっしゃいますが、働ける方もかなりの数にのぼっている。それに対して現在の民主党政権の就労支援プログラムは極めて不十分です。潜在的に働ける人全員に就労支援プログラムを提供してその人たちが生活保護から脱出していくと単年度ベースで5000億円程度削れます。また、生活保護の半分くらいは医療費扶助です。その中で薬の重複処方の問題やジェネリックで対応できる問題など医療費の効率化が必要です。民主党の場合は、公助から入ってしまうので保護にどっぷり浸かってしまう。我々は働ける人には働いてもらう。自助を基本にしながら自立できるような環境を整えていく、こういったことが大きな違いだと思っています。

 

 

 

【質問】

 今回の考え方は政権奪還、予算の組み替えを念頭に作られたとのことですが、民主党との比較というよりは、自民党の与党時代からの政策の転換との観点が多いかと思いますが、そういった意味で過去の自民党との政策転換がどこにありますか

 

【答え】

 例えば、円高・デフレ対策。これは円高については今に始まった問題ではありません。産業の空洞化についても10~20年前から言われていることです。しかし、ここにきて明らかに変化が起きているのは、組立工場が海外に出るということから、基幹技術を持った素材産業、部品産業まで海外に流失しようとしている。そういった中で円高やデフレに対して毅然と対応しようとしていることで、参院選のマニフェストと比べて、数字目標、物価目標についてアメリカ、イギリス等の見直しもあったことを踏まえ、欧米並み2%ということを書きました。さらに政府の関与が必要だとの考えから政府日銀の協定(アコード)によって物価目標を定め、さらに日銀が国債の管理目標に協調していく。デフレ・円高対策に対してはかなり踏み込んだものが書けていると思います。また、これまで我々が公共事業という形で捉えてきました予算、これは確かに我々の時代も減らしてきましたが、震災や最近の台風災害、豪雪災害などを見ても災害に強い日本列島を作っていかなければならない。一旦災害が起こってから対応することによる被害の大きさ、復旧に掛かる額の大きさを考えた時にこれまでの事後復興ではなく事前防災という新しい方向性を打ち出しています。それは単にハードの問題ではなく、災害時に繋がらない携帯電話など、ハードとソフトをしっかり組み合わせるという対策をとっております。社会保障については基本的には現行制度をベースにしながら見直しを進めます。今まで以上に自助、自立を基本にしながら、共助、公助を組み合わせる基本方向を強く出していきます。生活保護については党で早急にPTを立ち上げ、一ヶ月以内に具体的な現場での聴き取りなども含め具体的な対策をまとめていきたいと思っています。

 

 

 

【質問】

 3ページの消費税についてですが、「持続可能な財政の確立へ」について「社会保障を支えるための消費税率10%を明記した」。後段では、「国会議員の定数削減、公務員の人件費削減をはじめとした徹底した歳出削減に努めつつ、消費税を含む税制抜本改革の実施により、持続可能な財政の確立を目指す」というこれまで従来の自民党の考え方と変わりはありませんか。 野田政権の協議に応じることができるのか思うのですが、応じれない理由をお伺いします。

 

【答え】

 これに書いてある通り、変わりはありません。我々は国会で議論を行っています。法案が出てきましたら、堂々と協議・議論を行いたいと思っておりますし、法案は出ていませんが、様々なわが党の社会保障の分野、税の専門家が質問に立って、国民の見えるところでしっかりとした議論をしています。先日閣議決定した大綱を見ても、議論を深めなければならない点が多々あります。例えば、消費税増税により財政再建を進めるということですが、2010年代半ばに本当にプライマリーバランスの赤字を半分にできるのか。5%の消費税のアップを社会保障に充填すると言っても社会保障の充実に使えるのは政府与党の考えでも1%程度といわれています。2.7兆円だったと思います。ところが、民主党マニフェストでは、年金の一元化、子ども手当てを除いても3.5兆円以上の施策を進めなければならない。そうすると、どの施策はやるのか、どの施策はあきらめるのか。こういったことを明示していただかないと枠に収まらない。増税はするが、それによってやることは決まらないでは一体改革にはならないと思います。さらに、税と言いますと具体的な制度設計が必要になってきますが、逆進性を持つ中で低所得者対策はどうするのか、そして住宅の負担減をどうするのか、弾力条項はどうするのか、きちんと示していただいたい。我々も議論して一つ一つ確認していきたいと思います。

 

 

 

【質問】

 生活保護のPTは座長やメンバーは政調会長がお務めになるのでしょうか。先日、前原民主党政調会長が、産経新聞の表現を理由に記者会見に応じないとしましたが、一般論としてこういう措置についてどのような感想をお持ちでしょうか。

 

【答え】

 生活保護PTについては、わが党の中でこれまで取り組んでいる方や問題意識を持っている方がたくさんいますので精鋭を集めて集中的な議論、また実地調査などもやっていきたいと考えております。来週には立ち上げたいと考えています。 私はこのように各社を対象に記者会見を行っています。それは、野党としても、みなさんを通じて自民党の考え方を国民にお伝えすることは極めて重要だと思っています。どこがいい、どこが悪いではなく、それぞれのメディアが大切な役割を果たしていただいていると思っています。

 

 

 

【質問】

 原子力規制庁の法案ですが、政府は4月1日の設立を目指しておりますが、 現時点での法案の評価を聞かせてください。

 

【答え】

 本当に独立性が担保できているのか、おおいに疑問があります。また、持つべき機能にしても文科省に残っている機能等、本当に十分な機能が新しい規制機関に移管されるのかなどチェックしていかなければならないと思っています。 タイミングも4月1日の発足はかなり無理があるのではないかと思います。このことについて国会の事故調におきましてもこの問題について黒川委員長を中心にご議論いただいておりますが、そういったものとも並行してわが党の考え方をとりまとめていきたいと思っています。

 

 

 

【質問】

 細野大臣が黒川委員長に接触したことで国会審議に影響しますか。

 

【答え】

 国会審議に影響すると言うより、国会審議の中でこの問題点について当然我々としては質していきたいと思っています。

 

 

 

【質問】

 今回荒々の計算で1.1兆円の削減という試算がでていますが、全体を見直す様な精査を行ったのか、それとも増やすべきところ減らすところを試算したのでしょうか。

 

【答え】

 当然各部会、各調査会で政府予算の精査を行っています。ですので、おいしいところだけを見つけてその部分だけについていちゃもんをつけているとかではありません。きちんと全体を見て、我々だったらこうするという数字を積み上げたつもりです。

 

 

 

【質問】

 政府は今国会に提出予定の社会保障一体改革の法案の中で消費税に関する部分を切り離して増税部分を先行するようなことを検討していると報道があるのですが、これに関して公明党の井上幹事長が一体改革の名に値しないと言っているのですが、これに関してどう思いますか。

 

【答え】

 全く同じ考えです。一体改革というのでしたら、当然、税と社会保障が一体であるべきだと思っています。その中で、最低保障年金、年金の一元化は無理だと思っています。マニフェストはできないと国民も判っているわけですから、年金の一元化については撤回するということが与野党間で様々な議論を進めるベースになるのではないかと思っております。